不確実な時代環境の中で、ほとんどの経営者が新たな“成長戦略”を描けなくて苦心しているようだ。
IGグループでは月2回、『将軍の日』セミナーを開催している。参加された経営者の方々は一日かけて、自社の未来に想いを馳せながら、5年後のあるべき姿を形にしようと悪戦苦闘するが、なかなか新たな“成長”領域を見出せないでいる。
そんな中で、二人の息子さんを連れて参加された経営者の話がおもしろい。立ち上げたばかりの二つの事業をそれぞれの息子さんに譲ることを宣言した上で、「5年後、二人で100億の事業規模をつくりあげなさい」という目標設定をしてしまった。
息子さんら二人はピンとこない様子。当の本人はお構いなしで、電卓を叩きながら一人で構想の世界。「これぐらいのイメージが湧かんかったら、社長には到底なれんばい」と、もう出来上がった感じだ。
もちろん、この経営者は創業者社長で、『将軍の日』にも過去に何度となく参加されており、もっとも安定を嫌う性格の人で、今までの実績も大したものがある。だから、ハッタリでもなんでもない。上に立つ人間として、大きな目標を掲げ、挑戦することの大切さを伝授したかったのであろう。
経営環境が悪く、業績が低迷してくると、どうしても現状維持に走りたくなる。しかし、現状維持は衰退と考えた方がいい(「激しく“成長”していなければ、激しく落ち込む時代」・・・)。「窮すれば即ち変じ、変じれば即ち通ず」(易経)という言葉がある。大変な時代だからこそ、大切なのは未来からの逆算。また、経営者には常にイノベーション(=抜本革新)していくエネルギーが必要だ。
「現状ベースで何とか採算を合わせ、資金の帳尻を合わせたい」、今日の平凡な事業に依存せざるを得ない気持ちは分かる。現状の改善に頭をひねるのも大切だとおもうが、現状維持を当然の目標にしてはならない。
もう一つの『将軍の日』があってもいいだろう。過去に捉われない、徹底したイノベーションをベースにした計画づくりだ。いやむしろ、これが本来の姿なのだ。
ドラッカーは、「負わないことによるリスク」があるという。革新的な機会の追求をしなかったことで、競争に取り残されてしまうことのリスクだ。つまり、リスクに対して受身になるのではなく、あるべき姿との関係を考え抜いたうえで真正面から取り組むことを求めているのである。
リスクとの戦いを避けて、未来に到達することはできない。“成長戦略”とは、リスクをチャンスに変えるために何をなすべきかを徹底的に考え抜くことである。
(H23.8.29)