刀剣外装(刀装)の形状は、使用される刀装具に大きく依存します。

特に刀装の顔ともいえる柄前の形状(柄成)に至っては、ほぼ縁金具に左右されるといっても過言ではありません。

 

そのため外装制作のご依頼時に刀装具を持ち込まれる方には、大きすぎたり小さすぎるといった刀身と不釣り合いな刀装具には、はっきりとその旨をご案内しています。

一般的な工房ではどうかというと、ご依頼者の要望を最大限に酌んで黙ってお請けするケースが多いようです。私は、不格好な刀装をお作りすることは、刀身の性能を最大限に活かすこともできず、将来的にご依頼者様に恥をかかせることも考えられるので、極力避けています。

それでも、中にはご自身が一番正しいとか、黙って言われた通り作れ!といった態度で迫ってくる方も少なからずいますので、そうした場合には事情を勘案してご依頼をお断りするかそれでも工作を行うか判断することにしています。

 

ところで刀剣を用いる武道家にとって、ご自身の愛刀をより使いこなせる状態に仕立てることは、大げさに言うと死活問題でもあります。

そこで今回は、柄成を使用者と刀身に合わせて調整してから、柄下地に合わせて刀装具をお作りするという真逆な工作を行います。

 

柄下地に合わせて、柄縁を制作します。

 

まだ、櫃孔が空いていませんが、形状が完全な楕円形ではなく卵型になっていることからも汎用を目的にしていないことがお分かり頂けると思います。

 

作りかけの切羽(黄銅)。

 

柄縁が特殊な形状である以上、切羽も柄縁に合わせてお作りしなければなりません。

当然、鯉口の形状も合わせて調整しますので、鞘の形状も一般的なものとは変わってきます。

そして、完全なオーダーメイドの外装に仕上がるのです。
 

今回は、既存の刀装具は鍔のみということになりますが、結果的にご依頼者様がご満足頂ける使用感と安全性、強度を共存させるには、刀装具に至るまで新規にお作りすることも一つの解決方法なのです。