地方創生整備推進交付金の決定の記事があったが、その中でも宇奈月麦酒のブランディングプロジェクトへの支援がうれしい。
 
地方創生で地域地域の独自性が花開き、多彩な地方文化が生まれることが地方創生の目指すところであるならば大変目的合理性にあった資金だと思うのである。
 
しかし、採算からいうと地ビール経営の環境は非常に厳しいと言わざるを得ない。もともと、明治時代の高級酒であったビールに対する酒税はドイツの約20倍、アメリカの約12倍です。それがそのまま現代に引き継がれてきたもののようです。
 
このような課税の強化に対抗して、ビール会社はそれぞれに課税の網を潜り抜けるべく第3のビールなどの自助努力をしてきました。できるだけビールに似せて、しかも原材料をなんとかビールと断定されないように涙ぐましい努力をしてきたわけです。
 
その意味ではわたしは、国税に異議申し立てをしたサッポロビールは庶民の味方だと思います。さすが、男は黙ってサッポロビールです。しかし、もう黙ってばかりはおられません。
 
昨今のビール市場の低迷も、複合的な要因もありましょうが、このようにして、本来のビールのうまさを庶民が楽しめないような方向に酒税を維持してきた国税の姿勢にあると思うし、国会もこのことをまったくもって変えようとしない。
 
そして今、地ビールブームを迎えて、大手ナショナルビールも、本来のビールの味に目覚めたとも思われるように、クラフトビールへの参入を発表し始めています。これは日本のビール産業にとっては画期的なことです。
 
一方で、地ビール創設のための法改正で、60キロリットルから醸造免許をとれるようになり、各地方で、様々な地ビール事業が花開きました。しかし、もともと装置産業である地ビールの経営には、億単位の大きな設備投資が必要です。
 
この初期投資経費が重く地ビール経営に重しになっているために、地ビール経営は一部のネット主力販売のヨナヨナビールなどの元気のいい企業以外の地方の小規模醸造にとっては事業性としては大変厳しいものになります。うまく経営しているところはビールに付随するレストランやお土産物で採算がなんとかあっているところが多いのが現実でしょう。
 
ここで、宇奈月麦酒のブランディングプロジェクトという地方創生整備推進交付金を活用したテコ入れ策は、このような厳しい地ビール経営の中で行われるものだということです。ここで必要なのはシステム思考です。このような地方創生の対症療法的な補助金交付で終わるのではなく、おおもとの酒税自体を見直すことが地方創生に即結しているのではないかということです。
 
本物のビールを、しかも、各地方地方の特色ある地ビールが多彩に花咲く日本の地方になれば、地方の魅力もまた増すというものです。このようにして、小さな領域だけの問題として地方創生をとらえるのではなく、システム思考で全国の地方が苦しんでいる中央からの諸政策に対してしっかりとものを言っていける日本になりたいものです。
 
酵母の入った地域でできたてのおいしいビールを日頃から楽しめるように、宇奈月麦酒さんには本当に頑張ってもらいたいものです。