手術は11月でした。 
 入院期間中はお姑さんが東京から来てくれて、夫と息子の世話を、友人が息子の習い事の送り迎えをしてくれました。

 乳がんの手術は5時間程で終わり、直径6ミリの癌細胞を切り取り、リンパにも転移はなかったそうです。 入院中は、東京の友人が繰り返し言ってくれた言葉
 「ステージ1ならインフルエンザと一緒だよ」
に縋りながらも、癌🟰死と結びつけて、恐怖で眠れない夜を何晩も過ごしました。

 手術の2日後、息子は夫とお姑さんと面会に来ました。 私は手術後の痛みと疲れで消耗し、息子からも弱々しく見えていたでしょう。
 私「ちゃんとおばあちゃんの言う事を聞いていい子にしてる?」
息子は私の問いかけに気もそぞろに、うん、と言いながら私のドレーンを凝視していました。
手術後に、余分な体液を出すために私の脇からドレーンという管が出ていて、その先には点滴袋に似た袋があり、そこに沢山の血液が溜まっていました。
 ーママからこんなに血が出てて不思議だね

私の弱った体とこの血をちゃんと見ておいてほしい

昔、母が亡くなった時、15歳から難病を抱えて生きてきた従姉妹が、柩の中の母の頬を私に触らせてこう言いました。
「おばちゃんはこんなに冷たくなったんよ。」

母の頬は、本当に冷たくて、ゴムのようでした。


 私の入院はドレーンの詰まりからくる発熱で長引いてしまい、退院出来たのは手術から16日後でした。