出張先で目に止まった本を紹介したい。
ハワード・ガードナー教授(心理学者、MI理論の提唱者)の著書である『知的な未来をつくる五つの心』だ。
「思考停止に陥った現代社会を救うのは五つのマインドセットを持ったリーダーだ!」という帯の宣伝文句に惹かれての購入であるが、本文にある「これからの時代を有意義に生きようとする人々がこれらの心を必要とするのはたしかであるが、これらの心を将来的に発達させるべきものだと考えており、価値観の先取りを狙っている」というのが面白い。 人間の心のあり方と価値観は切り離すことはできないという。
「五つの心」の内容のすべてには、今回は触れないがこれらの心の一つである“熟練”した心について考えてみたい。
“熟練”した心には二つの働きがあるという。第一に、自分の職業に必要とされる思考方法に精通し、それを使いこなす。第二に、長期にわたって着実に物事をやり続け、技術と理解を深める。
同教授によると、「題材を学ぶこと」と「“熟練”すること」は違うという。確かに、その差は物事に対峙したときにはっきりする。たとえば、経営計画を策定する知識や技術を学んだとしても、経営計画の価値や効果を引き出すことができるようなつくり方ができなければ、“熟練”した心を身につけたことにはならない。
どうだろう?自分を振り返ってみよう。自分の職業に必要な思考方法に精通し、使いこなせているだろうか。また、やり続けることによって技術や理解を磨き、深めているだろうか。“熟練”した心を身につけていないと、他者への依存が強くなり、いつまでも要求レベルの高いやりがいのある仕事を任せてもらえないことになる。
ではどうすれば、“熟練”した心は身につくのだろうか。次の点を留意しながら、学後の実践を重ね続けるしかない。
① 物事の本質を見極め、重要な主題や概念を見分ける。
② 選び出した主題を徹底して追及し続ける。
③ 多彩な手段を試してみる。
学後の実践のなかで、「仮説~実践~検証」のプロセスを何度も何度も繰り返して行い、勝利の方程式を探し出すことだ。
“熟練”した心は生涯において磨き続けられる必要がある。そのためには、“熟練”した心の限界(環境の進化、多様化などへの適応性)を知り、他との統合や新たな創造性を追及する心が必要だ。
(H21.8.24)