長らくお預かりしている軍刀拵製作のお仕事です。

戦時中の軍刀身に、一緒にお送り頂いた別の軍刀外装を着せるという作業内容ですが、刀身と鉄鞘の反りは合わず、合わせ物のハバキで間に合わせており、外装自体の状態も経年劣化が激しいため、修復と加工に猛烈な時間がかかっています。安易に考えていた刀装具の入手にもてこずり、結局一から切羽やハバキを作ることになりました。

 

ところで最近、状態の良い軍刀拵をほとんど見かけません。

価格が上がっているというよりは、物自体が少なくなっている様に感じます。現存の軍刀拵は、出兵までの時間的な制約の中で突貫工事的に作られたものが多く、分解してみると完成度の低いものが大多数です。そのため戦後は、軍刀拵と言えば粗悪品の代名詞のような扱いを受けてきました。

 

ここで明言しておきたいことは、軍刀拵は日本歴の中で最後に行き着いた刀剣外装であることは否定できない事実です。陣太刀拵え様式の実用一辺倒の作り込みで、刀剣外装の歴史を踏襲し、さらに当時の製造技術の粋を集めて設計・量産されました。もはや、伝統工芸の技術だけでは修復すらできません。

 

敗戦のイメージが濃厚で無駄に忌み嫌われてきた傾向があるのかもしれませんが、国を思い戦地に赴いた先人の思いが忍ばれる外装様式であることは否定できません。また、高級仕様の刀装ともなると、唸るほどの美しい外装も存在します。というわけで、今回も実用の美を加味し、高貴な造形美を再現します。

 

以前の高級仕様軍刀拵の製造時の記録はこちら!

 

お送り頂いた柄前(左)と、新たに作った柄下地(右)です。柄成りの違いがお解かり頂けますでしょうか?軍刀体配の刀身に着せるには難しい工作になりますが、英霊へのオマージュとして作り上げます!

 

やっとカタチになってきましたが、まだまだお時間頂きます。妥協せずに良いものをお作りしたいと思います。