(63) それから、20分あまり? | すずめがチュン

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アケノさんを取りまく風景をおとどけしてます。











2014/7/10 撮影

Hさんの両手が、背中の上から


 キリキリと痛む胃に、熱を送ってくれた。



手は、ときどき移動しながら


 当てた処を、温めて行き・・・


いつしか背中全体が、ホカホカと


 まるで温泉に浸かってでもいるように


   温かくなっていった。

「どうして、そんなに、温かいん、でしょうねぇ


  Hさ、んの、手、」


 だんだん力が入り、今は彼女の下で


  ペッタンコの、ノビた蛙のようになりながら


    そう言うと、


  「さぁ、心が自由だからじゃない」と言う。



「じ、ゆ、う、ねぇ・・・」


  「そう、我慢してることが、今何もないから、身体もいつも


   元気に活動してるってことかな、」と、



なるほど!


  そう言われると、全くそうだ・・・


自由だというHさんの身体は、


 手と言わず、足と言わず、触れるところ全てが


  熱でもあるように、熱い!


 細胞の一つひとつまで、元気に活動してるから


  せっせと、熱も生み出してるのだろう。



「じゃ、私は、まだ、自由、じゃ、ないっ、てこと、です、よね・・・」


  と、言いながら、頭をねじってHさんを見ようとするが


   上手くねじれない、あれっ!


  「ほらね、こんなに固くなってるもん、凝ってるよぉ」と


   Hさんの方で、身体をこごめ


     私の顔をのぞきこんだ。


   真面目な顔だ・・・・



マジで?・・・そんなに深刻な顔して言うくらい?


  元々、具合が悪いと、とたんに気が小さくなるタチだ、



    和らいでいた胃の痛みが


       またぶり返してきた・・・・


「自由、に、して、るんだ、けど・・・・なぁ」


  今の毎日は、取り立てて、めんどうだと思う事もないし、


    こんなに、のびのび、気ままにしてて


      いいのだろうか、


     と思ってるくらいだから・・・・はて?


「まだ、なんか、ある、のかな」と言うと


   「うん、あると思う、我慢してることとか」


     と言われてしまった。



「ほんと、に、・・・」


   と言ったが、


  ま、あると言えばある、一人で暮らしてるわけではないので、


   家には、ホラ、


 超、ワンマン、マイペースのモアイさんがいる、


  何かと、大変だったことは確かだ、今までは、


 ただ・・・・このお人


    幸いなことに、年々齢をとるごとに、角が取れ


      丸くなり、


     岩石モアイさんから、ツルツル玉石のモアイさんに


      変身しつつある。


    まだ、途中だけどね・・・・


   と、Hさんだけに聞こえるように言うと、


    「 それだと思う」と言う。



 ・・・・え、これなんですか・・・だとすると、


  どうしよう・・・


   この先も、ず~っと一緒なのに、


    ・・・・長いよ、けっこう


 モアイさんは、風邪ひき以外には、寝込んだこともない人で


   毎日、刺身と、トマトを食べ、酢の物大好き


     味噌汁も欠かさないから


  きっと、自分より健康で、長生きのはず、



 やれやれ、と・・・・だんだん憂鬱になってくる


    長生きなモアイさんが、憂鬱なのではないが、



  元気なモアイさんの横で、


 いまだに、


   ぐじぐじ、オドオド、イライラと反応してるらしい


  自分の身体が情けない、


   何より、それで身体の具合を悪くしてることが


    イマイマしい、


      ・・・・・それが、憂鬱だ。



「どう、したら、いいんだろ?」


   「とりあえず、言いたい事は言うとか」


「そうか・・・そうよね」


  と言ったものの・・・・これが一番むつかしい、


 反対に、言いたい事も、あまり言わずにきたから


  何とか、今までやって来れた気もする、



  ・・・・ので、他の方法も考える


例えば、



   被害者意識から抜け出せない、自分の身体に


     自分で喝を入れるとか、



特に胃!


 しっかりしろ、私の胃、


  半分で大変なのはわかる、・・・・が、


 頑張ってもらわないと困る、だから、消化以外のことに、


   気をつかうんじゃない、


 モアイさんが、ナンチャラ言った・・・とか、した・・・とか


  関係ないんだから


   

   という風に、


  先に強くなった心に


   身体が、追いついてくれたらいい。




   つづく