8月になり暑い日が続いていますね。
夏といえばプール!
今回の小説は定番のプール開きです。
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「私の自慢は、この長い髪です。小さい頃から伸ばしている髪は腰に届きそうなくらいに伸びています。ロングヘアは私のチャームポイントであり、よく友達に綺麗だねって褒められます。これからも大切に伸ばしていきたいと思います。なぜなら〜」
自慢の長い髪についての作文の発表が終わると同時に、クラス中から拍手が湧いた。授業参観で後ろに並んでいる保護者たちからも拍手をもらった。
「はい、真奈(まな)ちゃん、よく出来た作文でした。作文のテーマ通り、自慢できるものが明確でとても素敵ですね。髪は切ってもまた伸びるので、勿体ないですが…大人になったらこれからも綺麗に伸ばしてくださいね。はい、じゃあ次のタカシ君、作文の発表をお願いします」
小学5年生の真奈(まな)は担任教師の感想に違和感を感じつつも、無事に母親の前で作文を発表できたことに安堵していた。
「はい、では今日の授業参観はここまでとなります。生徒の皆さんは気をつけて帰ってください。親御さんたちはこの後に話があるのでお子様の席に座って残ってくださいね」
何やら話があるようで、親たちはそのまま残され、授業が終わった生徒たちは先に帰らされた。
季節は夏、毎日毎日、耳が痛くなるほど蝉が大きな声で鳴き続けている。
真奈は家に帰り、キンキンに冷えた麦茶を口に流し込み、喉を潤す。
冷たい麦茶で夏の暑さでかいた汗がすっーと引いていった。
ひと段落して、リビングでお菓子を食べてテレビを見ていると、母親が帰宅した。
「真奈、これからすぐ出掛けるから準備しなさい」
「え?どこに行くの?」
「いつものショッピングモールよ」
「分かった。準備する」
真奈はちょうどヘアアクセサリーを買いたいと思っていたため、急いで準備を始めた。肩にレースのついたシャツと紺の短いスカートを履き、家を出た。
母親の運転する車に乗り込み、ショッピングモールに向かう。
休日にいつも家族で行くショッピングモールは真奈にとっては馴染みの場所であった。
「真奈、先にお母さんの用事を済ますわよ。こっちよ」
母親に連れられて、エスカレーターで3階に上がった。
そして、歩いて行くと店内にある美容室で足を止めた。
「あら、今日、美容室は臨時休業なの?困ったわ〜」
母親は閉まっている美容室の中を覗きながら、残念そうにため息をついた。
「お母さん、髪切るの?この前切ったばかりじゃん」
真奈は不思議に思い、母親に尋ねたが、予想外の答えが返ってきた。
「何言ってるの?私じゃなくて真奈の髪を切るのよ」
「えっ!?何で?嫌だよ…切りたくないよ」
真奈は母親の唐突な発言に、理解できずに慌てた。
「しょうがないでしょ。今日、学校でプールの授業が始まるから髪の長い子は短くして来てくださいって言われたんだから」
「えええぇ…そんな…嫌…」
「濡れた髪で授業なんて受けたら風邪引くでしょ?どうせ髪なんてまた伸びるんだから、この機会にさっぱり短くしなさい」
自慢の髪を切らなければいけない状況に、真奈は崖から突き落とされるようなショックを受けた。
「で、でも美容室は休業だから仕方ないね。切れないから諦めようよ」
幸いにも美容室は休業のため、今日髪を切ることはないと思い、ほっと胸を撫で下ろす。
「あら、隣はやっているみたいね。行くわよ」
「お母さん…隣って床屋さんだよ?」
店内には女性用の美容室と男性用の理容室が並んでいた。
赤と青と白のサインポールが真奈を引き寄せるように回っている。
「美容室も床屋も同じようなところよ。髪を切れればいいんだから。ほら、入るわよ」
母親は嫌がる真奈の手を強引に引っ張ると、店内に入ってしまった。
「いらっしゃいませー」
4人の男性理容師が元気よく迎え入れる。美容室とは違う薬品臭い店内に真奈は顔を顰める。
店内は白を基調としたシンプルな作りであり、真奈の見たことのない大きなカット椅子が4つ並んでいた。まるで座ったら身動き取れない様に拘束され、好き放題にされてしまう拷問椅子の様に見えた。
