レコーディングもほぼ、終盤に差しかかった。あとは、ミックスダウンや、所々に、ちょっとしたギターやコーラスを重ねたり、様々なアレンジと、なにより俺のヴォーカル。
様々なアクシデントや選曲、途中で出来た曲を急遽、レコーディングしたりと、何だかんだあって、1年以上かかった。
事故を起こしたメンバーのパートは、早めにレコーディングしてたから、支障はなく、不思議なことに、すべて録り終えた頃、メンバーは交通刑務所に入った。
完成した音源を、プレス工場に出して交渉したり、ジャケットやポスター、CD盤のデザインは、すべて美雪がしてくれた。彼女は《絵描き》だから、その辺のアイデアは、斬新だった。
数ヶ月後には、俺達の《CD》が出来る………。
正直言って、ここまで辿り着けるなんて、夢にも思っていなかった。ただただ、がむしゃらにやってきただけで………。
CDの発売間近、待ちに待ったメンバーが、出所してきた。禁固7ヶ月なんて、あっという間に過ぎてた。俺達は、メンバーの【放免祝い】をした。
出所したからと言って、メンバーの罪がすべて《消えた》わけじゃない。寧ろ大切なのは、再スタートする《これから》だろう。
席上、俺はメンバーに
『なぁ。お前が出てくるのをみんな、ずっと待ってたんやから、何か話せよ。』
と言った。するとヤツは、笑いながら話し始めた。
『やぁやぁ。これで俺も、晴れて《自由の身》になったし、縛られるものは無くなったわけで。まぁ、1人は死にましたけどね(笑)』
俺は、耳を疑った。ヤツがいない間も、何人もの仲間が、御遺族と会ったり、色々と気遣ってくれた。それを知っているくせに、《感謝》のカケラも無い発言……。言うに事欠いて、《1人は死んだ》とまで……。コイツの事故が、原因なのに……。
みんな、不愉快そうな表情を浮かべた。俺は、激怒した。
『そんなこと、言うもんちゃうやろ!!』
ヤツは、真っ青になった。しかし、その後も
『でも、刑務所に入って、償ったで。』
と………。
ヤツの為に、どれだけの人々が嘆願書を募ってくれたか………。
御遺族に会い、《和解》できるように、動いてくれたか………。
なのに『償いは終わった』と………。
俺は、これ以上この場にいると、確実に暴れてしまう。何も言わず、皆を残したまま、美雪とその場を去った。
帰り道。
『なぁ……。俺、間違ってたかなぁ………?』
『ううん。第三者的な立場から聞いても、あんな言い方は良くないよね。寂しい人やね………。』
『………。』
月が綺麗だったのを、今でも憶えてる。でも、満月でも、三日月でもなかった。中途半端な形で、とても綺麗な月だった。
テレビドラマなら、満月か三日月なんだろうけどな。
《償い》………。
理想論かもしれないが、本当の《償い》は、こうあるべきだと思うし、刑務所に入ったからって、それだけが《償い》なわけがない……。