『それから義経達は次々と勝利をおさめていった』
5人が横一列に並んでいる(左から弁慶・千葉・佐々木・宮本・海尊)
両端から2人ずつの剣さばきにライトが当たっていく。
『意表をつく剣さばきでどんどん勝ち進んでいった。彼らが義経四天王だった』
幕前。
若手3人の殺陣。
幕が開くと左から『千本桜の戦い』『溝ヶ原の戦い,』『岡之島の戦い』,と書かれた屏風が立っている。
『溝ヶ原の戦い』の屏風が倒れると中から弁慶が、
『岡之島の戦い』,の屏風が倒れると衣装チェンジした宮本が。
『千本桜の戦い』の屏風が倒れると中から、海尊とゴテゴテすぎる格好に大きく衣装チェンジした千葉が(笑)
そして海外VIPゲストのごとく下手から堂々と登場する佐々木(笑)
(恰好は白い特攻服に赤いファーをつけてたんで、少し前の東京ダイナマイトのハチミツ二郎さんw)
そして、佐々木が真ん中に来て5人そろってキメポーズ(千秋楽はコギャルのプリクラ風)
暗転
千葉と宮本と佐々木。
「様になってきたな(笑)」と佐々木に言う千葉。
千葉「お前(宮本)はいいよ、シックで。俺もう、鳥だよ!?」(笑)
千葉「俺ら、こっちの時代の方がいいのかもなー。あっちじゃ剣道部も引退して厄介者扱いだし。こっちの世界ならちょっとしたスターだしな。」
佐々木「なんでこの時代にとばされたんだろうなぁ」
深刻そうな弁慶が出てくる。
弁慶「殿、ちょっと話が…」
その言葉に席を空ける宮本と千葉。
弁慶が佐々木の後ろに立つ。
弁慶「殿。そのままで聞いてください」
佐々木「うん。あ!見て!きれいな夕日!」
夕日にみとれている佐々木めがけて長刀を振りおろそうとするが、思いとどまる弁慶。
そんなことも知らず、まだ前を見たまま話し続ける佐々木。
佐々木「話って?」
弁慶「あ…あぁ…、殿は…おでんの具は何が一番好きですか?」
佐々木「え…?…がんもどき。…弁慶は?」
弁慶「…すじ」
(2回目の公演、佐々木「つみれ」弁慶「こんにゃく」)
佐々木「!危ない」
台の上の弁太郎を抱きかかえる。
佐々木「危なかったぁ…」
弁慶「何故助けた?」
佐々木「え?だって…。そういえば弁太郎ってさ、親子なのにあんまし弁慶に似てないよね」
弁慶「わしの子ではない。知らない女の子どもだ」
弁太郎は弁慶の子どもではなく、戦で死んだ見ず知らずの女の子どもだった。
それを弁慶は拾って育てていることを明かす。
弁慶「殿は確かに死んだ…おぬしは一体どこから来たんだ」
佐々木「…弁慶、信じるかなぁ」
弁慶「言ってみんとわからん」
佐々木「未来!」
弁慶「わしは何故戦っておるのか自分でもわからん。おぬしは何故戦う」
佐々木「仲間がやられたから」
弁慶「っおぬしらが言う仲間というんがわしにはわからん!なんなんだ!?仲間とは何をするもんなんだ!?」
必死に問いかける弁慶。
佐々木「んー、一緒に飯食いにいったり」
弁慶「飯?」
佐々木「焼き肉とか!肉焼いてるとテンションあがるし!」
弁慶「焼き肉?テンションとはなんだ?」
佐々木「質問ばっかりだなぁ~…。仲良くなるっていうか、これ!」
ポケットに入れてた焼き肉屋『成吉思汗』のチラシを取り出す。
弁慶「成吉の…思う汗?」
佐々木「やっぱりそう思うよね。僕らも最初そう思ったんだ。これ、ジンギスカンって読むんだよ」
佐々木が抱きかかえていた弁太郎が泣きだす。
佐々木「焼き肉の話したから弁太郎もお腹すいちゃったのかな?(笑)ご飯にしよう?」
そのまま焼き肉のチラシを弁慶に渡す。
弁太郎を抱きかかえたまま歩きだす佐々木。
佐々木「弁慶も弁太郎と焼き肉しようね。あ、でも店がないから…バーベキューにしよう!」
弁慶「バーベキュー?」
佐々木「外でする焼き肉のことだよ」
また、歩き出すが動こうとしない弁慶。
