再び、一般閉鎖病棟に戻った。
そこにいる人達は、俺の理解を超えていた。
1日中、泣き喚く人……。
わけもなく殴り合い、看護師に制止される人……。
意味もなく笑ったかと思えば、突然、怒りだす人…………。
いつか見たような光景……。昔読んだ、ダンテ・アリギエーリ作の《神曲 地獄編》の内容のような光景だった。当然、俺にもちょっかいを出してくる。
俺は、病室のベッドで布団を頭から被り、ずっと震えていた。あまりにも《強烈な光景》に、押し潰されそうだった。
しかし、俺の心の片隅では、あの【保護室】で書いた2曲の詞のメロディが、ずっと流れていた。
曲を創りたい………。この2曲を完成させなきゃ、死んでも死にきれない。ここで、終わるわけにはいかない。
看護師に《ギターを持ち込みたい》と、申し出た。困惑する看護師は《主治医に相談する》と言った。
翌日。1日が、やけに長く感じた。やがて、主治医との面談があり、ギターに関しては勿論、《ダメ》だった。
音楽と、人間関係で病気になったんだ。当たり前の答えだろう。
でも、諦めきれない俺は、気持ちのすべてを訴えた。
どれぐらい話したろう………。主治医は《ギターが、他の患者に壊されても、責任は負わない》との条件で、持ち込みを許可してくれた。
翌日、知人に頼んで、ギターを持ち込んでもらった。ところが、ギターの弾き方が、よく判らなくなっていた。安定剤のせいで、思考がうまく働かないのか、それとも、弾き方を忘れてしまったのか………?
いずれにしても、ギターがひけない。知人に頼んで、ギターの《コードブック》を買ってきてもらい、1から《弾き方》を勉強した。
その日以来、俺は誰とも話すことなく、ギターに没頭した。安定剤のせいで、思考回路はほぼ《停止》に近い。それでも、浮かんでくるメロディ……。
頭の働きなんて、もう、どうでもよかった。《深い悲しみ・挫折感・恐怖心・不安感》などの、様々な《心の作用》が、曲を生むんだろう。下手なギターは、安定剤による《脱力感》で、指の動きが一層、鈍い。でも、そんなことは問題じゃない。
《どうせ死ぬなら、完成させて死んでやる!》
この、少し歪んだ《決心》が、唯一の《生きる糧》だった。
【立場は退いても、心は退くな!】
新聞に踊った【師匠の言葉】が、この頃の俺に、更なる力をくれた。