遠きよりいで来給へば 一日は語りつ茶くむ母のかたわら

 

干しし衣を取り込む肩に 流れくる甘き匂いは 沈丁げにて

 

目を病むと知りつつ裁ちもの差し出しつ またしまいつゝ 老母(はは)におもねる

 

ペダル踏み 職場へ急ぐ路の上 老母(はは)にあいにる人と逢いにき

 

遠き日に 母恋泣きしと云うわれに 老いたる母は涙をふきぬ(母と思い出話をして)

 

この母を 誰にもやらず帰すまじ 心に叫びつ ほゝえみ送る(故郷に帰る母)

 

芝の色いまだ白きに 沈丁げ 匂いの束を投げかけて来ぬ