(古瀬法律事務所発行のニュースレターをブログに転載します。)

AI契約書レビューサービスを導入しました!

当事務所では、AI契約書レビューを導入しました。使ってみた感じですと、まだまだ人間に代替するレベルには至っていませんが、業務の効率化には繋がると考えています。今後、お客様からの契約書レビューのご依頼に、これまで以上に、迅速かつ性格に対応することができると考えておりますので、契約締結の際には遠慮なくご連絡下さい。なお、導入したAI契約書レビューサービスでは、万全のセキュリティ対策が取られた上で、情報の秘匿には細心の注意が払われており、システム側でレビューした契約書の情報にアクセスされることはありませんので、ご安心下さい。

不倫をした従業員に対する懲戒

さて、渡部建、瀬戸大也、近藤真彦など、今年も多くの芸能人や著名人の不倫問題が騒がれました。彼らには、不倫の代償として、スポンサー契約の解除や、出演番組からの降板など、それぞれ重い制裁が科されています。「犯罪行為をしたわけでもないのに厳しすぎるのではないか」といった意見もあるようですが、人気商売である以上、やむを得ないのでしょう。

では、有名人ではない一般人の不倫が発覚した場合に、その人が勤めている会社は、その従業員に対して懲戒処分をすることができるのでしょうか。3パターンに分けて考えていきます。

1. 会社と無関係な人との不倫の場合

 社員が会社と無関係な人との不倫していたことが発覚したとしても、純然たる私生活上の問題ですので、それに対して会社が懲戒処分をすることはできないでしょう。雇用契約の例ではありませんが、イメージが大切な芸能人ですら、不倫問題のみで所属事務所との契約が解除されている例はあまりないようです(他の問題との合わせ技で解除となっている例はあるようですが)。

2. 社内不倫の場合

社内での不倫、例えば、妻子のある課長と女性従業員との不倫関係が発覚すれば、職場内の秩序に悪影響が出るでしょう。しかし、社内の人間関係とはいえ、あくまで私生活上の問題ですから、通常は、懲戒の対象とすることはできないと考えられます(職場で不埒な行為に及んでいたなど、よっぽど悪質な場合は別ですが)。平成元年の裁判例では、10名規模の会社において、妻子ある男性社員と不倫関係になった女性社員が懲戒解雇された事例において、懲戒解雇を無効と判示しています。

懲戒が難しいとすると、社内秩序の維持・回復のために、どちらか一方を配転させて、接触しないようにするのが実務的な対応といったところでしょう。しかし、少人数の企業で配転場所がないという場合には、事情によっては、普通解雇が許される場合もあると考えられます。

3. 取引先関係者との不倫の場合

取引先関係者との不倫、例えば、自社の営業担当社員と得意先の女性社員とが不倫関係になってしまうと、自社の企業秩序のみならず、得意先の企業秩序をも乱してしまうことになり、結果として得意先の信頼を失うことに繋がりかねません。したがって、こうした不倫行為は、私生活上の問題とはいえ、業務への支障が重大な行為として、懲戒処分の対象とすることは十分にあり得ます。処分の程度としては、懲戒解雇とするのは難しいかもしれませんが、ある程度重い懲戒処分とすることはあり得るでしょうし、また、事情によっては普通解雇も可能な場合もあるでしょう。

この問題に関する裁判例の判断は割れています。自動車教習所において、妻子ある男性社員が女性教習生と不倫関係となったために懲戒解雇された事案において、裁判所は、「教習生の信頼や評価を低下させる虞」があるとしながらも、懲戒解雇は無効と判示しています。他方で、韓国系の学校において、教職員が生徒の母親と不倫関係となったために懲戒解雇された事案においては、「社会生活上の倫理及び教育者に要求される高度の倫理に反して(いる)」として、懲戒解雇を有効と判示しています。

 

社員に対して懲戒処分(特に懲戒解雇)をする場合、その社員に与える不利益の度合いが大きいため、紛争になりやすいです。懲戒処分をするときは慎重になることが大事です。事前に弁護士にご相談下さい。

 

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