椅子の3つは年配の男性が座り、髪を切られている。
明らかに年頃の女の子が来るところではない。
「この子のカットをお願いしたいんですが」
母親は逃げ腰の真奈の背中を勢いよく押した。
「すぐにご案内出来ますよ。どうぞ」
理容師は空いている真ん中の椅子を指差した。
しかし、真奈の足は動かない。
あのゴツイ椅子に座ったら髪を切られてしまうという恐怖から動けなかった。
何とかして逃げたい、座ったら終わりだと考えていると母親から喝が入る。
「こら、真奈!早くしなさい!夕飯に間に合わなくなるでしょ?」
「嫌だよ…切りたくないよ〜」
真奈は腰まで伸びた自慢の髪を守ろうと必死に抵抗する。
「いい加減にしなさい。お母さんの言うことを聞きなさい。そんな髪なんて伸ばしても仕方ないでしょ?早く短く切ってしまいなさい」
母親はいうことを聞かない真奈にイライラを募らせながら、強引に椅子に座らせた。
理容師は苦笑いをしながら真奈にケープをかけた。
真奈の綺麗な黒髪が白いケープから椅子の窪みを通り、下に垂れる。
ずっと伸ばしいた黒髪は絹の様に美しく、天井の光が当たり艶々と輝いていた。
その髪が切られてしまう…真奈の不安は増長し、脈拍が速くなる。
「今日はどのくらい切りますか?」
「えっと…プールの授業が始まるので、すぐ乾くように思いっきりバッサリと短くしちゃってください」
本来はショートカットくらいの予定で考えていたが、イライラしていた母親はストレスを解消するように怒りのまま勢いで注文してしまった。
母親の言葉に真奈はショックを受け、大事なロングヘアがバッサリと切られてしまうことに顔面が蒼白する。
「本当にいいんですか?」
真奈の長くて綺麗な髪を二度見して理容師は確認する。真奈も母親が思い直してくれないかと期待の目で母親を見つめる。
「はい、これだけ長いと水泳帽子を被れないし、濡れたままだと風邪を引くので、うんと短くしてもらって大丈夫です。耳もすっきり出るくらいで、襟足もさっぱりと短くお願いします」
イライラしている母親の勢いは止まらなかった。
「そんな…男の子になっちゃうよ…」
容赦ない母親の言葉に真奈は石のように固い表情となる。
「というと、耳周りや襟足は刈り上げになりますが大丈夫ですか?」
「はい、さっぱりと刈り上げちゃってください。とにかくうんと短めでお願いします」
「わかりました」
ようやく注文したことで安堵した母親は待合室で雑誌を読み始めた。
理容師は鋏と櫛を持って、既に注文の時点で絶望していた真奈に近づく。
無言で真奈の後ろの髪を櫛で持ち上げると、襟足の根本から鋏を入れた。
ジョギジョギという音の後にバサバサと大量の長い髪がケープに当たって床に落ちる。
「えっ?えっ?」
いきなり襟足に冷たい感触が当たり、体がビクッと反応してしまう。
ついに始まってしまった断髪に真奈は悲しさで呼吸が重くなる。
理容師は容赦なく後ろの髪を櫛で掬い上げて鋏で切り落としていく。
ジョギジョギジョギジョギと後ろから髪を切られる音が店内に鳴り響く。
長い髪に引っ張られていた感覚が次第に無くなっていくことで、後ろの髪が短くなってしまったことを実感する。
「隣のお嬢ちゃん、すごいバッサリだね〜」と言う声が聞こえる。
両隣の椅子で髪を切っているおじさんたちが楽しそうに真奈を見ていた。
お洒落な美容室に行くようなお年頃の女の子のロングヘアがおっさん臭い床屋で容赦なく切られている。
後ろの長い髪全て切り落とした理容師は、襟足の髪を櫛で持ち上げて鋏を入れ、刈り上げ始めた。
真奈の耳には先程よりも少し軽いジョキジョキという音が聞こえる。
櫛と鋏は止まることなく真奈の頭の上の方まで上がっていく。
鋏が進むに連れて、真奈の頭がどんどん軽くなる。
腰まであった後ろの長い髪はあっという間に頭の真ん中くらいまで刈り上げられてしまい、1センチ程の長さになっていた。
床やケープには切られた大量の髪が付着している。
理容師は右横に回ると、後ろと同様に長い髪を櫛で持ち上げ、耳の上で根本近くから鋏を入れた。
