ツアーから戻り、普段通りの生活をしていた。
玄関の表札には《法太・美雪・マメ》と、書いてある。こういうのも、なんとなく嬉しくて、ニヤけてしまう。

《マメ》と言うのは、俺が仕事中に見つけた、生まれて間もなかった子猫の名前だ。
今は、少し大きくなって、イタズラばかりする。何度、爪でギターを引っ掻かれたか……。でも、可愛い。

俺達は、近隣の街でもLIVEをするようになった。そんなに《有名》と言うわけでもないし、有名になろうとなるまいと、どっちでもいいことだった。夢は《音楽で食っていくこと》だから。
【じゃあ、有名にならないと】
と思う人が、大半だろうと思う。もちろん、無名よりも有名になるほうが、なにかと有利だとは思う。
でも《食っていくこと》と言う次元には、あまり結びつけたくなかった。
以前の、新聞の取材やラジオ出演で、あんなふうになった。だから、いつか必ず《その時》が訪れると、信じていた。

月に、3~4本のLIVEをしていた頃、あるイベントに出演した。順番待ちをしていた時、司会者の女性と話してて、仲良くなった。

俺達のLIVEが終わり、楽屋へ帰ろうとした時、司会者が声をかけてきた。

『お疲れ様!あの曲は、オリジナル曲?』

『ええ、そうですよ。CD、よかったらどうぞ』

俺は、お世話になったお礼に、CDをプレゼントした。その後、司会者と美雪が、何か話していた。


数日後、家に電話がかかってきて、美雪が出た。

『もしもし。私、KBS京都TVの者ですが……』

『え?  え?』

美雪が、俺に電話を代わった。
内容は、近々、深夜番組だが新番組を放送するらしく、その番組に、俺達のCDを採用させてほしいと………。慌てて美雪に、電話を代わった。美雪は、契約やその他の話を済ませて、電話を切った。

『法太君!やったね!』

『うん!ありがとう!』

2人で喜んだものの、すぐに冷静になった。
《TV局からのオファー》ではあるものの、実感が湧かない。

でも、俺の曲たちが、TVで流れるのは確か………。
少し泣けてきた。頑張って、ただただ、がむしゃらにやってきて………。
気がつくと、こんな話になって………。

ただ、嬉しかったのと同時に、少し、不安を感じ始めた俺だった。

例の、新聞社の取材や、ラジオ出演をした頃、勘違いをした連中が出た、と言う《体験》からだった。

この曲も、番組の《挿入歌》になってたな。