《家族》と言うもの……。
美雪がいて、中也がいて………。
自慢するわけではないが、俺は、美雪と《喧嘩》というものを、したことがない。かと言って、お互いに《無関心》だったわけでもない。寧ろ、何でも話し合った。それが、気持ちの《すれ違い》を生まない、大切なことだと思っていたし、彼女はどこか、すべてを《見透してる》ように感じることが、時折あった。
中也は、すくすくと育った。
不思議なんだが、中也は、普通の子供が喜ぶようなオモチャには、あまり興味を示さなかった。遊び方を教えても、すぐに飽きて《打楽器》にしてしまった。
STONESのCDなんかをかけると、踊り出す………。困ったもんだ。胎教のせいだろう。
俺が、赤いTシャツを着てると、俺のタンスから、同じ赤いTシャツを引っ張り出して着る。長いワンピースみたいだ(笑)
ツアーには、家族も同行した。
中也は、人見知りもせず、誰のところにもニコニコと近寄っていく。
本当に、誰に似たんだろう………? 不思議な子だ。
ある日、昔から行きつけだった、居酒屋のマスターから電話があった。
マスターとは、個人的にも付き合いがあり、よく一緒に遊んだりもした。そのマスターが、店を閉めると言う。
聞けば、俺と美雪が、2人で通ってた頃から比べると、売り上げが《半分以下》になってしまい、このままでは、借金ばかりが増えるから、と。
店を閉めるにあたって、内装工事をやらなければならないらしく、俺に頼んできた。
俺は、その仕事を請けた、格安で。
ずいぶんと、お世話になったと感じたから。
ところが………。
仕事は、どんどんと進んでいくのに、1ヶ月過ぎても、2ヶ月近くになっても、お金を払ってくれない。
毎日毎日、15時間ぐらい働いた。業者も数人、俺の知人に頼んだが、お金を払ってくれないから、俺が立て替えて、業者に払うしかなかった。
ある日の真夜中。
へとへとになって帰宅したんだが、風呂に入る気力もなく、ご飯を食べる気にもなれず、美雪と中也が寝てる部屋の、隣の部屋で1人、横になった。
ん?どうした? 眠れない。
今まで、どうやって眠ってたんだ? 眠れない。
まるで《眠り方を忘れた》と言う言葉が、ピッタリくるような感覚だ。
あ!おかしい!
呼吸ができない! 意識が飛んでしまいそうだ!声も出ない! 助けてくれ!…………
意識を失ってしまったようだった。
翌日、病院に行くと《精神科》に行くように勧められた。
精神科に行き、診察してもらった結果、《パニック障害》と、わりと強めの《不安神経症》の合併症だと告げられた。
極度のストレスと、睡眠不足、それらが原因らしい。
しかし《過去の薬物の後遺症の可能性》も、指摘された。
気持ちばかりが焦って、何も手につかなかった。
《安定剤》を飲んで、フラフラになりながら、仕事をこなすしかなかった。