バッサバッサと切り落とされた大量の長い髪が雨のようにケープに降り積もる。
一気に髪が切られたことで長い髪に隠れていたはずの耳が綺麗に露出する。
さらに鋏は止まることなく、耳の上の髪もジョギジョギと刈り上げていく。
横の髪を切られている真奈の姿は鏡ではっきり見えた。
「あっ…そんな…あっ…」
真奈は初めての大胆な刈り上げに思わず声が出てしまう。
理容師は容赦なくジョキジョキジョキジョキと抵抗できない少女の髪を拷問のように切り落としていく。
女の子らしかった長い髪に鋏が通る度に無惨に短くなっていく。
右側をすっきり刈り上げると、理容師は反対側も耳が露出するくらいバッサリと短くしてしまった。
理容師は真奈の頭をわしゃわしゃと撫でて髪を払った。そして一度席を外す。
「私の自慢のロングヘアが…何この頭…男の子みたいだよ」
あまりの変わり果てたヘルメットを被った様な頭に、真奈は心が締め付けられるような悲しさを感じた。
待合室から騒がしい声が聞こえ、目を向ける。
なんとクラスメイトの男の子が真奈の母親と話しながらこちらを見ている。
その男の子は真奈が好意を寄せているイケメンな男の子であった。ロングヘアが綺麗だと褒めてくれたこともあった。
「嫌、見ないで…こんな姿、見られたくない…」
よく聞こえないが、男の子は驚いた表情で、「すごいバッサリですね」と話しているようだ。
2人とも視線はこちらに向いており、真奈はとても恥ずかしく感じた。
理容師が戻ってきたかと思うと、いきなり真奈の頭を前に倒し、力強く抑えた。
そして、アタッチメントを付けたバリカンを真奈の襟足から潜り込ませた。
ヴィィィィィィィィンと大きな音を立てたバリカンはジョリジョリと真奈の襟足を数ミリに刈り上げていく。
「えっ?あっ!一体何を…」
好きな男の子に見られながら、真奈はされるがまま襟足の髪をバリカンで刈り上げにされている。
バサバサと大量の髪が落ち、ケープや床は真奈の黒髪で覆われていた。
ヴィィィィィィィィン、ジョリジョリジョリジョリ
ヴィンヴィンヴィンヴィィィィィィン
真奈の襟足を何度も何度もバリカンは往復する。
「んっ…あっ…んっ…」
初めてのバリカンの生暖かい感触と心地よい振動に、真奈は感じたことのない気持ち良さに襲われ、イヤらしい声が口から微かに漏れてしまう。
「んっ…んっ…あっ…」
バリカンの気持ち良さと刈り上げられている羞恥心によって下腹部がじわりと熱くなるのを感じた。
自慢の髪を短くされて悲しいはずが、あまりの気持ち良さに、疼くような快感が溢れる。
バリカンは真奈の後頭部を耳の真ん中くらいまですっきり短くすると、横の髪に移動する。
右の耳周りの髪を根こそぎ削ぎ落とす。
ヴィンヴィンヴィンヴィンヴィィィィィィンという響きの後に大量の髪がドサドサとケープに落ちていく。
「んっ…あっ…そんな…だめ…」
まるで毛が伸び放題だった羊の毛刈りのように、鏡には容赦なくバリカンで髪を刈られている自分の姿が映り、真奈は羞恥心と興奮の境を彷徨う。
耳の少し上辺りまでを綺麗に刈り上げると、左側も同じようにすっきりと刈り上げてしまった。
ようやくバリカンのスイッチが切られると、鏡には刈り上げられた坊ちゃん刈りのような女の子が映っていた。
理容師は手をつけていない頭頂部のサラサラの髪を櫛で持ち上げると5センチくらいの長さで鋏を入れた。そのまま少し移動し、その動作を繰り返してトップの髪を短くしていく。
つい先ほど、たくさんの髪を切ったはずが、まだまだ大量の髪が切られてしまう。
バリカンで刈り上げた部分と頭頂部を繋げるように何度も鋏を入れる。
前髪も眉毛が出るようにおでこの真ん中くらいで短くすると、ようやく理容師は鋏を置いた。
「はい、終わりましたよ」
鏡にはさっぱりした刈り上げショートの真奈が映っていた。
先ほどまでは背中を覆い尽くすほどのロングヘアがあったとは思えないほど、うんと短くされてしまっている。
長い髪に隠れていた耳と襟足はすっきりと露出し、トップも分け目の名残はあるが、かなり短くなっている。
「あっ…これが…私…?」
真奈はあまりの変わりようにショックで言葉を失う。どっと悲しみが胸に波の様に繰り返し溢れて来た。
