7月26日、朝。強い日差しが朝から降り注ぎます。
この日は天候に恵まれそう、
祭りに関わる全ての人が胸を撫で下ろしていたと思います。
川越の夏のお祭り川越百万灯夏まつりの日。
朝早くから通りのあちこちで、テント設営など祭りの準備が進んでいました。
たくさんの催しが用意された百万灯夏まつり、
一つひとつのテントにこの日に向けた準備があったことを思います。
当日朝早くから、
数日前から提灯を飾り付け、
何ヵ月前からそれぞれ催しの企画を考え、と
お祭りはその日にポッと出来上がるものでなく、
それぞれのドラマを経て、この日の朝を迎えていました。
一番街に向かえば、川越まつり会館北広場でラジオぽてと公開放送の準備が進んでいる。
一つひとつの番組にそれぞれ多くの方を巻き込んでいて、
長い時間を掛けて用意した番組でした。
川越まつり会館に入るとロビーには、
ラジオぽてとスタッフが南相馬市に訪れた時の写真展と、
セサミアートのワークショップが用意されています。
南相馬の方が笑顔で
体育館の床一杯に敷き詰めたセサミアートの写真。
小さな出展ですが、
そこには、南相馬の方と以前から交流を続けてきた軌跡がたくさん詰まっています。
この日、お祭りの全ての会場が、
こうして以前から準備を進めてきた軌跡があったと思います。
お祭りならではの楽しさの裏には、
想いを込めている人が数え切れないほどいます。
朝の9時。
熊野神社の境内でも、朝早くから祭りのための準備が進んでいました。
集まっているのは、連雀町の囃子連「雀会」の面々。
何もない台車の上に慣れたように木を組んでいきます。
台車は鉄骨で車輪は4つ、ちょっとはそっとでは動かない重さがあった。
作っているのは山車。
いえ、山車は山車でも、川越まつりの荘厳な山車と違って
雀会が自ら作り上げるこのミニ山車を押して、
笛や鉦に、雀会の面々が一緒になって町内を囃して廻ります。
山車のサイズは小ぶりで、
廻る範囲も自分たちの町内がメインですが、
だからこそ
地域に根差した、地域のお祭らしい雰囲気がありました。
黄色い幕に、太鼓を乗せてがっちり固定し、
上にビニールとよしずで屋根を張ります。
提灯を灯りを灯すコードを這わせ、屋根を乗せたら
山車の形が見えてきます。
ミニ山車が出来上がっていく過程が楽しい。
「屋根、こうしたらいいんじゃない?」
一度設置した屋根を剥がし、やり直す一同。
炎天下で長時間練り歩くので、陽射しを防ぐ屋根づくりは重要です。
ああでもないこうでもない、と和気あいあいと、
時に冗談を言いふざけつつ、ミニ山車づくりを進める雀会。
みんなの様子を遠くから見ていた別の雀会の一人の方が、
「みんな好きだね~」
とポツリと言っていました。。。、(*^o^*)
囃子が好き、祭りはもっと好き、
川越のお祭に最もどっぷり浸かっているのがお囃子の方だと思います。
提灯を設置したら
毎年恒例の連雀町のミニ山車の完成です。
連雀町のミニ山車の曳行は25年ほど前から行われ、
始めは太鼓が乗るくらいの小さな台だったらしいですが、
そこはやっぱりお祭りごと。
だんだん規模が大きくなり、
今では「ミニ山車」と呼ぶくらいの大きさになっている。
山車に囃子があって、
川越百万灯夏まつりのお祭りらしい雰囲気を作っています。
今の川越は、川越まつりが規模が大きくなって、
川越総動員の一大イベントになっている楽しさはありますが、
川越市郊外にある伝統行事や夏祭りにホッとする気持ちも抱いたりします。
そんな中、
百万灯夏まつりには地域に根差したものをひしひし感じ、
街中が盛り上がってる中に、町内祭りが根底に在る確かさ。
市街地ど真ん中でありながら、
その雰囲気を味わえるのがこの夏祭りの魅力です。
出来上がったミニ山車・・・
最後に・・・マイコップにマジックで名前を書き、柱にくくりつけたら完成です!
マイコップは、祭に欠かせない命の水の補給に必要なもの。
曳行が始まる前から、命の水を補給する一同。。。(*^o^*)
一杯ご馳走になりましたが、
今まで「お祭で呑むのは最高!」と思ってたのはなんなのかと思うほど、
山車で呑む命の水は最高でした。。。!
