古(いにしえ)の日本国では、
子供の乳歯が抜けると
ある儀式が行われていました。
上の歯は床下に
下の歯は屋根の上に
子どもの健やかな成長を願い、
後の永久歯がしっかりと
生えてくるように。
さて、ちょうど上の子が
そのくらいのお年頃なんですが、
ちょと困ったことが
最近のお家の基礎は、
べた基礎なもんで
歯を投げ入れる隙間など
ありゃしません
また、我が家は
総二階の家なので、
1階と2階の間に
屋根がありません
そのため、
高い屋根に歯を乗せようと
力んで投げたら
肩を壊してしまいます
古の儀式がもはやできぬ環境。
悲しきや悲しきや…
調べてみると、
西洋では寝る際に
枕元に抜けた乳歯を置いておくと、
歯の妖精さんが飛んできて
コインと交換してくれる
という風習があるらしい…
恥ずかしながら知りませんでした。
床下の隙間も
投げ込む屋根も失い
行き場を無くした我が家は、
一気に文明開化し
西洋化することにしました
3代歌川広重「東京名所之内 銀座通煉瓦造 鉄道馬車往復図」(1882年)
夕食も食べ終わり、
子どもが明日の学校の用意をしていると、
2階から何やら羽音が聞こえてきます
水色の羽をまとい、
キョロキョロしながら
階段を降りてくる姿が
相変わらずノリの良さに感謝する
長男はすぐに気が付き、
抜けた前歯を取りに走ります
妖精さんは、
部屋の中を飛び回り
一生懸命に歯を探しています
長男は妖精さんの前に立ち
言いました。
妖精さんは、差し出された前歯を
まじまじと眺め
そう言って、
歯を受け取ると
長男の手にそっと
現金100円を渡しました
妖精さんは嬉しそうに、
部屋中をバタバタ飛び回り
その後ろを子どもたちが追いかけ、
楽しいひとときが流れます
そして、ひとしきり
飛び回った妖精さんは、
少し息を切らしながら、
そう言って、
再び階段を登り
2階へ消えていきました
消え去る前に、
なんとか記念写真を
一枚撮ることができました
妖精さんの迫力に圧されて
長男、チョット引き気味
枕元に置いてないし
子どもが起きてるときに来るし
現金渡しちゃったし
とても妖精とは思えない姿だし
いろいろと間違った
儀式となりました。
これからあと何回
これをやらなあかんのでしょうか