悲しさと恥ずかしさで着ていたシャツの裾を握りしめる。
「ご注文通りにさっぱりと短くしておきましたよ。これでプールは快適に楽しめると思います。それじゃあ、流しますね」
真奈の頭は前に倒され、シャンプーをされる。
切る前の長い髪があれば洗面台が黒髪で覆い尽くされただろう。
しかし、そんな長い髪はどこにもなく、短くなった髪をわしゃわしゃと男性と同じように容赦なくシャンプーされるだけであった。
理容師に刈り上げられた部分をジョリジョリと何度も洗われる度に、真奈はバリカンを入れられた時に感じた気持ち良さを思い出し、ビクンビクンと下腹部に熱い鼓動を感じてしまった。
今までは家で2時間くらいかけて丁寧にドライヤーで乾かしていた長い髪は、短くなったことで5分で乾いてしまった。
ケープを外され席から立ち上がる真奈だが、下腹部の興奮により足に力が入らずにヨロヨロと歩く。
「あら、あんなに長い髪だったのに、さっぱりしたわね〜。予想よりだいぶ短くなったけど、似合っているわよ。これなら水泳の授業も大丈夫ね」
待合室で待っていた母親は自分で注文したにもかかわらず、真奈の髪型を見て驚いていた。そして、満足そうに短くなった真奈の頭を撫でた。
「あっ…ダメ…触らないで…」
真奈は刈り上げをジョリジョリ触られるだけで体が敏感に反応してしまった。
「長くて綺麗な髪だったので勿体なかったのですが、ご注文通りにバッサリと短くと刈り上げておきました」
可愛い女の子の長い髪をバッサリ切れるという珍しい体験をした理容師は満足そうである。
「この辺なんかすごい短いわね〜ジョリジョリして気持ちいいわ〜。長い髪が生えていたとは思えないくらい刈り上がってるわね〜」
母親は楽しそうに真奈の襟足を触った。
「あんっ…やめてよ…恥ずかしいよ…」
そんなやり取りをしていると、真奈が好意を寄せているクラスメイトが話しかけて来た。
「真奈ちゃん…髪切ったんだね…」
「あっ、嫌…見ないで…」
真奈にとっては、長い髪に隠れていた耳や襟足が丸見えになってしまったことが、まるで裸を見られているように恥ずかしかった。
お会計をする母を置き去りにして、真奈は足早に店を出た。
店に入った時とは頭の感覚が違い、纏わりつく長い髪がなくてとても軽くなっている。
ヘアアクセサリーが欲しかったが、何も買わずに家に帰った。
翌日、学校で水泳の授業が始まった。
結局、長い髪をバッサリと切った生徒は真奈だけで、他の生徒は少し切るかまったく切らないかのどちらかであった。
「真奈ちゃんの綺麗な髪の毛、とても好きだったのにな〜」「もったいないね。あんなに綺麗だったのに」「男の子みたいだね。刈り上げ、触っていい?」
など、周りから興味を持たれた。
「真奈ちゃん、大切なロングヘアだったのに先生の言う通りに短くしてきて偉いわ。さっぱりして小学生らしくて素敵よ」
担任の先生はクラスのみんなの前で真奈を褒めたが、真奈にとっては公開処刑の様であり、あまりの恥ずかしさで顔から火が出そうであった。
スクール水着に着替え、みんなでプールへ向かう。
前を歩く女の子のロングヘアが揺れているのを見て、真奈は自分の短くなった髪を触り悲しくなった。ロングヘアをポニーテールに纏めて、お気に入りのヘアアクセサリーをつけてスク水を着ていたはずなのに。
切る前の背中を覆い尽くすほどあった髪の毛であれば、水着から出ている肩や腕に触れただろうが、今ではさっぱり刈り上げショートのため、どこにも触れることはなく、背中や襟足が丸見えであった。
「私も昨日まではあんな感じのロングヘアだったのにな…」
しかし、ロングヘアの女の子たちは水泳帽子に髪を収納するのに手間取っていた。
真奈は簡単に水泳帽子を被ることが出来ただけでなく、プールの後も髪をタオルで乾かすことが出来た。
その後、プールの授業をする度に、風邪を引くロングヘアの女の子が続出したことから、教師たちは本気で髪を短くするように生徒や親を指導した。
もちろん、その参考となる髪型は真奈の髪型であり、真奈の刈り上げショートは写真を撮られてプリントとして親たちに配られたのであった。
終わり