《花青歌》見終わって… | 越若のひとりごと

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古典芸能「義太夫節」の太夫です。愛犬と日々思ったことの記録です。芸もあれば、ぼんやりノホホンゆるい内容です。

見終えて、良い作品に出合えて、良かった!!

もう一度、見直しても良い!!感想長いなぁ私。

 

主人公花青歌も現代に戻れて、小説家として深い洞察力のもと、心理描写に優れた作品に仕上がって、編集長へ渡すが、突っぱねられ退出する所、秘書に社長が興味を持っていると伝えられる。

予想外に驚く花青歌、現れた社長は纪楚そっくり。

花青歌に、俺の事、心に無いの?諦めるのかと尋ねる。

纪楚、現代にやってきた!で、終わり。

 

最初、花青歌は物語の花青歌になり、最後は纪楚が物語から抜け出て彼女の元へというロマンティックな展開で、現代版も出来るかも?いやいや、これできれいに終わってよいです。

このドラマは「愛ゆえに仇討ちを諦めるか」がテーマなんだけど、同時に幾通りもの愛の形を描いているのと、創作者あるあるかな~。

 

義太夫節という芸は、登場人物を語るとき、稽古始めと舞台にかける時と、変わってくることがよくあります。

 

最初はただの悪の手先と思い語ってたのに、稽古を重ねる内、登場人物がそんな単純じゃないよ、私だって好き好んで悪逆非道を行ってないよ。自分なりに、これ以外方法が無いと心決めて、上司の為に毒を持ったり、闇討ちにしたり…、そんな声が聞こえてきて、毒を盛るにも、ちょっとためらったり、闇討ちでは「すまん」と心で謝って刀を振るう。

 

そういう気持ちを語りに添えることにより、語りが活き活きとしてくる。小説・脚本もそうだと思う。

 

このドラマの面白さは、花青歌が書いた第一稿には、纪楚の生立ちや感情が足りなかった。花青歌が物語に入るにつれ、登場人物それぞれの思いと境遇により、花青歌の第一稿とは違う展開に進んだ事。

 

善人の太子、本当は宮中ではなく市井に風流人として生きたいのに、母の過大な期待から、自分の理想と遠ざかってゆく悲しみ。

自分の為に侵す母の罪の重さに苦悩し、纪楚に全てを委ね毒を煽り、母の罪を償おうとした。

 

太子妃の林夕揺は、そんな苦悩を理解し苦しみを和らげる賢い人であり、太子が自分へ好意はあっても恋人ではなく、花青歌へ心を寄せている事を知っていても、太子の良き理解者・親友というスタンスで、太子を愛する。第一稿とは全く違う。

敵討ちに凝り固まり酷薄極まりない公冶棋も、一族の仇と狙う皇后の娘 纪菀儿の無邪気な好意。これまで自分の事に関心を持つ人もなく、孤独に過ごした日々に、公冶棋を理解しようと頑張るいじらしさに心ほだされる。仇の娘と知り、一度は縁を切るが、彼女の訃報(偽訃報)を聞き、何より大切なのは愛する人のそばにいることだったと気が付く。

 

最終回で、仇討ちを諦め、平穏に暮らす2人とお腹の子、街へ出た二人、戒厳令下の街、兵士から、太子は皇上となり、非常事態を告げられる。

纪菀儿は、家で待っているから危地の纪楚を助けに行くように促し去る。

 

纪楚の心遣いは、愛する人の母を公冶棋の手で殺させないように、父皇を救いに行かせる。ミッション遂行後、纪楚の元へ行く途中、逃げる皇后に刀を向けるが、纪菀儿が母をかばい公冶棋の手にかかり、母の罪を詫び、子供が小さすぎるから一緒に行くと告げ息絶える。

 

せつない2人、ある意味、ロミオとジュリエットですね。

纪楚は、花青歌の第一稿では酷薄非道、仇討ちの為には何でもやる、血も涙もない人物。

花青歌が物語に入ると、もっと細やかな心と悲惨な目に会ったが故に、人への思いやりの深さ溢れる人物となる。

仇討ちの為、花青歌を殺そうとするが、彼女の可愛らしさと不思議さに魅了され愛するようになる。名目上も仮にもは無い、彼女が全てという愛らしい人物と変わる。

 

花青歌も、最初の設定から纪楚を恐れるが、彼を知れば知るほど好きになるが、少しずつ体が透明になり消える日が近い事を知り、自分の想いを捨て、纪楚を慕う南境国の長公主魏南伊に譲ろうとする。

魏南伊は、纪楚が自分の事をビジネスパートナーでしかなく、ただの幼馴染、纪楚の余りにも深い悲しみに、彼を諦め花青歌の元へ行かせる。

纪楚は、花青歌がこの世界の人間でない事、もうじき消えることを知らされる。残りの時間、一緒に生きようと、彼女の願い、仇討ちを捨てる事も受け入れ、都を離れ隠遁生活をしようとする。

 

荷物をまとめている時、宮中の異変、父皇に毒を盛って意識不明にし皇位簒奪、太子登壇の報告。怒りにかられながら父皇の元へ。太子、兄弟のよしみとして父皇に会わせ宮中を去らせる。

 

最終回、皇后との対決、花青歌を盾に取られ、自裁すれば花青歌を助けると告げられ、刃を首に…。花青歌は、もうじき消えるんだからと纪楚に告げ、皇后の小刀で命を絶つ。

 

花青歌、目覚めれば自分のベッド、パソコンを見れば、物語が完成。

 

太子、母皇后の罪滅ぼしに毒酒を煽り、纪楚へ譲位を告げ死を迎えるが、公冶棋の医術により回復、林夕揺とともに夢だった隠遁生活。

 

母皇后は、全てを失い失意のうちに自殺。

息子と夫を愛する人なんだけど、毒親なんですね、自分の理想道理にしたかった。息子の気持ちなんか覗いたこともなく、自己愛の中で妄想に生きた人なんですね。

長公主として何不自由なく育ち、政治上、初恋の人とは引き離され他国へ嫁ぎ、それなりの愛情は与えられても、人の痛みや悲しみが解らない哀れな人だったんですね。

 

父皇、バランス感覚に優れた人だったけど、あと少しの勇気が無かった為に、愛する纪楚の母賢妃を守ることも出来ず、なるべく波風を絶たせない生き方。普通の人だったのね。

 

物語は、纪楚が皇上となり善政を布き、愛する花青歌を想い、生涯妃を持たず、王朝の繁栄を遂げる。

公冶棋は、生涯墓守として過ごす。

 

てな具合にまとめてみたけど、芸の勉強になる!!

仇討ち物語と一口に言えない、どういう人物像を作るのか大切、あと破綻しないように、テンポをどうとってゆくのか。

こんなに見たんだから、芸の役に立つよね!!

 

良いドラマをありがとうございました。

ただ残念なのは、現代の纪楚のヘアー、何で?

あんなに素敵な人なのに…

 

 

 

 

 

 

 

公冶棋