佐々木「どうしたの、行こうよ弁慶。」
弁慶「あ、あぁ…」
再び朝廷に呼ばれる。
今度は弁慶と佐々木のみ。
千葉「暗くならない内に早く帰ってくるんだよーん」
朝廷につく2人。
後白河「どうじゃ、酒でも」
佐々木「お酒は要りません」
弁慶「早く用件を申せ!」
後白河が提案してきた。
後白河「どうじゃ、わしと手を組まんか?わしも頼朝が嫌いでな。頼朝は奇襲をしかけてくるつもりじゃ。だから、その日をおぬしに知らせて、頼朝を返り討ちにしてほしい。」
「ただでとは言わんぞ。勝った暁には褒美をやろう」
弁慶「褒美?」
後白河「義経を将軍にしよう」
顔を見合わせる弁慶と佐々木。
頼朝「今頃、義経に手を組もうと話している頃だな。あのおっさん、俺と義経を戦わせて潰す気だ。一緒についているのは誰だ」
影助「弁慶です」
頼朝「ほぉ、弁慶か」
朝廷を出て、帰る弁慶と佐々木。
佐々木「どうしたの?深刻な顔して」
弁慶「あ…いや…わしは朝廷に戻らんといかん」
佐々木「どうして?」
弁慶「あ…あの、おっさんの匂いがかぎたくなって!」
佐々木「じゃあ、僕も行くよ」
弁慶「いや、先に帰っててくれ」
佐々木を残して朝廷へ戻る弁慶。
しばらくその場に座って弁慶を待つ佐々木。
その頃、朝廷では頼朝と後白河が手を組んでいた。
頼朝には義経に嘘の奇襲の日を告げ、その前に義経をやっつけてほしいと話す後白河。
頼朝「やらせていただきましょう」
後白河「それでは酒じゃな」
弁慶が朝廷に入ってくる。
頼朝「義経はもう殺ったのか?」
弁慶「いや…まだ…」
後白河「いいではないか!義経1人を殺すのも義経軍を倒すのも一緒であろう!」
弁慶が背中におぶっていた弁太郎が泣きだす。
背負ったままあやす弁慶。
影助「騒がしいな」
頼朝「弁慶。早くそいつを処分しろと言ったはずだ」
弁慶「しかし…」
ちょうどその頃、座って待っていた佐々木が立ち上がり、帰っていく。
暗転。
5人が集まっている。
とうとう3日後だという話に。
千葉「決まったの?」
佐々木「あぁ、朝、後白河から連絡があった」
宮本「じゃあ、伊勢のおっさんの墓に伝えに行ってくるわ」と去っていく。
千葉「ちょっと待って?戦うことを考えたら右手だけ武者ぶるいしてきた!」
刀を持った右手だけブルブル震えている千葉。
海尊「はい、じょうずーw」
千葉「おい!!」
海尊「最近、上下関係がわかって来たんです。…私が、上です」
千葉「うすうす気づいてたー♪」
千葉も海尊も去っていき、また2人きりになる弁慶と佐々木。
なんとなく気まずそうな2人。
弁慶「とうとうですな」
それに弾かれたように語りだす佐々木。
序盤と全く同じ流れで茶化す弁慶。
弁慶「ふざけてないですって(笑)…ついていきまっせ?」
佐々木「…なぜ語尾に『まっせ』をつけた」
弁慶「いや、気分転換に」
佐々木「やっぱふぜけてるじゃないか(笑)」
弁慶「ふざけてませんってー」
佐々木「ふざけてるって、目が泳いでたもん(笑)」
弁慶「泳いでないですってー」
佐々木「そうかぁ?(笑)」
弁慶の前を歩いていく佐々木。
その佐々木に弁慶は長刀を振りおろす。
暗転
OP全く同じ。
顔の見えなかった男の顔が見える。それは義経ではなく頼朝だった。
頼朝「お前が天涯孤独の荒くれ者か」
戦うが弁慶の喉元に頼朝の刀が置かれる。
頼朝「命だけは助けてやろう。その代わり、わしの犬になって忠誠を誓え」
それから弁慶は頼朝の下についた。
『義経のもとにつけ』
『なんで赤子など拾った』
弁慶「しかし、このままだとこの子は死んでしまいます」
『処分して来い。犬が子どもを育てられるわけがないだろう』
弁慶「しかし!頼朝様!」
暗くなり、声だけが聞こえる。
『ふざけてんだろ』
『ふざけてないですって』
『殿ーーーー!!!』
明転。
