人身傷害保険の重要性を理解していただくために、もう少しくわしく説明したいと思います。

人身傷害保険ができたのは、1998年の保険の自由化以降です。

もともと自動車保険は、どこの保険会社に入っても、保険料も保険内容も一律に同じでした。

ところが、自由化された時に、おそらく「保険内容が同じままでは価格競争に巻き込まれる」と危惧した保険会社が素晴らしい保険を開発しました。

それが、人身傷害保険。

はじめのころは、文字通り、「人身」に「傷害」があれば下りる保険でした。

画期的な保険です。

だって、自分の不注意で怪我をして、それがひどい怪我だった。骨折して入院した。

健康保険が使えるにしても、自己負担分は自分で支払うのは当然ですよね。


それが、自動車保険に附帯した保険から保険金が下りるというのですから。

(私の知り合いで、自己の不注意による怪我で後遺症が残り、1000万円以上保険金が下りた人がいます。もちろん、昔の話。)


ところが、事態は保険会社がおそらく想定しなかった方向に進んでいきました。


歩いていて転んで怪我しても、スポーツをしていて怪我をしても、保険が下りるのです。

加えて、集積された裁判例は、保険会社に不利な内容の判決が多く、最終的には法律の改正もあり、
保険会社にとって極めて不利な内容の保険であることが確定してしまった。

じゃあ、人身傷害保険なんて売らなければいいのに、と誰もが思うでしょう。


でも、現実的には、いったん商品として出したものを完全になくすのは難しいでしょう。

横並びに全保険会社が一斉になくせば問題ないかもしれませんが、そうすると、監督官庁の金融庁の目がこわいですね(金融庁は、ほんとにこわいです。)


だから、保険会社は、人身傷害保険という保険はそのままに、内容を縮小してきています。

人身傷害保険自体は残すけど、保険が使える範囲は狭めましたということです。


当然、普通の人はそんなことは知りませんので、保険会社にいわれるがままに保険に入ります。

さらに、保険自体複雑になっているので、保険の内容をきちんと把握していて、かつ、現実の裁判ではどのように扱われるかまで熟知している人は、保険会社の社員にもあまりいません。


結果的に、最初から用意してあるパッケージとしての人身傷害保険は、

「ご契約の自動車に搭乗中の場合のみ、人身傷害保険適用」という風な契約書になっていることがかなり多いです。


ほとんどの保険会社は、オプションとして、「どの車に乗っていても、あるいは自転車に乗っているときも、歩行中の時も、交通事故であれば人身傷害保険が使えます」というものを用意しています。


これに入るべきです!(全ての保険会社を確認していませんので、ないところもあるかもしれませんが、そのときは保険会社自体を変えることも検討した方がいいかもしれません。)


なお、単に転んで怪我したという場合に人身傷害保険が使えるという契約自体は、もうできないと思います。



交通事故に力を入れている弁護士同士でよく話すのは、①人身傷害保険と②弁護士費用特約は、保険会社をつぶすよね。ということです。