“ソリッド”(solid、堅固な)という言葉がある。


 中西輝政氏(京大教授)が、氏の著書『日本の実力』の中で、国力について次のように述べている。


 『パワーで押しまくるような強大な、「ストロング」な力ではなく、もっと堅実でしぶとい強さを持つ「ソリッド」な力が、日本の目指す「国力」だと考えます』。


 氏の国力論の前提には、「心・技・体」のバランスがある。そして、従来、「体」(軍事力や経済力など物理的な力)や「技」(知力や情報力などの生き抜く力)という「ストロング」な力を重視してきたが、これからは「心」(精神的な要素)を中心とした「ソリッド」な力を養うべきだというのだ。


 これは、企業力にも当てはまる。特に、物量的なパワーで劣る中小企業にとって「心」を中心にした“ソリッド”な経営とは、目指すべき方向性ではないだろうか。そのために熟慮すべきポイントは、3つあると考える。


(1)独自の経営観や仕事観をしっかりと持つこと。


 「何のために」という目的思考を習慣化し、誰もが共感・共鳴するような独自な経営観や仕事観を持つこと。これは、組織としてのアイデンティティーを確立する基本的な考え方である。


(2)付加価値の高い成長領域をつねに追及し続けること。


 つねに顧客の視点で商品やサービスの開発をするという、徹底した顧客満足度の追及こそが付加価値の高い成長領域を約束してくれる。ロイヤリティーの高い顧客と生涯価値を高め合えるような関係性をつくっていこうという考え方である。


(3)人材育成に熱心であること。


 人の成長には、能力と価値観の二つの側面がある。21世紀世界は、価値観が重視される時代だといわれている。お互いの個性を尊重しつつ、つねに全体にいい影響を及ぼすことができるような人材、相手の立場に立って物事を考え、人との関係性を高めていけるような主体性のある人材をいかに育成していくか。


 今や、ほんとうに何が起こっても不思議ではない、不測の時代である。そのような環境で生き抜いていくのは容易ではない。どんな奇襲戦法にあっても、ちゃんと土俵際で踏ん張り、自分の体勢を整えて決して負けない横綱のように真の実力が問われるのである。


 経営でいう真の実力とは、思考の深さだと思う。「リスクをチャンスだ!」と捉え得るような逆転の発想ができる高い価値観が必要とされる。“ソリッド”とは、経営人間学で学ぶところの「統合の思考」に支えられた精神性の強さではないだろうか。

(H21.7.20)