吉村昭三部作が完結し、それに対する評価かどうかわかりませんが、日本文藝家協会から推薦入会をいただいて、さて、次。

取材を始めています。いつもこの時期に「次作に向けてご奮闘を」という激励をくださるのは、文藝春秋元役員で小説家に転身した羽鳥好之さん。有難いお言葉です。

わたしの場合、本が出来上がったときというのは、さほどうれしくないのです。文芸の老舗出版社から刊行となった三部作の三作目のときでさえ。できるかどうかわからない。いつもそこから始まる。ハラハラ、ドキドキ。万策尽きたと思っても、なんとか活路を見い出す。その高揚感。

昔インタビューで出会った水木しげるさんは、幸福観察学会をつくろうとしたそうですが、挑戦によって生じる心の緊張やハリが幸福といえば幸福なのかもと述べていました。結果でなく、奮闘する過程にこそ、なのかもしれません。

 

 

『夫婦の階段』(NHK出版)