海尊「どうしたんですか弁慶殿」
その声でハッと我に返る弁慶。
弁太郎を抱っこしながらお茶を飲んでいる佐々木、佐々木のそばに立つ千葉、弁慶のそばに立つ海尊。
(佐々木(もしくは義経)に長刀を振りおろしたのも、頼朝との掛け合いも弁慶の回想)
海尊「お茶です」
弁慶「あ、あぁ…、ありがとう」
海尊「は、初めてありがとうって言ってくださいましたね」
そのやり取りを見ていた千葉。
千葉「そこ、イチャイチャすんなよ。気持ち悪い。宮本にもお茶持ってってあげないとな」
座ってお茶をすする弁慶に近づく千葉。
弁慶の湯のみを見て
千葉「全部飲んじゃったの~?」
弁慶「…あぁ」
千葉「もぉ~、半分ずっこだったのにぃ~」
弁慶「そんなん聞いとらん!」
千葉「言うとらん!!」
弁慶から湯のみを奪い去ろうとする千葉。
海尊「私も行きます」
千葉「海尊も来なくていーよー」
海尊「この間のこと、まだ怒ってるんですか?」
千葉「じゃあ、俺がココだったら海尊はどのへん?」(左手を千葉、右手を海尊とする)
海尊「私は…この辺ですかね」(右手を少し上げる)
千葉「やっぱりー?」
海尊「冗談ですよ、冗談」
そう言いあいながら去っていく。
暗転。
弁慶1人になり立ちすくむ。弁慶にライトがあたる。
チラシを取り出す。
弁慶「焼き肉…仲間とともに行くところ…か」
くしゃくしゃにしてポケットにしまう。
『頼朝軍の奇襲が来たのはこの日の夜中だった』
弁慶、佐々木、宮本、海尊が騒ぎに気が付き、集まる。
千葉「なんなの~?夜中に起こして」
宮本「おい!千葉!!お前様子見に行って来い!」
海尊「私も行きます!」
千葉「海尊が行くなら俺も行く~」
様子を見に行く2人。2人によるとすごい数の頼朝軍に囲まれているらしい。
頼朝「火を放てー!!」
影助「火を放てー!!」
宮本「なんでだよ!奇襲の日は3日後だろ?!」
佐々木「そうだよ!そう言ったよな!!?弁慶!!!」
弁慶「…バカか。裏切られたんだよ、あいつに」
頼朝に刀を向けられる後白河。逃げ出す後白河。
海尊「なんか熱くないですか?」
千葉「そういえば呼吸が苦しい…それにこの物が焼ける匂い…火だな」
海尊「火!?」
そんな話をしているときにボロボロの格好になった後白河が弁慶たちのもとに助けを乞いに走ってくる。
千葉「なんだこのおっさん…このどストライクな匂い…もしかして!」
後白河「助けてくれ!!」
宮本「助けてくれだと?」
後白河の喉元に刀をむける宮本。
千葉「裏切っといて助けてくれなんて虫が良すぎるんじゃねぇかぁ?」
また、後白河の喉元に刀を向ける千葉。
後白河「わしのことを裏切り者と言っておるが、あいつも頼朝と手を組んだ裏切り者じゃ!!」
一斉に弁慶の方を向く4人。
弁慶「…言った通りじゃよ」
冷めたように言う弁慶。
海尊「いや、弁慶殿はずっと私たちと一緒だった!」
宮本「そうだ!弁慶は仲間だ!」
それを聞いていきなり狂ったように高笑いをする弁慶。
弁慶「バカかおぬしら!!!前から頼朝様にスパイとして送り込まれてたんじゃよ!!殿の首を取ったのもわしじゃ!!!おぬしらを一度だって仲間だと思ったことはない!!!」
キレて襲いかかろうとする宮本、それを引き留める佐々木。
影助「こんなときに仲間割れですかぁ~?」
後白河を守るように後白河を中心に立つ5人。
弁慶「頼朝様は」
影助「君、用済みだから」
弁慶「頼朝様が?」
影助「私には犬はたくさんいる、だって~」
襲いかかってくる頼朝軍。
応戦していく佐々木、宮本、千葉、海尊。逃げる後白河。
「頼朝様!頼朝様ぁ!!」と叫びながら探し回る弁慶。
そのあとを走ってついて行く佐々木。
舞台では千葉と海尊が頼朝軍と戦っている。
千葉は剣の腕だけでも十分有利だったが、小手が相手に効く効く!
