川越style「南田島 春祈祷と足踊り」川越の原風景 田植え前に五穀豊穣を願って | 「小江戸川越STYLE」

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「小江戸川越STYLE」代表:石川真

 

川越に春到来。

冬の期間中、水が抜かれ乾いた伊佐沼に

入間川から水が引き込まれ、なみなみと水が注がれて一杯になっています。

この季節を待ってましたとばかりに、鳥たちも水辺に集まってきている。

伊佐沼から南に流れ出る九十(ぐじゅう)川は地域の農業用水として、

伊佐沼から近い順に田んぼに水が張られていきます。

視界に入る一帯が水辺になる川越の春の風景。

5月も20日頃になれば、

川越は田植えの季節になります。

ちょうど、今か今かと水を張るのを待っているのが今の時期です。

 

川越市南田島。

東を見れば九十川、西を見れば新河岸川、

川に挟まれ、まるで中州のような水の豊富な土地で、

昔から続いてきた川越の原風景、米作り。

今年も豊作となりますように。五穀豊穣を願って。

16号線を境に、北と南で風景がガラっと変わるのが川越の面白いところ。

北は駅の周りに市街地で建物が立ち並び、

南は一面水田が広がります。

川に沿うように、東に旧川越富士見有料道路と西に254線に挟まれた一帯。

道路を越え田んぼの間を縫うように車を走らせると、

林が茂る場所が目に入りました。

田んぼの真ん中に静かに佇んでいるのが、南田島氷川神社。

毎年4月14日に春祈祷というお祭りが行われ、12日には地域を巡る山車の曳き回しが行われました。




山車が出されて曳かれるのは2年に一度。

南田島の山車が見れるまたとないチャンスでした。

朝から地域の自治会の方や、南田島囃子連や足踊り保存会の方、

ちびっこ囃子連の子どもたちは保護者の方が、

境内に集まっていました。
古くから続いてきた川越の米作り。
それに合わせ行われてきた春祈祷は、相当古いお祭りです。
川越の中で田植え前にはあちこちで行われてきたと思いますが、

今でも残っている南田島は貴重です。
境内のその光景にびっくりしました。。。

南田島の人の行事に積極的に参加する姿。。。

近くに牛子小学校や砂中学校があるのもあって、

子どもたちがたくさん参加しています。

囃子連に入っている子も多くいて、賑やかで羨ましいです(;^_^A
2年に一度の山車の年、地域の方がワクワクしているのが伝わります。

米作りとお祭りは大事な結びつきです。

南田島から少し北に行って伊佐沼の先は老袋。

一面田んぼの老袋でも

弓取式 」という五穀豊穣を願うお祭りが2月に行われています。

米作りがあるところにはお祭りがある。

川越米を作る南田島は

もちろん今でも米作りは仕事として続いているので、

春祈祷は昔懐かしい伝統行事を守り続けているという意味だけでなく、

豊作を願う現在進行形のお祭りです。

南田島には、田植え前の4月14日の「春祈祷」があって、

7月14日の稲の生長を願う「天王さま」があり、

10月14日の収穫に感謝する「お日待ち」がある。

地域で行われる地域のためのお祭り。

ここには観光客の姿はありませんが、こういうお祭りも川越の楽しみだと思います♪

川越には、郊外に昔のままの伝統行事が続いている地域が多いです。

郊外に、ユニークで独特な川越の素の姿があります(*^o^*)

氷川神社の神主さんの祝詞奏上のあと、

いよいよ山車の曳き回しが始まります!

綱が張られ、子どもたちが曳き手として広い南田島一帯を歩きます。

拍子木が打ち鳴らされ、山車が動き出しました。。。!

同時にお囃子の演奏も始まりました♪


山車が進むルートはいつも同じで、家々を回って山車にお囃子を楽しんでもらう。
午前は南田島の北半分、午後は南と分けて2時間ずつ巡るほど、南田島は広いです。
昔から変わらない田んぼを背景に、変わらない山車が進む。
変わらず続く光景に愛しさも感じて。

道は新しく舗装された道もありますが、

ほとんどは田んぼのあぜ道を進んだり山車の幅ギリギリのところを進みます。


蔵の街並みに響く囃子もいいけれど、田んぼに囃子もぴったり合います(*^^*)
何度も切り返して曲がる45度カーブや、
木にぶつかりそうになる道を進む。



中でも旧川越富士見有料道路をくぐって越えるところは、

車と山車、現代と過去が交差する交差点は圧巻です(*^^*)
かつては真っ直ぐ進んでいた道も、バイパスが通ってからは、

道を避けて下をくぐるようになりました。

南田島といえばやっぱり足踊りです!

山車の舞台に寝っ転がり、足だけを表に出している!


