中村梅雀という人は2時間ドラマでは若手の俳優とコンビを組むことの多い人で、演技派の渡辺大や新たに浅見光彦を演じている平岡祐太との共演作はおじさん主人公好きな私には見応えのある作品だった。この「ガンリキ」では珍しく女優の黒川芽以とバディを組んでいる。
 
先に挙げた作品では、真面目な中に毒があったり、冴えないロートルと見せかけて凄みのある役柄で若い相棒に「侮れないオヤジ」と中年の底力を見せつけていたが、今作は亡くなった奥さんを今も大切に思っている愛妻家。信濃コロンボで原日出子といつもイチャイチャしていた梅雀さんを知っているのでその姿に少し淋しさも感じさせる。
 
この人の得意とする飄々とした役柄も健在で、階級は上の黒川芽以演じる女性刑事のお弁当をつまみ食いしたり、ヒントのお礼とか言って抱きついたり…するのはちょっとセクハラに見えるが、それでも最後には名推理で犯人をつきとめてしまう。彼女もその実力は認めており、マイペースぶりに呆れつつもその実は独り身で寂しい?おじさんの話し相手になってあげたりと徐々にこの暴れ馬(牛?)の操縦方法を覚えて息が合ってくる。
 
ラストはいつも梅雀おじさんの自宅で中年のオヤジと若い独身女性が向かい合ってお弁当を食べるというちょっとありえないシチュエーションだが、赤の他人同士でもここまで信頼関係が築けるという事の表れなのだろうか。作中で実の家族に手をかけてしまった犯人との対比にも見えてくる。脚本はベテランの石原武龍氏。変則的でいて最後は手堅くまとめる作品作りに納得した次第でした。