画家、外立(はしだて)とし江さんが新作を描いた・・・。


  プロの絵描きだから、絵を描くのは当たり前のことで、

  

  この17年位の日常だった。

  

  だった。とはなぜか?


  あの、東北大津波の日から、使い慣れて手の一部となっていた絵筆が


  量り切れないほどの重さを持ってしまったから・・・。

 

  外立さんは、宮城県南三陸町の出身で、


  弟さん達7名の親族を亡くし深い悲しみを背負ったのだ。


  海べに育ち海を愛し海しか描かない、海の画家なのに、


  そして、海のように広く深い愛情をもった女性なのに、


  その、海に大切なものを奪われた・・・。


  6月8日の毎日新聞夕刊に、新作の前に立つ外立さんが載った。


  震災後、朝日新聞その他何誌かに取材をうけて記事が載ったけど、


  今回のは、深い意味を持つ50号の新作の絵の前に立っている。


  南三陸ホテル観洋のおかみさんに言われたそうだ。


  「 震災翌日の日の出はとても綺麗だった。もう一度描いてほしい。」


  筆がもてなくなって、描けなかった。気力もなえた。でも、その一言で


  気持が、心が起きた。


  『肉親を奪った海だけど、もう一度海を描こう』と・・・。


  私が5月のはじめに会った時、一言話すたびに涙だったけど、


  そこには、『少しでも私の絵が癒しとなるなら、その人たちのために描いていく。』

 

  と、しっかり前を向いた外立さんがいた・・・。


  でも、一筆おくたびに、涙、涙、泣きながら描いたと言う・・・。


  本当にそうだろうと思う。どれほどの思いだったか・・・。


  私が思うに、 彼女の海は夕景が多い。包み込むようなパープルに


  私は外立さんの強さ、大きさ、優しさを見ている。


  新作は、オレンジ!意思をもった夜明け! 朝陽の海だ!


  秋の個展でのお披露目のあと、故郷の南三陸ホテル観洋に


  飾られるそうだ。彼女の祈りとともに、大きなパワーで故郷を癒すのだと思う。


  涙涙で、全身全霊で描いた 魂の絵だもの・・・。


  そうそう、先月銀座で会ったとき、大きな悲しみの疲れてるはずの


  外立とし江さんは、凄く綺麗だった。その顔を見て、


  私は安心したのだ。『外立さんは大丈夫!』と思った。話すと心は震えているのが良くわかるほど、


  まだまだつらい時だったけど、芯が立ちはじめた輝きが見えた。


  いつも、私は思うのだけど、外立さんの優しさには、強さには、


  そして、大きさには・・・、永遠に、かなわないや!と・・・。


  辛かったけど、自分のお役目を再確認して描きはじめた今後の作品には、

  

  新しいエネルギーが込められるはず!


  外立さんは、素敵な女性として、常に私の前を道しるべとして歩いていてくれるのだ。


  後にくっつく私のためにも、描き続けてほしいのです。