百万灯のこの日、
ミニ山車を押して囃子して廻る町内は市内にいくつもあり、
どこの町内でも朝からこのような山車を組み立てています。
大手町の豪華なミニ山車に、岸町のミニ山車。
大工に組み立てを頼むような本格的なミニ山車もありますが、
連雀町のように、
囃す人が自分で組み立てる様子が、地域のお祭りらしいです。
命の水補給のためのサーバーを設置している町内も多いそう。
お祭に遊びに来る方も、囃す方も、両者に欠かせない命の水、
みんなが一体となって楽しむのがお祭りの醍醐味です。
百万灯夏まつりには、神輿が10基ほど出ます。
商工会議所主催のお祭りらしく企業の神輿が多く出て、
ミニ山車がそれに伴走して囃します。
神輿と山車の競演が見られるのが、このお祭りの魅力。
神輿に着いた後、
ミニ山車は自分の町内を廻ったり、他町内と曳っかわせしたり、と
夜まで囃子を街に響かせます。
夏の夜に響く神輿の掛け声と囃子の調べ。
これぞ夏祭りという雰囲気に包まれていきます。
そして、いよいよ。。。
「間もなく、交通規制が始まります。間もなく、交通規制が始まります」
14時直前、拡声器から放送が通りに響きます。
アナウンスを聞きながら境内の入口で静かに待つ雀会。
これから川越の街を囃しに行く。
すっと緊張感に包まれ一気にお祭りモードになっていきました。
これが、お祭りに入っていく直前の空気なのか、と実感。
14時から21時まで駅周辺から一番街の方まで、
主張道路が交通規制となり歩行者天国になります。
同時に、市民祭り、川越百万灯夏まつりがスタートです。
山車に囃子に、屋台に浴衣に、太陽と命の水。
「よし!じゃあ、行くか!!」
命の水をぐいっと飲み干し、
雀会の面々がミニ山車を「せーの!!」と熊野神社の境内から押し出します。
ズズズとゆっくり動き出すミニ山車。
この日の囃子は、雀会の子どもたちが中心になって演奏する予定で、
お祭りで演奏するのがなにより経験になるはず。
子どもたちも山車に乗りたくてウズウズしてるようでした(*^o^*)
子どもといっても一年から三年と経験を積んでいる小学生たち、みんな上手です。
ミニ山車が降り立ったちょうどここは・・・
連雀町交差点近く。
そう、
去年の10月の川越まつりで新富町一丁目の山車と曳っかわせが行われた場所でした。
山車がこの場所に出ると、つい去年の光景が蘇ります。
あの時、雨に降られた曳っかわせでしたが、
余計に神秘性が高まっていくようでした。
あの時のように、この場所に降り立った連雀町の山車。
ただ、百万灯用の手づくり感満載のミニ山車もいいですが、
山車といっても、本来の山車とはスケール感が違います。
川越まつりの山車は、これの100倍は絢爛豪華です。
観光客の方にとっては、
この夏祭りが川越まつりと受け止めている方もいるかもしれません。
ミニ山車を見て、川越まつりの山車と思った方ももしかしたらいるかも。。。
事実、囃子連の方もそうした声を掛けられるそう。
(祭り前に、川越まつり夏、川越まつり7月、といったキーワードで検索されることが多かったです)
お祭り=夏、というイメージがあるので、
これが川越まつりと思われる方もいたかもしれませんが、
川越まつりは毎年10月。
川越まつりが神事なら、川越百万灯夏まつりは市民祭と言えばいいでしょうか。
ダンスに、音楽に、街中にさまざまな出展があり、
市民参加型のお祭がこの夏祭り。
川越まつりの時は、
あっちからもこっちからも山車が来て迫力に圧倒されますが、
このミニ山車は基本その町内の曳行がメイン。
そして、囃子連の方の演奏も、
川越まつりの時の鬼気迫る演奏とは違う、
自由奔放に自分たちも楽しみつつ、楽しんでもらうのが伝わってきます。
囃子を演奏する方の話しがなにより、
二つのお祭りの違いをはっきり浮かび上がらせます。
「川越まつりと百万灯は全然違うもの。
川越まつりはずっと緊張している。この夏祭りは
自分たちも楽しみ楽しんでもらうもの」
川越まつりと違う表情に、こちらも楽しい気持ちになっていきます。
「おい!舵取り誰がやるんだ??」
「カーブ危ないんだからしっかりしろ!」
「さあ、音出しちゃえよ!」
ミニ山車の周りにお祭りに来られていた方が集まります。
笛が鳴り、太鼓が合わせ、「ニンバ」から始まりました。
子どもたちが演奏し、大人が周りで見守る。
連雀町交差点から本川越駅方面へ。
本川越駅方面を見ると、提灯がずらっと並んでいて綺麗に見えました。
「寿司割烹栄」さんの前で山車を止める一行。
せーの、とゆっくりとミニ山車の向きを変える。
段差を上がり入口に近づいていく。
囃子の演奏が力強くなっていきます。
栄さんもお店から出てきてお互いに挨拶を交わす。
挨拶だけで終わりかと思いきや、栄さんが山車に乗り込み一緒に演奏を始めました!
