あらゆる組織において、革新するための試行錯誤が続いている。現状のままではジワジワと低下を続けている業績不振に歯止めをかけることができないという危機感においては、共通の思いがあるからであろう。


 様々なところで、「第二創業」あるいは「“新事業化”」と称するセミナーなどが流行っているという。ドメインの再構築、新たな成長曲線をいかに描くか、新たな戦略を担う後継者はじめ人材の育成をどうするのか等々。私たち会計業界も、その例外ではない。しかし残念ながら、参加するものすべてが“事業化”に成功することはない。むしろ、その参加数が増えれば増えるほど、成功と不成功の度合、その“格差”は広がる傾向にあるように思える。


 つい最近もこんな相談があった。トップの了解のもと、“新事業化”に取り組んでいるのであるが、既存事業における顧客の減少、値下げの圧力などで業績が低下している中、なかなか“新事業化”の成果が上がらず、それに費やしている時間やコストに対して、トップはじめ周囲の目が冷ややかになってきて、やりづらいとのことだ。


 これは、“事業化”に失敗する典型的な事例である。


 第一に、パラドックスが生じている。味方であるはずのものが、いつの間にか敵になっている。つまり、組織の中に敵が生じているという理不尽である。組織の未来にもっとも責任を負うべきトップ自らが足を引っ張っているわけだ。


 現状における業績の低迷は、今までやってきたことへの顧客の不満、不支持から生じたリスクである(受動リスク)。“新事業化”に掛けている時間やコストは、組織の未来をつくるために自らの意志でつくりだしたリスクである(能動リスク)。リスクの次元が全然ちがうものを、なぜ相殺するような愚を犯すのか。これでは、失敗しても致し方ない道理がある。


 もう一つ考えるべきは、「スピードのある変化」である。変化のスピードが激しい環境である。残された時間は、あまり多くはないという危機感を持つべきである。「スピードのある変化」を起こすためには、もっと周囲を巻き込む必要がある。


 そのためには、“新事業化”に対するイメージをもっと強く描き、そして「いついつまでに、年商一億にする」というような具体的な目標を立て、組織に対する貢献意欲を表明すべきであろう。

 成功するには、何事も未来からの逆算が必要だ。担当者は、“新事業化”計画をしっかりと立てることだ。そして、組織で承認した以上、担当者はもちろん、組織全体の不退転の覚悟が必要だ。“新事業化”における格差の原因は、そんなところにある。

(H22.6.7)