今日は、円/ドル為替レート市場についての新たな発見を手短に報告します。

 

 先週木曜日(2022年9月22日)、日本の財務省と日銀が共同で円/ドル為替市場に介入して円安の是正を試みて以降、市場では5日が経ちました(関連指標が揃う最新の9月26日現在)。

 

 ドル売り・円買い介入の結果、一時は1ドル=144円から1ドル=142円へとおよそ2円の幅の円高効果が得られましたが、しかし、昨日(9月26日)には、1ドル≒144円余りに戻り、既に日本政府と日銀による市場介入効果はなくなっています(下に2022年年初以来の日米金利差〈=アメリカの10年国債金利-日本の10年国債金利〉と円/ドル為替レートの推移を同時に示したグラフを示しています)。

 

出典:筆者作成(左右軸表示の誤りを訂正:2022年10月12日9:40)

 

 ただ、以上図では日米金利差と円/ドル為替レートとの間医の相関関係が少し見えづらいので、いつものように日米金利差を横軸とし(X軸)、円/ドル為替レートを縦軸(Y軸)とした平面上に今年年初以降の日米金利差と円/ドル為替レートの相関の様子を示したグラフを描いてみました(下のグラフを参照ください)。

 

出典:筆者作成。

 

 今年年初以来6月半ばまでは、日米金利差と円/ドル為替レートは、ほぼ完全な直線相関関係を示していました(上のグラフの下の薄赤矢印線を参照)。

 

 しかしそれ以降7月末までは、日米金利差はむしろ縮小傾向にあったのにまったく円高にはならず、1ドル=135円の水準で円/ドル為替レートは固定されてしまいました。これについて経済ジャーナリストたちは、日本の貿易収支、さらには経常収支が悪化したからだと説明したのですが、これは突然に生じた事象ではなく、昨年(2021年)半ば以降一貫した傾向でありましたので(国際収支の12ヶ月移動累積値の推移を下のグラフに示しています)、これはそれほどの科学的推論にはなっていないのではないか、と私は考えています。

 

出典:筆者作成。

 

 とにかく、日米金利差が縮小しても、決して円高にはならなかったことは確かでした。そして円/ドル為替レートはそれ以降、再び別の日米金利差との直線相関関係を見せ始めたのです(上のグラフの上側の薄赤矢印線)。

 

 そして今回、日本政府と日銀による円/ドル為替市場介入効果は1週間ともたず、相場は1ドル=145円の水準に戻ってしまいました。

 

 こうして、円/ドル為替レートは日米金利差が開くと円安が進むという関係は示しているのですが、ポイントは、「円/ドル為替レートは日米金利差によって一義的に決められる状況にはない」が、しかし、一旦円安方向に振れた為替レートは、何があっても決して円高に振れることはない、という強い「円/ドル為替レートの下方硬直性を示している」ということなのです。

 

 私は、円/ドル為替レートは日米金利差によって決まるものではなく、日本の貿易収支、ひいては経常収支によって決まるものではなく、日本の対アメリカの比較国力の大きさによって決まる、と今月9日のブログ(『円/ドルは、日米GDP比率できまる!-日本経済は世界市場から切り離されつつある』)で書きましたが、上に示した円/ドル為替レートの下方硬直性は、その主張を支えるもう一つの発見だと考え、今日、緊急に報告することとしました。