作り変え中の柄前です。左が江戸末期の柄前。右が現在制作中の柄前です。

 

刀剣外装の顔に値する箇所は、何といっても柄前です。柄前を変更することで刀剣のイメージはガラッと変わります。もちろん使用感も大きく変えることができます。

 

今回は、江戸期の刀剣外装の修復ですが、確認したところ柄前が老朽化により下地に縦の亀裂が入っていて修復不可能でした。

 

武道で用いられている以上、このままお使いになることは大変危険ですので、柄前を作り変えることをご提案しました。江戸期の柄前は貴重ではありますが、ここまで内部の破損が甚だしいと価値を見出すことが難しいため、下地から作り直します。
 
写真の通り、新規の柄に縁頭のみ移植済みで、下地の作成、鮫着せ、漆塗りまで終わったところです。この後、目貫の移植のために柄糸を解いて古い柄前を分解しなければならないので、その前に記録を留めておきます。
 
柄縁の鍔元の位置(角度)を合わせて写真を撮っていますが、柄成(柄前の形)が大きく異なることがお分かりになりますでしょうか?古い柄前は棒柄状、新しい柄前は諸反りです。
これは、刀身が素直に見て太刀の体配(鎌倉期か?)で、しかも茎反りが深いことから、本来の使用感を体験できるように柄成を調整した結果です。
 
江戸期の職方の作業では、体裁を整えることに終始しており、本来の使用感を生かす工作まではおこなわれていなかったことがわかります。

また、柄の長さが若干短くなっていますが、これはご依頼者様のご要望による調節です。