拵えの破損箇所で、最も多いのは「鯉口」と「目釘穴」です。
鯉口に関しては、ある程度外見上の変更を伴わざるを得ません。
Before/After(過去の修復例より)
目釘穴の場合は、巻き直し時にほぼ完璧に修復することが可能です。
特に古い柄前の場合には、鮫皮を一度剥がして、柄下地の状態を確認することができます。
鮫皮は、100年もすると柄下地から剥離するケースが多いのですが、良い鮫皮は再度使用することが可能です。
問題は、柄下地です。柄糸が粉を吹いているような拵えは、大抵柄下地が虫に喰われています。
虫による被害を受けた柄下地(過去の修復例より)
こうなると柄下地の新規作成か、大幅な修復が必要になります。
また、柄前全体は保存状態が良いものの、目釘穴だけが破損した拵えを良く目にしますが、これは無理やり別の刀身に合わせて柄前を組み付けたか、何度も付け外しを繰り返すうちに劣化したか、のどちらかが原因です。
ちなみに、目釘穴の破損が最も多い拵えは、軍刀拵です。
理由の一つは、軍刀の拵え下地は、専門家(鞘師や柄巻師)の手による物が少なく、学徒動員や女工さんなどの非専門家により作られた物が大半だからです。
本来、柄下地には、刀身が寸分違わずに収まり、目釘に力が加わることはほぼありません。
ところが、柄下地と刀身の間にグラツキがあると、グラツキを抑えるために目釘に大きな力が加わり、結果目釘や目釘穴周辺の柄下地が激しく消耗するのです。
目釘穴が破損により広がれば、症状はますます悪化します。
そこで、目釘穴周辺を部分的に補修し、最低限の応急処置を施します。
ほとんどの軍刀拵の下地は元々良い工作ではありませんので、部分的な修復は根本的な解決には至りません。
最善の方法は、やはり柄下地の作り直しですが、今日軍刀を帯刀して行軍する輩はいませんので、このような修復技法でも何ら問題ありません。


