昨日(2019723日)、イギリスの次期党首に前外相のボリス・ジョンソンを選び、今日(724日)ジョンソンはイギリスの首相に就くことになるとの報道がありました。 

 

ジョンソン(肖像画と都庁前でアストンマーチンに乗車する姿)

【画像出展:File:Yukiya Amano with Boris Johnson in London - 2018 (41099455635) (cropped).jpg Author:Foreign and Commonwealth Office(ジョンソン肖像写真)、File:Foreign Secretary Boris Johnson visits Japan (35890109752).jpg Author:Uk in Japan-FCO(アストンマーチンの前のジョンソン)】   

 

ジョンソンは、全投票数の3分の266.4%)の得票を得ていますが、棄権したものを含む有権者総数に対しても58.0%と半数をはるかに超える得票を得ています(下のグラフを参照ください)。それだけ、保守党内で、強い支持を得たということです。

 

出典:BBCニューズに示されたデータを素に作成。

 

ジョンソンは、「合意がなくてもEUを離脱する!」という姿勢を明確にしています。そのジョンソンが、保守党内の選挙だとは言え、3年前に行われたイギリスのEU離脱についての国民投票の勢い(下に当時の投票結果を示しています)を失っていないことを示しています。

 

 

私は、このブログで、一貫してイギリスがEUから離脱することを支持してきました。その第1の、そして最も基本的な判断理由は、イギリスとドイツ・フランスとでは、国体が大きく違う、ということです。そしてドイツとフランスの国体は、その2国が主導するEUの体制を決定づけています(欧州議会の国別議席構成については、数を参照ください)。

 

出典:Wikipedia『欧州議会』に示されたデータを素に作成。

 

では、何が違うかというと、イギリスは、16世紀に自由都市ジュネーヴで神学者ジャン・カルヴァンが生んだキリスト新教の教義、カルヴィニズム、を根拠としてその後17世紀のイギリスの2度にわたる市民革命を通じて構築された近代資本主義体制の国です。つまり、政府の管理を徹底して排除して、自由な市場を求める体制です。

 

一方、ドイツはキリスト新教には分類されるものの、カルヴィニズムのような自由市場体制にまで言及がなかった神学者マルチン・ルターの興したキリスト新教に基づいており、そしてフランスは今でもキリスト旧教、カソリック、の考えが優越しています。そのために中央集権体制で、政府官僚が大いに市場を管理する体制を是としています。特に、ドイツは、企業経営についての労働組合の強い関与まで認めています。

 

イギリスも、第2次世界大戦が終わった直後に労働党が政権をとって以来、大企業を国有化するなど市場の自由を奪う経済体制を続けて来ていました。そして「イギリス病」と呼ばれるほどの経済不調に長年悩んできました。

 

それを一挙に覆したのが、1979年に保守党代表として首相に就いたマーガレット・サッチャーです。サッチャーは、国営企業の民営化、金融ビッグバンと呼ばれる徹底した金融市場の規制緩和、公営住宅の払い下げを次々と実施して、アメリカに準ずるほどの近代資本主義体制にイギリスの国体を変えてしまいました。

 

マーガレット・サッチャー首相

【画像出展:Wikipedia File:Margaret Thatcher.png Attribution:Chris Collins/Margarett Thatcher Foundation/CC By-SA3.0(サッチャー首相)】

 

以降、停滞していたGDP成長率はアメリカと並ぶほどに復興し、以降、ドイツやフランスよりも高いGDP成長率を維持しています(下のグラフを参照ください)。 

 

出典:OECD統計Statのデータを素に作成。 

 

しかし、ドイツやフランスが主導するEUの官僚たちは、今も市場に対する管理を強めつつあり、個別商品についても、様々な細かな規制を増やしています。このままEUに留まり続ければ、イギリスがイギリスでなくなり、イギリスの近代資本主義体制は崩され、そしてアメリカ並みに高かったGDP成長率はドイツやフランス並みに低下することを、私は恐れています。

 

さらに、EU参加国の中には、ギリシャやスペインのように財政危機にあり、EUによる保護を求め続けています。その上に、今は援助する側にあるフランス自身、そのGDPに匹敵するほどの巨額の政府債務(国債残高)を抱えており、しかもその7割は、内国債ではなく外債です。つまり、フランス自身がいつ財政危機に陥ってもおかしくない状況です。

 

そういう状況の中で、イギリスがイギリスのよき国体を維持し、経済成長を続けるためには、EUを離脱することが必要であり、今がその最後のチャンスだ、というのが私の考えです。

 

上記の理由によって、私は今回のボリス・ジョンソンのイギリス首相就任を喜び、「合意なき離脱」を恐れない不退転の覚悟で、サッチャーの如く強い指導力を発揮し、イギリスを近代資本主義国であらしめ続けて欲しい、と強く願っています。