栄さんも兄弟で雀会に入っている方。
この時ばかりは山車に大人が乗って囃します。
聞いていると体が揺れてきます。曲は「投げ合い」。
子どもたちが長い時間の演奏するのは難しいので、時折大人に代わって演奏していく。
栄さんから、また山車を回転させて向きを変える。
「ソーレー!ソーレー!」と子どもたちの声で山車を曳く様子は、
川越まつりを彷彿させます。
大人に言われなくても自分たちで自然と、ソーレー!と声を出す子どもたち。
祭りが体に染み込んでいるようです。
大通りから脇道へ。
建物に挟まれた道は囃子がよく響きます。
立ち止まって見送る観光客の方々。
山車の先頭に会長が立ち、山車の進む経路を決めていきます。
「ここ曲がるよ!」
松江町方面を進んで、広小路商栄会のテントにたどり着きました。
ここでも山車の向きを変え、テントに挨拶の囃子。曲は「屋台」。
この時はいませんでしたが、商栄会テントには
くっきぃず音楽院の斉藤さんがずっと詰めていました。
テントの向かいにあるのがくっきぃず音楽院。
花は咲くプロジェクト以来の再会です。
ここでも命の水をご馳走になり。。。(*^^*)
山車はUターンして「中村屋」さんでも挨拶。
こうして、連雀町内を廻って挨拶していきました。
その様子はまさに、正月の「門づけ」と同じ。
街のお祭りを囃子で彩りつつ、
あくまでも、町内を大事にした町内の祭りでもある。
囃子は子どもから大人へバトンタッチ。
暑い中演奏している時は汗もぬぐえません。
周りにいる面々が、演奏している人に扇子をあおいであげている光景が印象的でした。
「ソーレー!ソーレー!」と次にやって来たのが、
大正浪漫夢通りです。
脇道に入って蓮馨寺方面に向かい、
「信栄堂」さん、「渡井写真館」さん、「まことや」さんで止まります。
止まるたびに御祝儀を貰い、御祝儀を書いた紙が増えていくミニ山車。
観光の方が「子どもたち上手いね~」と立ち止まり、
囃子に耳を傾け、ミニ山車の写真を撮っています。
いつも深いつながりを感じる。
囃子を通じた仲間、という言葉では伝わらない関係性。
お囃子に親子で参加し、同じ町内で参加し、小さい頃から囃子を続け、
相手のことはなんでも知っている仲。
家族のような雰囲気で、家族以上に何でも話せるような関係。
こういう光景を見ると、雀会は凄いなあと改めて思います。
郊外の伝統行事もいい、と書きましたが、
郊外では行事の日が近くなってきてから練習を始めるところもあり、
地域が結びつきにくい面もある。
それと比べたら雀会は毎週お稽古をし、お稽古に来る人数もたくさんいて、
子どもたちも多く、地域の伝統が受け継がれている理想的な形があります。
大正浪漫夢通りを北に進み、
仲町交差点から再び南下していきます。
仲町交差点を通過する時にやっぱり思い浮かべた、
川越まつりの曳っかわせ。
ここで行われる曳っかわせは、
川越まつりで一番の華と混雑になりますね。
今年の川越まつりでは、ぜひここで道灌の山車の曳っかわせが見たいです。
人出が多い中央通りを進む。
「ソーレー!ソーレー!」
蓮馨寺の前でミニ山車を止め、ここを曲がろうとみんなで回転させようとします。
その時。。。
「みどりさんの所寄らないと!!」
あ、そうだったとまた向きを直すミニ山車。。。
通り過ぎようとしたAgostoの前で止まって挨拶をしました。
という内実があったことはここだけの秘密。。。(*^o^*)
「みどりさんの所、涼しい~!」と、しばしの休憩タイムとなりました。
この後また、連雀町交差点へ向かい、
松江町方面に曲がって、岩上さんに挨拶。
町内一周してきました。
山車に着いているとずっとお囃子がそばにあって、
最もお祭りが楽しめる場所にいました。
お祭りは囃子があってこそ。
市民参加型のお祭りに、地域を大事にしたミニ山車が確かに廻っていました。
市民参加型といえば、
この百万灯夏まつりには、本当にたくさんの市民が参加していました。
ダンスの人の中には、
3月のKOEDOアジアフェスに出演してもらった方がいて、
ステージの司会をやっていたのも普段よく会う市民の方、
本川越駅の浴衣まつりの運営を支える人に参加する人、
郊外の農家さんがお手伝いでフランクフルト販売していたり、
障がい者の施設の方が模擬店を出していたり、
この夏祭りらしい、みんなで作り上げる雰囲気に包まれていました。
川越百万灯が終われば、
だんだんと近づいている10月の川越まつり。
川越まつりに出る山車は、このミニ山車よりもっともっと迫力ありますからね♪
3ヶ月を切り、山車蔵から出される日を楽しみにしています。。。♪