(古瀬経営法律事務所発行のニュースレターをブログに転載します。完全版はこちら(pdf)をご覧下さい。)

 

謹賀新年

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします

 勝手ながら、「年賀状仕舞い」をさせていただいており、年賀状への返礼をせず、大変失礼いたしました。本書をもって年初の挨拶に代えさせていただきますので、ご容赦のほどお願い申し上げます。

 

 さて、この度、北海道新聞の「暮らしと法律」に、私が監修した記事「SNSアイコンに軽い気持ちでアニメ画像 それって著作権侵害かも」が掲載されました。日常生活で起こりがちな著作権侵害について解説しています。ご興味のある方はこちらからアクセスしてご覧下さい。

はじめに

 2024年には、企業法務に関連する様々な改正法・新法の施行が予定されています。今回のニュースレターでは、それらのうち、労働関連法令に関する改正・新法のうち重要なものをピックアップして、説明します。

フリーランス保護新法

 いわゆる「フリーランス保護新法」は、労働基準法が適用されない個人(フリーランス)が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的とした法律です。フリーランス保護新法ではフリーランスの人々が不当に不利益を被らないように、委託をする企業側が環境を整える必要があります。

 

 フリーランス保護新法の保護の対象は、いわゆるフリーランス(法律上の定義は「特定受託事業者」)ですが、個人事業主だけを指すのではないことに注意が必要です。「特定受託事業者」とは、「業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないもの」と定義されており、一人で仕事をしている個人事業主のほか、法人でも従業員を雇っていないいわゆる一人社長も含まれます。つまり、個人事業主のイラストレーターやプログラマーなど、フリーランスとしてイメージされる典型的な業種だけではなく、建設業の一人親方やトラック運転手も含まれます。

 

 フリーランス保護新法の対象となる取引は、「特定委託事業者(特定受託事業者に業務を発注する者)が特定委託事業者(フリーランス)に業務委託した場合」です。発注者である「特定委託事業者」は、従業員を雇っている人・会社に限定されますので、フリーランスからフリーランスに発注される取引には本法は適用されません。

 

 それでは、フリーランスに発注する企業が行うべき事柄について具体的に見ていきましょう。

 

・重要な契約内容の書面等(メール等を含む)での明示

→フリーランスへの発注の際には、書面等で、委託業務の内容、報酬、支払時期などを明確にする必要があります。付き合いが長い委託先であったとしても、口頭のみで発注することは許されないので注意が必要です。

 

・報酬の60日以内の支払

→フリーランス保護新法では報酬の支払期日は納品があってから原則60日以内となります。基本的には「月末締め翌々月末払い」の場合、納品から60日以上経過してしまうこともあるので、支払サイトの変更を検討する必要があります。

 

・募集情報の的確な表示

→求人サイトやクラウドソーシングなど、不特定多数が閲覧できる媒体でフリーランスを募集する場合、募集情報を正確に表示することが必要です。

 

・取引の適正化

→理由のない成果物の受領拒否や報酬減額などの不当な行為が明文として禁止されました。

 

 フリーランス保護新法は、2024年11月までの施行が予定されていますので、それまでに対応を準備しておく必要があります。

労働基準法施行規則改正 ~労働条件明示のルールの見直し~

 労働者を雇い入れる際には労働条件通知書を交付する義務があります。今回の労働基準法施行規則改正により、労働契約締結時及び有期労働契約更新時に明示すべき労働条件が追加されることになりました。

 

1.全ての労働者に対する明示事項

・就業場所、業務の変更の範囲の明示

→勤務開始直後の就業場所と業務の範囲に加えて、その後変更の可能性のある範囲まで記載することが必要になります。

 

2.有期契約労働者に対する明示事項

・有期労働契約の更新上限の明示

→有期労働契約の契約締結時と更新時に、更新上限の有無とその内容の明示をすることが必要になります。

 

・無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示

→無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨、また、無期転換後の労働条件を明示することが必要です。(※無期転換ルール:有期雇用契約が通算5年を超える場合に、労働者からの申出により有期契約から無期契約に転換することができるルール)

 

 これらの労働条件通知書の記載事項の追加は、2024年4月1日以降に締結・更新される労働契約から行う必要がありますので、準備が必要です。

 

改善基準告示改正 ~特定業種における労働時間の上限規制の見直し~

 改善基準告示は、トラックやタクシー、バス運転手などの自動車運転者に対して、運転時間や休息期間などの基準を定めたものです。いわゆる運送業の2024年問題といわれている問題で、2024年4月1日以降、ドライバーの労働時間の時間外労働時間の上限が短縮されるほか、勤務間インターバルの確保などが求められます。

 また、医師や建設業においても、これまでは時間外労働の上限規制の適用が猶予されていましたが、2024年4月1日から猶予が終了となり、時間外労働時間の上限が短縮されます(詳細は省略します。)。

厚生年金保険法・健康保険法改正 ~51人以上の事業所で短時間労働者が社会保険の適用対象に~

 現行法上、短時間労働者(いわゆるパート・アルバイトなど)を社会保険に加入させる義務がある「特定適用事業所」は、短時間労働者を除く被保険者の総数が101人以上の事業所とされています。

 しかし、2024年10月1日以降、短時間労働者を除く被保険者の総数が51人以上の事業所が特定適用事業所とされ、その範囲が大幅に拡大されます。これまで適用されていなかった従業員50~100人規模の企業は、対応の準備が必要です。

 

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