前回の記事はこちら → 愉快な社長<13> ~話が違う~
シリーズ一覧はこちら → 愉快な社長
【登場人物】
土井さん 社長
三島さん 専務
内海君 僕と同期の中途採用組。僕より若い男性。
広田君 元々会社に居た人。僕より若い男性。
中山さん 元々会社に居た人。僕と同世代女性。
小田さん N社で一緒に仕事。
柳谷君 N社で一緒に仕事。
※2006年~2009年の出来事です。
※登場人物の名前、会社名などは全て仮名です。実際の名前とは異なります。
する事が無いまま、ただダラダラと時間だけが流れる..
ふと気が付けば、中山さんが来なくなっていました。
僕:
中山さん、最近どこかに行ったんですか?
誰に聞くともなく聞いてみると
三島:
ああ、中山さんは辞めましたよ。
社長と揉めて、方針について行けないとの事で辞めたらしい。
うん。それが賢明かもね。
このままする事無かったら、時間の無駄だもんね。
時々、社長と三島さんの出入りはあるものの、仕事に動きが無い。
このままだと、会社が危ないのでは?
社長に話を聞こうとしても、はぐらかされて話にならない。
三島さんに話を聞いても
決まりかけの案件が幾つかある。
社長が何かを考えていて、近く話がある
で、具体的な事は何ひとつ分からない。
この会社、どうなってるの?大丈夫??
と言うか、社長と三島さん..
出勤時は微妙にタイミングずらすけど、大体一緒に出勤してくるし、
帰る時は二人一緒に帰る。
客先に出向く時も一緒に行って、二人一緒に帰ってきたり、
三島さんだけが帰ってきたり..
社長不在の時でも、三島さんは時々電話で呼び出されている様だし。
なに?三島さんは社長秘書も兼ねてるの?
それにしては....
いや、でも、社長は既婚で高校生の娘さんがいると言ってるし、
朝礼でよく娘さんの話をしてるし..
まさか..ね。
そんな日がしばらく続いたある日、社長が突然立ち上がり、
皆に向かって話始めた。
社長:
みんな、ちょっと手を止めて聞いてくれ。
社長に注目する、従業員一同。
社長:
仕事を待たせて申し訳ない。
もうちょっとしたら、大きな案件が決まるけん、それまで待っていて欲しい。
今のメンバーだと人手が足りないから、いま、求人を出していて、
何人か採用する予定です。
広田:
案件決まって無いのに、ひと入れて大丈夫なんですか?
至極もっともな質問だと思う。
社長:
もう9割決まって、契約書も交わしてある。
あとは人数が揃い次第GOが出る事になっとるけん、心配せんでええ。
大きな案件じゃけん、期待してもらって構いません。
どこか得意げな社長。
僕:
どんな案件ですか?
社長:
今は言えん。
広田:
ジャンルだけでも..
社長:
それは言えんのじゃがや。
今社外に居る人間も、全員呼び戻す事になっとるけんの。
三島さん。机とパソコンが足らんけん、手配しとってや。
三島:
分かりました。
社長:
それと、広田君と うずら君、新人の教育を頼む。
あー、はいはい。
社長:
さて三島さん、お客さんの所に打合せに行こう。
さっさと事務所を出る社長とは対照的に、大慌てで準備して、
ドタバタと事務所を出て行く三島さん。
何か怪しい..
本当に打合せなんだろうか..
それに、契約書まで交わしていて、なぜ案件の概要も、
お客さん先がどこなのか、言えないのだろう。
果てしなく胡散臭い。
その後も、相変わらず暇な日が続き、どうせ暇だからと、
自分の興味のあるジャンルの勉強をしていると、
中途採用になった人が、ポツリ、ポツリと、入ってきました。
宮川君 元営業マン。IT業界に興味があり、開発の仕事をやってみたかった。
畑野君 元弱電屋さん。父親に「こんな会社があるぞ?」と紹介された。
小林君 自宅の商店を手伝っていた。IT業界に興味があった。
朝日さん 同業種からの転職。以前の会社の方針について行けなくなった。
金田君 奥さんの実家の家業を手伝っていた。IT業界に興味があった。
村松君 元フリーター。バイトを転々として、そろそろ定職に着こうと思った。
野田君 元トラック運転手。IT業界に憧れがあった。
藤原君 長年引きこもっていたら、親に「ここに行け」と言われた。
以上、個性豊かな8人が、新たに加わりました。
えーと..
採用基準が全く分からない。
どうするの?これ。
面接で「頑張ります!」と言った人を採った感じ?
それとも、応募してきた人を、片っ端から採用したの?
三島さんに採用基準を聞くと、
三島:
私も分からないんです。
やる気を感じた人たちを採ったんじゃないですかね?
ふざけてます?
僕:
一次面接は、三島さんではないんですか?
三島:
いえ。今回は社長が面接して、二次面接はありません。
なんで??
社長の胸先三寸の採用基準で集まってきたメンバー。
その中で、藤原君だけは事情が違うようで、父親同伴で面接に来て、
お父様が社長に頭を下げて、頼み込んだらしい。
藤原君のお父様としては、息子の社会復帰が掛かっていて、
必死だったんだろうけど..
そもそも、大きな案件の人員確保のための採用のはずなのに、
こんな採用基準で採っちゃって、大丈夫なの?
即戦力か、それに近い人じゃなくても大丈夫な仕事なの?
未経験可なんですか??
ひとまず、新人?教育をせねば..
そもそも
コンピュータはどうやって動いているか..
と言った所から始めなければ..
初心者向けパソコン教室状態から始め、すこしずつ教える日々。
そんな日々を過ごしていると、小田さんもN社から帰ってきました。
柳谷君は、N社での業務が終了した時点で、会社を辞めたとの事。
まぁ、それが彼のためではあったと思う。
僕が会社に戻ってから2か月程度経つけど、
相変わらず、お金になる仕事をしているのは、内海君だけ。
他の人達は何もしていない状態。
それなのに、人をこんなに入れちゃって..
どうするの?これ。
と言うか..
朝日さん以外のメンバーが、仕事できるようになるまで、かなりかかるよ?
まさか、幾らなんでも、そこまで無計画じゃないよね?
続きはこちら → 愉快な社長<15> ~始まらない仕事~
アメブロおまかせ広告