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【登場人物】
自社
 土井さん  社長
 三島さん  専務
 小田さん  中途採用の僕より年上男性。
 
N社
 重信さん  グループマネージャー
 川内さん  マネージャー
 松前さん  主任
 小松さん  メンバー
 北条さん  別社からの派遣社員
 
 
※2006年~2009年の出来事です。
※登場人物の名前、会社名などは全て仮名です。実際の名前とは異なります。
 
 
小田さんに、車椅子を押す心得や動かし方、上り坂、下り坂、
段差の対処など、実地で色々教わり、車椅子を押す事に慣れてきました。
 
小田さんも、環境に慣れてきたであろう、ある日..
お昼過ぎまで普通に仕事をしていた小田さんが、突然いなくなりました。
 
トイレかな?と思っていたのですが、30分経っても1時間経っても戻らない。
構内PHSも個人携帯も出ない..
 
トイレ、1階のコンビニ、ATM、実験室、各フロアの会議室..
 
どこを探しても居ない。
 
まさか..
 
念の為に駐車場を見に行くと、車が無い。
 
え?あれ?どういう事??
 
もう1度、小田さんの個人携帯を鳴らすけど、全く出ない。
社長に報告すると
 
 「小田君は帰ったけん、重信さん達に上手い事言うといてくれ」
 
の1言で、電話が切られました。
この人はいつもこんな感じなので、よく分からない。
でも、帰ったって事を知ってるって事は、何か知ってるよね..
 
職場の皆には、急な体調不良で帰ったと伝える。
 
 
翌日..
 
 
いつも通りに、小田さんが出勤してきました。
車を移動させ、事情を聴く。
 
僕:
 昨日はどうされたんですか?
 
小田:
 お腹痛くなったので帰りました。
 
え?そんなに激しい腹痛だったの?車の運転は大丈夫だったの??
帰る前とか、帰ってからでも、連絡できなかったの??
 
色々聞くけど「大丈夫です」との事。
 
僕:
 あー、そうなんですね?
 でも、みんな心配してたので、ひと言「帰ります」くらい言ってから
 帰りましょうや。
 
小田:
 はい。そうします。
 
 
プロジェクトも随分落ち着いてきて、仕事の主体は、
時々報告される障害の解析や、翻訳チームから上がってくる、
各国語版のドキュメントの査閲、資料類の整備になっていました。
 
残業時間も随分減り、明るいうちに帰れるし、休日は普通に休める。
なんか少し気が抜けた頃..
 
 
そんなある日..
 
またしても、小田さんが行方不明になりました。
その日だけでなく、その後も行方不明になる事があり、

 

 あ、いつもの事ですね?

 

と職場内でも笑いに変わっていた頃、行方不明の原因が分かりました。

 
 
ある日の行方不明になった、翌日の朝..
 
いつものように車を移動させようと、小田さんの車に乗ると、
 
 臭う..
 明らかに、あの臭い..
 
よくよく思い返せば、行方不明になった翌日、車椅子が変わっていたり、
車椅子や、車のシートのカバーや座布団が、変わっていた事がありました。
 
これまでも何度か、ほんのり臭った事もありましたが、
 
 オナラの残り香?
 
程度で、それほど気にも留めませんでした。
 
多分..
お腹を壊した時に、トイレが間に合わなかったんだと思います。
オムツしている事は知っていましたが、大参事になってしまった時に、
こっそり建物を抜けて、お母様に来てもらって、こっそり帰ってたのでしょう。
 
ああ..そういう問題もあるのか。
 
改めて考えて見ると、かなりの巨漢ですし、足は全く動かないので、
トイレへの移乗も一人だと大変なはず..
 
もし、想像通りの原因で帰っていたとしたら、なかなか言い出し難いな。
 
僕:
 僕もお客さんも皆心配するので、途中で帰る時は、
 できれば車に乗った時とか、帰る前だと有り難いのですが、
 難しければ、家に着いて、いろいろ落ち着いてからでも良いので、
 電話1本貰えませんか?
 「調子悪いので帰りました」
 のひと言で良ので..
 
小田:
 はい。無断で帰ってすみませんでした。
 次からは連絡するようにします。
 
 
この日以降、帰る時には、必ず電話をくれるようになり、
なんとなく、小田さんも少し打ち解けて、色々話してくれるようになった..
ような気がします。
 
 
小田さん行方不明事件..
僕も色々と考えさせられた事件でした。
 
ちなみに社長は知っていたようですが、現場の事は意に介さずで、
障害者雇用助成金さえもらえれば、大満足な感じでした。
それ目当てで雇ったと断言してたし..
 
 
 
 
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