「木を見て、森(山)を見ず」という言葉があるが、その正反対の思考である“システム思考”について考えてみたい。


 “システム(system)”とは、体系、系統のこと。つまり、相互に影響を及ぼしあう要素から構成される、まとまりや仕組みの全体をいう。本来、企業などの組織はシステムの典型といえよう。人体も、まさにそうである。“システム思考”とは全体を見るための考え方であり、全体とその全体を構成する部分(要素)との相互関係性において、物事の本質を見極めようとする思考法だといえよう。


 医療の現場で見直されている根本療法は、まさに病気に対する“システム思考”の導入といえる。即効性を求めて、安易に対症療法に依存してしまうことから生じる弊害への反省からだろう。対症療法はモグラ叩きのようなもので、出てきたモグラをいくら叩いても、すぐに外の所から出てくる。疲れ果てるのみだ。


 企業が抱えている問題についても、同じである。売上の減少、経常的な欠損、資金繰りの悪化、人材の流出、クレームの増加など・・・・・。例えば、売上がダウンしたからといって、宣伝費をつかってバーゲンセールをやる。状況は一時的に好転したとしても、すぐに悪化する。


 「業績は体質の結果である」という言葉がある。体質とは、ここでいう“システム”の状態をいう。経営の諸問題は、“システム”のレベルダウンによって引き起こされているのである。つまり、全体と部分の良好な関係性が崩れてしまっていることによって生じている問題なのだ。だから、部分的な対応をしても何ら根本解決にはならない。新たなモグラが、すぐに出てくるのである。


 いま、企業において抜本革新が叫ばれているが、抜本革新とは“システム”をつくり変えるという意味である(経営人間学講座)。すなわち、全体と部分との関係性を抜本的に再構築しようというチャレンジである。


 外部環境から支持されない体質になってしまったのに、過去の成功体験に執着し、自らをだれも変えようとせず、問題の原因をすべて他人のせいにして責任のなすり合いをしてしまう、関係性の悪い“システム”そのものに問題があるのである。


 あるべき姿(理念・目的)の再構築から始まり、お互いの貢献意欲の確認、良好なコミュニケーションの仕組みなどを“システム思考”に基づいて再考してみよう。


 「仮説~実践~検証」の循環システムを経営のサイクルとしてしっかりと根付かせることだ。さらに、“システム思考”による抜本革新において大切なことは、『亀の歩みはのろい、しかし競争に勝つ』(P・センゲ)という教訓を忘れないことだ。

(H22.8.23)