あるコンサルタントの沈痛な想い・・・。


「仕事一筋、まじめにやってきた製造業の社長が、長年にわたり技術をコツコツ積み上げてきたにも関わらず、年々売上の減少で苦しんでいる。そんな社長と、どう向き合えばいいのだろうか?」


 多くの中小企業の経営者が抱えている二つの不安がある。一つは、自社の未来が描けないことへの不安である。もう一つは、過去の成功体験、つまり今までやってきたことがこれから先も通用するのだろうかという不安である。最近盛んに、第二創業とか新“事業化”という言葉は飛び交っているが、背景にそのような事情があるからだ。


 では、今求められている“事業化”とは何か。たんに、以前に流行った多角化ではないと考える。むしろ、選択と集中が求められる抜本革新的な“事業化”でないと、成果は出ないのではなかろうか。


 “事業化”の前提は、ドメインの選択(目指すべき事業領域)である。つまり、自らの生存領域を選び取ることであり、それは自らの存在価値を最も発揮できる場所の選択であり、渡邉美樹氏がいうところの「存在対効果」について真剣に考え抜くことであると考える。


 そして、“事業化”とは上記前提のもとで、いかに顧客を創造し、事業の持続的な成長の基盤をつくり出すことができるかどうかにかかっている。


 まず、手掛けるべきはヴィジョン(=あるべき姿)を明確にすることである。ヴィジョンを描くことができれば、現状との差、つまり問題がはっきりしてくる。問題がはっきりすれば、なすべき課題(=目標)が具体化する。つまり、問題が価値化されたことになる。


 時代の価値観(=思考の枠組み)が大きく変貌しようとしている今日、企業を取り巻く環境の変化は、小手先のテクニックが通用するほど甘くはないと自覚するべきであろう。冒頭にあったように、コツコツと積み上げてきた技術(知識や経験などのハウツー)が、もうそれだけでは価値を生み出すことができないのである。だからこそ、私たちは抜本的革新に取り組む千載一遇のチャンスを今、迎えていると思えるのだ。


 私たちが未来へ想いを馳せるとき、明日や明後日といった近い未来ほど描きづらいが、遠い未来ほど夢は描きやすいのである。なぜなら、近い未来ほど過去の影響をもろに受けるが、未来は遠ければ遠いほど、過去の影響が小さくなるからである。


 “事業化”とは、過去に捉われないということであり、むしろ過去を捨てる決意をするということではなかろうか。そのとき、二つの不安は消える。

(H22.2.15)