一般に経営資源といえば、「人・物・金」の3要素。そして、情報化社会の広がりと共に第4の要素として、「情報」が挙げられる。さらに、これも世相の反映だと思うが「スピード」を重視している経営者が意外と多いと聞くが、これは納得できる話だ。
少し意味合いが違うのかも知れないが、実は前回に取上げた『孫子』、約2500年前に“拙速”という言葉で「スピード」の重要性を、次のように語っている。
「兵は拙速なりとは聞くも、未だ巧久なるは賭(み)ざるなり」(作戦篇第二)。
戦争には莫大な金がかかるので、少々つたなくても迅速に勝利を収めるなら成功するが、たとえすぐれた策でも長時間かかったものに良い結果を得たためしがない。つまり、長期戦は良くない(「孫子の経営学」武岡淳彦著)。
孫子のいう「兵は“拙速”なり」とは、現代風にいうと、資本効率の追求という経営のテーマではなかろうか。
売上の拡大ばかりに気を取られ(売上至上主義)、過剰設備投資や固定費の増大などに対する配慮が不足していたばかりに、急激に資金が逼迫し、苦しい状況に追い込まれ、倒産していく企業が後を絶たない。
そんな経営者の疑念と嘆きの声が聞こえてくる・・・・・・・「売上はこんなに増えたのに、なぜ経営がラクにならないのだろうか?」 その原因の一つに「“拙速”の欠如」があるといえよう。
売上至上主義の経営者(中小企業の多くがそうであるが・・・)の特徴は、儲けに関するデータには関心を示すが、バランスシートを見ようとしないところにある。売上至上主義のツケ、「“拙速”の欠如」が招いた経営の異常値はすべてバランスシートに現れているのであるから、それを見ないことには疑問は解けない。
財務分析でいうと、「収益性」ばかりではなく、「活動性の要素」(総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率、受取勘定回転率、支払勘定回転率など)について、定期的にチェックを行う必要があると考える。
例えば、資本効率の指標としてよく使用される「ROA(総資本営業利益率)=営業利益÷総資本」は、「総資本回転率」と「営業利益率」を掛け合わせたものである。だから、利益率を高めたとしても、「総資本回転率」すなわち“資本の循環スピード”が悪化すれば、良くならないのである。売上をどんどん伸ばしているにも関わらず、経営がラクにならない企業をみると必ず、その辺に事情が潜んでいる。
“拙速”経営は時代の流れであり、必至。そのためには、バランスシート分析それに加えてキャッシュフロー分析を一度試みてもらいたい。
(H21.5.11)