2016/09/28 東京新聞
日中関係が尖閣諸島や歴史認識を巡る問題などでぎくしゃくする中、元中国残留孤児らが十月二日、東京都墨田区の江戸東京博物館大ホールでフォーラムを開く。元孤児の高齢化が進む中、自分たちの体験や中国人養父母への感謝を広く伝えようと企画した。「養父母が見ず知らずの自分を育ててくれたから今がある。戦争が自分たちのような存在を生んだことを、日本の若い人たちにも知ってほしい」と話す。
中心メンバーは、NPO法人「中国帰国者・日中友好の会」(台東区)理事長の池田澄江さん(71)と、中島幼八さん(74)。いずれも終戦期に旧満州(現中国東北部)で肉親と離れ離れになり、中国人の養父母に育てられた。
中国残留孤児問題は、日中両政府が一九八一年に本格的調査を始め、これまでに約二千六百人が帰国した。厚生労働省によると、調査は八〇年代半ばにピークを迎え、多い年には六百人が日本で肉親捜しをした。その後は減少し、二〇〇五年以降に残留孤児と分かった人は毎年十人未満で、一三年以降は見つかっていない。
池田さんら帰国した元孤児らは国家賠償を求めて集団訴訟を起こしたが、国が〇八年に支援金の支給を開始したことなどで終結した。近年は残留孤児の報道も減り、池田さんたちは「問題が忘れられかけている」と危機感を持つ。
フォーラムは二部構成で、午前十時から映画「望郷の鐘 満蒙(まんもう)開拓団の落日」を上映、午後一時から「敵国のこどもを育てた中国人養父母」をテーマにしたシンポジウムがある。池田さんは開会あいさつで養父母への感謝を述べ、中島さんは養父母について現地調査を交えて報告する。当日は、中国人養父母の団体が中国東北部のハルビン市でフォーラムを同時開催し、日本の会場とインターネットを通じてやりとりする計画もある。
入場料は午前午後共通で千円。事前申し込みが必要。問い合わせは、中島さん=電090(9146)8008=へ。(大平樹)