昨日(531日)、大阪地検が元財務省官僚の佐川宣寿〈さがわのぶひさ〉ら全員を不起訴処分にしたと発表しました。

 

これで、安倍総理と財務省官僚の逃げ切りは完成です。

 

要するに、モリカケ問題というのは、その程度の些末な事件であったということです。1年間にわたって、モリカケ問題が日本政治の最大課題であるということに仕立て上げた人たち、学識経験者や評論家と自称する人たち、あるいはマスコミ、は、一体自分たちがほとんど何の成果も挙げられなかったことについて、どのような責任を感じているのでしょうか?

 

 

わたしは、彼らの罪は、日本から人民主権の民主主義政治を行う機会を奪った万死に値する大きなものだと考えています。

 

それはどういう意味か?

 

 

政治家が私利私欲に走るということは、このブログで示してきたとおり、100年前にこの国に政党政治が始まった瞬間に生じた現象で(2017年7月1日付『政治家は日本の官僚を支配できるか(戦前編)』を参照ください)、現代に至るまで、その姿を変えることなく続いてきたことです。

 

安倍内閣になって急にその政党政治のあり様が変わったというのではありません。

 

日本人は100年間、そうして私利私欲を追求する政治家のあり様を認めてきたのです。そして大半の日本人は、自分たちにもその機会が与えられれば、隣の人よりちょっとだけ優遇されるように政治家に頼んでみたいと考えているのです。その様な日本人の心象がなければ、これほどまで私利私欲を追求する政治家は生き延びてこれなかったでしょう。

 

 

で、学識経験者や評論家、マスコミと言った人の大罪とは何か、ということについてです。

 

これらの人の罪は、モリカケに関わる小さなウソを極大化して喧伝することにより、官僚が政治家と強調しあいながら、というより利用しながら、日本人についてきた大きなウソの隠ぺいに、結果として加担してきたということです。

 

 

今の日本で、モリカケよりはるかに大きな問題があります。それは、日本経済が1990年代半ば以降収縮し続けており、あと10年以内に財政・経済破綻することがほぼ確実に見込めるということです。

 

しかし、そのような議論をする基礎となる経済指標について、官僚たちはその値を改ざんしてきました。あるいは、極東の1地域でしか通用しない通貨、それも世界水準の10倍もの量が発行されている通貨、でのみ日本のGDP、あるいは輸出入といった対外的経済活動を計測するという、21世紀のものとは思えない”鎖国状態的“心理に日本人を追い込んでいます。

 

 

一昨日報告したとおり、実質ドルで表示した、つまり世界標準の方法で表示した、日本のGDP1995年の6割になっている、言い換えれば、その間4割減っています。なのに官僚たちは、政治家の意向を忖度して、日本円で表示するGDPの値を改ざんすることにより、名目GDPも成長し始めたと主張しています。

 

詳しくは、530日ブログ『22年間で日本のGDP4割も減った!ー日本のGDP統計はぐちゃぐちゃ(6)』を参照ください。

 

特に、日本経済の実力を示す実質GDPについては、1990年代半ば以降もずっと増え続けているというようなデータをねつ造し続けて来ています。そして、日本経済の実力はまだ成長し続けているので、抜本的な経済構造改革など必要はないという経済学者の主張に根拠を与えています。

 

 

そしてまた、日本の異次元の通貨膨張が、あと5年ほどで別次元に至ることになるということを示なければならないという責務を放棄しています。つまり、重大な不作為を行っています。

 

それは、今の赤字国債の発行の勢いが止まらなければ、そして止まらないということは2020年にプライマリーバランスをゼロにするという目標を放棄したということで既に明らかになっているのですが、あと5年ほどで日銀が国債を市中を介して購入することができなくなり、政府から直接購入せざるを得なくなるということです。

 

あと5年ほどすれば、銀行の保有している国債が底をつき、日銀は国債の購入先を市場の中に見つけられなくなるからです。そうすれば、日銀が政府から直接国債を買い取ることを容認するように財政法を修正、改正とは言いたくありません、しなければなりません。これは、日本の財政が破綻したことを世界に対して宣言するという効果をもちます。その時以来、日本の円が今と同水準の価値をもち続けることはとても期待できません。

 

出展:日本銀行『資金循環統計』によるデータを素に作成。

 

 

財政事情を表すデータを改ざんしたギリシャが、決定的な経済崩壊に至っていないのは、ギリシャがEUのメンバーであってユーロという国際通貨を使っていること、そしてEUが経済規模の小さなギリシャぐらいであれば経済破綻を免れるほどの経済援助を行えるからです。しかし、そういった幸運に日本は恵まれていません。

 

 

モリカケ問題を文書改ざんの大問題だとして騒いできた人たちは、以上の日本の深刻な経済状態を示す指標について何重ものデータ改ざんを行ってきた官僚たちの行為を指摘することなく、結果としてその隠蔽に加担してきました。

 

その結果、「モリカケはひどいが、安倍の経済政策はいい!」という世論が醸成され、ウソがどれほど暴かれようが、内閣支持率が崩壊することはありませんでした。

 

 

そしてそのことが安倍晋三に自信を与え、内閣総辞職を行わず、さらには、財務省官僚のみならず地検官僚の忖度〈そんたく〉まで呼び出しているということです。そして、この流れを変える力は、日本の対立政党(野党とは呼べないということは既に明らかにしています)にはありません。朝日新聞にもです。

 

それは、その程度にしておけというのが、今の日本の世論の大勢だからです。そしてその世論は、官僚が行った重要で深刻な経済データの改ざんによりもたらされたものです。

 

 

モリカケは些末な問題だ、より深刻なデータ改ざんがある、と私は繰り返し警告してきました。今も継続中の連載『公文書改ざん問題の本質を歴史から探る』は、そのことを歴史をひも解くことにより、日本政治の悪弊なのだということを指摘してきました。

 

なのに日本中挙げてモリカケ問題にかまけ、そしてその挙句にその小さなモリカケ問題を決着することすらできないというみっともない結果を産み出しています。

 

このような状況に追い込んだ、学識経験者、評論家、そしてマスコミの責任は大きいと思います。それは「万死に値する」ほどのものだ、と私は言うのです。

 

 

日本人は、1日も早く自分たちが情報操作により”鎖国状態”に置かれているということに気づかなければなりません。そして経済実態を見る目を奪われている、ということを知らなければなりません。

 

このブログは、日本人、特に若い日本人、にその気づきを与えようと書かれ続けています。