クモの世界にも回転寿司はあった! | 平行植物の環世界

クモの世界にも回転寿司はあった!

《クモの世界にも回転寿司はあった!》
 暖簾をくぐって入ると、ガラスケースに入った新鮮な寿司ネタ、その奥には気難しそうな大将が鉢巻をして立っている。そんな寿司屋はデフレで敷居が高くなり、大衆が赴く寿司屋といえばもっぱら1皿100円の回転寿司店である。長引く不況で外食産業が低迷する中、回転寿司店の業績だけは右肩上がりだという。そんな不況の味方、回転寿司がなんとクモの世界にも波及してる。
 クモの回転寿司店は、アミメアリが引っ越しをする際に、期間限定でオープンする。アミメアリが引っ越しの際に作る行列には、時折蟻の幼虫を咥えたアリ(皿)が通るのだという。普段から蟻を専門で食べているアオオビハエトリ氏は、週に5度はこの回転寿司店を訪れるという常連だ。「クリーム色の大きい皿がきたら、すかさず横からとるんです。逃しはしません。普通の蟻よりおいしいですよ。」普段はクロヤマアリやクロオオアリを襲って食べているのだというが、大きな蟻は捕えるだけで一苦労。アミメアリの回転寿司店ならば、リスクなく簡単に、高カロリーがとれるのだそうだ。
 だが、この回転寿司店はいつまでもあるわけではない。アミメアリの引っ越しが終われば、店は畳まれてしまう。アオオビハエトリ氏は新しい店が見つからなければ、またいつものクロヤマアリやクロオオアリを食べる生活に戻るのだという。「ひと時の祭りだと思って楽しんでいますよ。」夕刻、そう言って回転寿司屋を後にするアオオビハエトリ氏の頭胸部縁には、その名の由来であるライトブルーの青い帯が明るく光っていた。(終)