叔父の五十日祭がありました、
長患いの末、十一月の始めに 、
旅立っていった叔父の
その時の顔は、
ほんとうに 安らかで、
生前、苦しみ続ける姿を、ずっと見ながら、
長い看護を、引き受けてきた、
家族の心を
ねぎらい、慰めて くれるものでした、
葬儀の翌日、ヘミシンクの最後に、
叔父が現れました、
家の近くにある公園らしい、
ベンチにぽつんと腰かけて、
放心したように、じっと前を見つめています、
毛糸の帽子をかむり、
薄茶の上着を着て、
両手を重ねた 膝の横には、
杖がありました、
ぼ~っと、一点を見つめているような、
叔父の顔は、
突然、ベッドから抜け出し、公園のベンチにすわっている
自分の状況に、
戸惑っていたのか、
それとも、
楽になった肺で、久しぶりに、戸外の空気を、
思いっきり 吸えたことに、驚き、
喜んでいたのか、
それから、数日が過ぎ、
二度目に、また 現れた叔父は、
見違えるほど、若くなっていました、
髪は黒々と、表情も若やいで、
赤い毛糸のベストに、白いシャツ姿の叔父は、
きれいな歯を見せて、
ほんとに嬉しそうに、笑っています、
その周りを、十人くらいの人の手が、取り囲んで、
歓迎するように、
叔父の肩や 背中を、パタパタと、
たたいているのです!
その、あまりの歓迎ぶりに、
叔父は、笑い転げながら
身体をよじって、
パタパタ攻撃を、かわそうとしてます、
一瞬、叔父の、笑い声が聞こえたような気がしました、
その瞬間、
ああ、今、おじさんはいったんだなぁ~、
と、わかりました、
姿を見せてくれた、二度の出来事を、
叔母と、従妹に、
どんな風に、説明しようか・・・と、
結局は、
見えたままを、ありのままに伝えると、
赤いチョッキは、
一人娘の従妹が、叔父の還暦のお祝いに、
贈ったものだったそうで、
それはそれは、喜んで、
一度も手を通さず、大事にしまってあったモノだとか、
薄茶の上着も、毛糸の帽子も、
よく、身に着けていたもので、
杖も、欠かせなくなってて、
玄関の、上がり框に いつも置いてあったと、
見えたものが、ほんとにそうだった、とわかった事に、
なぜか、とても感動しました、
特に、赤いチョッキは、派手好きでもない叔父が
とても、着そうにないモノだったので、
気になってましたが、
還暦の赤だったとは!
「 おじさんは、一度も着なかった チョッキを着て、
いったなんてね・・・・
ナオちゃんに、ありがとう!、って言ってるんだと思うよ、
それと、
チョッキ着てることで、ナオちゃんの傍にいつもいるよ、
と言ってるような気もする 」
と、従妹に伝えました。
つづく