囃子に合わせた舞なんですが、足だけで舞を表現するのが特徴。

片足にひょっとこ、片足におかめの面を付け、

比較的やさしい屋台という曲の舞は、二人の恋愛模様のストーリーでした。。。(*^o^*)

始めはつれないおかめも、だんだんと心を開き、

ついに二人は結ばれるというハッピーエンドのラブストーリーです。
今日の出来はどうでしたか??
「山車の上はなかなか思うようにいかないね」
20年足踊りをやられている方でも、普段氷川神社のお祭りでは広い座敷でやっている時の違いに慣れるまで時間がかかったそう。
動き続ける山車の中の狭い空間、表現の幅も制限される。
地域の娯楽として、単に舞を踊るのではなく、他とは違ったことをしようと人形浄瑠璃をヒントに始まった南田島足躍り。
「最近、中学一年生が3人足踊りを覚えたんだよ」


これからも大事に続いていく足躍りです。

休憩で止まったのが、九十川の真横でウニクス南古谷のすぐ裏でした。
ウニクスができたのは大きい、と皆さん口々に話します。
マンションができて新しい家族が転入し、ちびっこ囃子連にも入ってくれる。
誰でもウェルカムな囃子連です♪

 

そしてまた、ソーレソーレの掛け声が響き渡ります。

(川越線の踏切を越える)

 

(再びバイパスをくぐります)


豊作を願う春祈祷は昔から続いていますが、

この南田島の山車(正確には屋台です)は明治20年に作られたんだそう。

川越の中でも相当古い山車です。

(天井は和紙でした)

南田島のように川越まつりに山車が出なくても、

地域にこうした山車・屋台を持っているところはあちこちにある。
川越人にとって山車は誇りであり宝ですね。
と、その話しにびっくりしました。。。
囃子連の方が語ります。

「この山車は自分たちで組み立てたんだよ」

なんと、ばらして保存してある山車を事前に自分たちで組み立てた、と。。。
これを作った棟梁の方もその息子さんもすでに亡くなられている。
組み立てられる人がいなくなって、設計図があるわけでもなく、口承をもとに組んでいるんだそう。
地域のお祭りならではの話しですね。

そして山車に乗る南田島囃子連も歴史は古く、

かつての川越まつりの時は、一番街の鍛冶町(現在の幸町)に頼まれて、

40年前までは幸町の山車に乗って演奏していたそうなんです。

幸町といえば、川越の中でも絢爛豪華で知られる山車。

(2012年川越まつりより幸町の山車)

あの山車で演奏していたなんて凄い。。。

今でこそ幸町に囃子連がありますが、

昔は市街地の豪商は自分で囃子の演奏せず、

郊外の農家さんに囃子を頼んで川越まつりで演奏してもらっていた。
農家さんは町場に買い物に行ったりし、

川越の市街地と郊外で、川越まつりの通した交流があったんですね。

郊外の囃子連が歴史が古くて演奏が上手というのは、

そういうわけがあるんです。

南田島の山車は川越まつりには出ません。

さすがに持っていけない。

今は菅原町に山車に乗る年があって、

今年の川越まつりでは乗るそうなので、菅原町の山車で足踊りが見れると思います♪

南田島では、春祈祷の時に山車を曳くのは大変と、

一時途絶えていた時期もあったそうですが、
流れが変わったのが、ちびっこ囃子連を作った昭和49年。
子どもたちが参加するようになり、また盛り返してきた。

その時のちびっこが今親になり、

子どもがちびっこ囃子連に参加しています。




曳き回しの途中に農家さんの家にある馬頭観音を見せてもらいました。
見ると慶応4年とあります。

昔の米作りはトラクターではなく牛や馬が引いて土を耕していたので、

こうしたお墓を作って弔っていました。
当時の米作りを思うと自然の富と脅威を感じます。
九十川は、恵みの川だけれどたびたび氾濫する暴れ川でもあった。
想像を超える豊作の年があったり水が溢れて田んぼがダメになったり、
自然相手にあらがえない人の姿。

何事もなく無事にいきますように、春祈祷には痛切な願いを込めていました。
ここから北にある16号線を見渡すと、
建物が立ち並ぶ市街地が見えました。

うっすらと丸広が見えます。
そしてそこは、少し高くなっているのが分かります。

南田島が低地ということと、

16号線を越えた先、新河岸川の内側が高台になっているということ。
その高台に川越城を作り、時の鐘を建てた。
目に見える一つひとつに意味があります。
川越城は、地形が自然な要塞になっていました。




薬師堂に戻ってきて南田島の春祈祷、終了となりました。

田植え前、生長を願い、収穫の時に、

米とともに季節のお祭りがあって、川越の原風景が今でも残ります。
同じ川越でも、今福や福原はさつまいもを作るのに適した土質、

水にめぐまれた南田島は田んぼ。
川越は一言で語れない多様性があります。
春祈祷が終わり、

5月になれば九十川や井戸水から水が引かれ、

乾いた土は一面水の鏡面になる♪

水の鏡面が、緑の草原になり、秋には黄金色の絨毯になる。

川越の米作りの姿を、今年はぜひ見てみたいと思います。。。♪

さつまいも、河越茶と並ぶ川越の大事な農産物川越米。

今年もいいお米がとれますように。。。

「南田島の春祈祷」

南田島氷川神社にて毎年4月14日

山車の曳き回しは二年に一度です


 

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