# しじみと母の愛情父が黄疸になった時に、しじみは、病気にいいと言われていて、母は、良くしじみとりに行ったものだと話してくれた。しじみの味は、格別で日に日に病が癒えたと言っていた。戦後、物資不足の時に海に注ぐ川の河口にしじみを採りに行き、いつも、ざるいっぱいのしじみが我が家の軒下にあったそうである。 父の話を聞いて、あの黒光りのした、まるまると太った殻の中に母の愛情がつまっているのではないかと思うようになった。