武道で刀剣を扱っていらっしゃる方なら、必ず一度は見聞きしたことがあるでしょうか?
武芸の奥義は、手の内にあり!とか、手の内で斬れ!とか・・・。
たしかに、「手の内を明かす」という慣用句がある以上、武道において最も重要な事柄の一つに違いありません。
○手の内を明かす
意味:自分の持っている技術や抱いている計画などの大事な情報を、第三者に打ち明けることを意味する語。
この慣用句「手の内を明かす」は、弓道に由来するとまことしやかに紹介されている方がいますが、何も語源は弓道に限定ったことではなくて、得物を用いる武道全般に共通することのように思います。
特に、刀剣操作の解説においては、「手の内」というなんとも抽象的な表現にも関わらず、シックリとくる言葉が他に見当たりません。では、そんな繊細な感覚器官?である「手の内」が刀剣と繋がる唯一の装置は何か?というと、刀剣外装の柄の部分です。
(日本刀の茎を直に握る流派や技を見聞きしたことがありませんので、まず異論はないと思います。もし、そのような技術を継承されている方がいらっしゃいましたら是非ご一報ください!)
「弘法筆を選ばず」といいますが、刀剣の使用感を決定付ける重要な要素に、柄の形状が挙げられます。より繊細な操作を可能にするためには、使い手の身体的特徴に合致した柄前を作り上げることがよいとされています。
この柄前の形状のことを「柄成り」などといいますが、柄成りの調整は一筋縄ではまいりません。
刀身を最大限に活かし、かつ用途にあったバランスや強度を勘案し、前出のとおり使い手の身体的特徴に合わせて微調整を繰り返す。さらに、依頼者のご要望のデザイン性や材料の選択、刀装具の好みなども相まって初めて刀装が完成するのです。
製作途中の柄前の峰方(ちょうど鮫を着せたところ)。
柄成りは、柄巻きだけで調整するものではなく、柄下地・鮫着せ・柄巻き、全ての工程でアウトプットを意識しながら造り込んでいきます。
柄頭側から見た峰方。この微妙なラインが、後々使用感に大きな影響を与えます。
ちなみに、居合などの剣術をたしなんでいらっしゃる方々の指し料の大半が、規格品や模造刀の流用外装です。刀装具にいたっては、バランスの取れない不恰好な鋳物が幅を利かせています。この風潮には、毎度ながらとても違和感を覚えます。
手の内がどうの、たなごころがどうのとご指導されている方が多いですが、その前に今一度ご自身の愛刀の外装の状態をご確認頂きたいと感じます。中には、今にも目釘が抜けて刀身がすっぽ抜けてしまいそうな構造上の欠陥を抱える拵えも多々目撃します。
刀剣外装の顔に値する箇所である柄前は、古来より持ち主の品格を現わすと言われています。精神の鍛錬を目指す武道家である以上、ご自身をいやしめ卑下することのない様にお願いいたします。

