紫陽花の季節


紫陽花の咲く季節、最愛の人は良く体調を崩していた。


それでも気が向くと


庭の紫陽花の手入れをしていた。


今日はお天気が良くて主(あるじ)の居ない

部屋に

風を入れながら


そよぐカーテンに


庭の紫陽花が


私の目に入った


数年前に比べ少なくなった

紫陽花の花をしばらく眺めた


時間は流れているのが不思議なくらい


あの時と変わらない


そうだ


少し距離があるけれど我が家へ

連れて帰ろう


そう思い立ち、花鋏をさがした。


元気そうな紫陽花を選んだ。


家に着くと紫陽花はシワシワヘナヘナの紙を丸めたような

紫陽花に様変わりしていた。

大きな器に水をザブザブ入れて

鋏で紫陽花の枝葉を容赦なく切った


たっぷり水を張った器にざっくりと

紫陽花を放った


日が暮れた水場に紫や水色の紫陽花が佇んでいる




夜中に水にさらされた紫陽花がクスクスと

笑って

何か企んでいるような気がした




一晩明けて


小雨もパラパラと降りグレーの空模様

そんな朝に

似合う花器を見つけて新鮮な水を張った


ようやくゆっくりと紫陽花をみつめた。


満面の笑みで紫陽花が微笑んでいた


ほっとした。


祖母の紫陽花が今年は私の家に来てくれた

グレーの空が本当似合う。


時空を超えた気がした。