暗い部屋を照らすのは一つの蝋燭の火の光。

その部屋の壁には、火の光によって出来た二つの影が伸びている。

影は微塵たりとも動かず、ただ静かにそのままじっと止まっていたかと思ったが、一つの影が動き、手と思われる影が向かいにある影の体に触れ、重なり、ゆっくりと倒れていった。

影が倒れたのに少し遅れて、部屋を照らす蝋燭の火が揺れ、ふっと光が消えた。

布が擦れる微かな音、帯を解く小さな音、息を吐く音、それに続いてゴンッと頭を殴る鈍い音。

「いっ……!」

殴られた頭を両手で押さえながらうずくまる者と、解かれた帯を結び直す者がその部屋に居た。

「お前はいい加減しつこい。諦めると言う言葉を知れ」

‡‡‡

眩しい光を浴びながら、この家には朝から説教を食らっている者が居るらしい。

例えて言うならば、オペラ歌手のような……いや、それ以上に美しく誰もが魅了するようなテノール。

その声で「お前はしつこい。諦めると言う言葉を知れ」と何度言っただろうか。

両手では足りず、足の指まで数える勢いだ。

「人が手を出さないからと調子に乗るんじゃない。下僕の分際で主の唇を奪おうとは……おい、聞いているのか」

怒りを表情には表さないが、冷淡に言葉を発する主は、目の前に正座をして座る“人物”が全く話を聞いていないと分かると態とらしく大きな溜息を吐いた。

詳しく言えば、別の事に集中し過ぎてと言う方が今の状況に合っているだろう。

「吸いたい……吸ったらきっと美味しいだろうな……」

場違いな言葉に、本日二度目の鈍い音が響いた。

「いっ……!」

「還れ。そして二度と戻ってくるな」

「……僕が此処に居るからウィンが居られるっていうのに」

「ん?何か言ったかな?そこの下僕」


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(*'-')/ つか、此
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