千葉「これ、地球最強じゃね?!」
敵と間違えて後白河の鼻に小手を押し付ける、が、千葉と同じ嗅覚なので小手を持って走っていってしまう。
それを追いかけていく千葉と海尊。
弁慶「頼朝様!頼朝様ぁ!!」
探し続ける弁慶。ようやく追いついた佐々木。
佐々木「弁慶!」
立ち止まる弁慶。
わめき散らすように言う弁慶。
弁慶「わしはそれまでもののけのようにしか扱われなかった。誰も人間として扱ってくれなかった!初めて人間として接してくれたのが、頼朝様じゃったぁ…。初めて近くにいることを許してくれた…。だからぁ!!!あの人の命(めい)であれば殿も!!!」
佐々木「もういい!もういいよ…人は誰かと繋がってなくちゃ生きていけないんだ。弁慶だってそうだ。だから頼朝と繋がろうとしたんだ。本当は優しい奴だって知ってる。」
弁慶「わしは裏切り者だぞ!」
佐々木「知ってたよ?朝廷に呼ばれた日、弁慶が気になってあのあとついて行ったんだ」
弁慶「…つけていたのか…だったら、その時殺せば良かったじゃろ!!!」
佐々木「弁慶だって、殺すチャンスはいくらでもあったじゃないか!なのに」
弁慶「お前はどれだけわしの心を乱したら気が済むんだ!!」
2人の元へ宮本、千葉、海尊が集まる。そして頼朝、影助。
頼朝「力の強いものが世を制する。過去に何度も繰り返してきたことだ」
佐々木「やってやるよ、僕らが新しい世界を作ってやるよ!」
頼朝「お前がか?(笑)」
千葉「小学校の時習わんかったか?人は一人では生きていけないって」
佐々木「歴史と勝負だ!!」
佐々木の掛け声に弾かれてお互い斬りかかる。
舞台狭しと大迫力の殺陣。
倒れて座りこむ佐々木と宮本。
影助「あらー、調子良くないね」
影助と佐々木・宮本で戦う。
その時、弁慶が応戦を始める。
弁慶「武蔵坊弁慶、お助け致す!!!」
しかし、いくら戦ってもキリがない。放たれた火が燃え広がっていった。
佐々木・宮本・千葉が固まって座りこんでいた。
千葉「やだよ…死にたくないよ」
弁慶「海尊!弁太郎を頼む」
そう言って弁太郎を海尊に託す。
弁慶「こやつらが来たときの術をもう一度使ったら、元の時代に戻るんじゃないか!?」
海尊「しかし!私がやったらライパッチ(それいけ!さいとうくん)とか出てきちゃいますよ!?」
佐々木「弁慶たちはどうするんだよ!!」
弁慶「わしらは生まれた時代に生き、生まれた時代に死ぬ」
海尊が術を唱え始める。
弁慶「過去に来て大切なことを教えてくれてありがとう。会えて良かった!!」
後白河が小手を取りに3人の近くに来る。
地響きがし始める。
海尊「破っ!!」