今回は2次小説になります
私なりの解釈でユ・ジヒョクがわの視点で書いたものですので、なんかちがうな~と思っても、どうかご容赦下さい。

 

*        *        *
 

 

2023年4月19日のあの日、僕は確かに死んだ…死んだはすなのに、なぜか目が覚めると、そこはかつて私が住んでいたマンションの部屋らしい景色がぼんやりと見えた。

 

 

一体自分身に何が起きたのか、さっぱり分からない。
慌てて起き上がり、ベットサイドにある眼鏡をかけ、改めて、部屋の中を見回す。
やはり、ここは自分がU&Kグループの後継者と知れる前に住んでいた部屋そのものだった。


しかも、何年か前に死んでしまった、かつての愛猫、茶トラの飼い猫が生きており、嬉しそうに自分にすり寄ってくる。

 

 

あの時、4月19日にカン・ジウォンの納骨堂に行った帰りに、交通事故で死んだはずなのに、痛みは全くなく、体の怪我もすっかり消えていた。

 

スマホの機種もかなり古いものになっていて、日付は4月19日とある。
ビジネスバックの中には、U&Kフードのマーケティング部長の社員証があり、仕事の書類は、どれも2013年当時のものだった。
スマホと同じ、明らかに古い型のテレビをつけると、明らかに2013年の当時のニュースを報じている。

 

一体自分の身に何が起きたのだろうか…?もしかして、本当に自分は一度死んで、10年前の過去に戻ってきてしまったのか?
そんな、あり得ない…。あり得ないが…
酷く混乱しながら、バスルームに向かい鏡をみると、なぜか若返っている自分の姿が映っていた。

 

ジヒョクは一旦、マンションの外へ出て外の風景を見渡した。
そこには、あるはずの建物が無かった。
更に駐車場に行くと、10年前に乗っていた車が駐車してあった。
 

部屋に戻ったジヒョクは深く深呼吸し、一旦自分の置かれている現状を整理することにした。
以前に住んでいた部屋、そこで確かに生きている愛猫。
古い社員証、古いスマホ、テレビから流れる既知のニュース、2013年当時の愛車、若がえっている顔、
窓から見える風景の変化。

これらのことを鑑みるに、多分…いや確実に僕は何故か、10年前の世界に戻って来たてしまったのだろう…。
でも、何故自分にこんなあり得ない事が起こってしまったのだろう…。
ここが10年前の2013年だとしたら、カン・ジウォンは…?
殺されてしまったカン・ジウォンは生きているのか?

 

一旦、落ち着く為に、シャワーを浴びて、ふと曇った鏡の湯気を拭いて、自分の裸体を見ると、鎖骨の下に青い小さなハートマークが浮かんでいた。
「なんだ?これは?」
いくら、擦っても、引っ掻いても、それはどうしても取れない。
一体、これは何なんだろう?

 

 

バスローブを羽織り、再びジヒョクはソファーに座り、考え込んだ。
そんなジヒョクに猫がしきりにすり寄って来て、猫の背を撫でながら、また考える。
誰かに電話してみようか…いや、電話して一体何を聞くというのだ?おかしくなったと思われるだけだ。
とにかく、今は動いて現状を把握することが重要だ。
急いで出勤の準備をし、車に乗り込み走り出した。

 

途中、後輩の経営しているチキン店の前を通りすぎると、やはり10年前当時の店構えだった。
その後、ジヒョクはユ家の代々の墓に向かった。
そこには亡き父の名、母の名、祖母の名など刻まれた墓碑があったが、死んだはずの自分の墓碑はやはり無い。

 

通り過ぎるの景色を見ても、2023年にあるはずのビル等も無く、ビルの大型広告ビジョンや数々の垂れ幕も、2013年当時をさしている。
祖父の元に行こうかと、一瞬考えたが、ここが10年まえの世界なら、カン・ジウォンは生きているはず。
そして彼女はきっと、会社にいるはずだ。
会社に行けば、何もかもはっきりするだろう。

 

*        *        *

 

会社に着いたジヒョクの目に映ったのは、エレベーターに乗り込もうといているカン・ジウォンらしき女性の姿だった。
慌てて、その後を追い、閉じかけたエレベーターのドアに手をかけるジヒョクの視界に飛び込んできたのは、確かに生きているカン・ジウォンだった。

 

『生きている…生きている…カン・ジウォン…』
ジヒョクの胸に、困惑とこの上ない喜びが入り混じったような感情が押し寄せ、しばし、彼女の姿から目が離せなかった。

 

 

キム課長から声をかけられ我に返り、カン・ジウォンと課長そしてチョン・スミンと共にエレベーターに乗り込むジヒョク。
その耳に、課長のジウォンに対してやたらと高圧的な言葉と、ジウォンの殺害を共謀したスミンの媚びた声音に怒りを抑えきれず、二人を黙らせる為、ジヒョクはエレベーターの壁面を思いっきり拳で叩いた。

 

*        *        *

 

エレベーターを降りようとしたジウォンを、ジヒョクは思わず呼び止めた。
なんで急に呼び止められたのか不思議な顔のジウォンだが、今はそんなことに構っていられない。
とにかく、今は彼女をあの悲惨な未来から救うべく、自分が彼女を守ってやらなくては。
そして、今度こそは自分の気持ちを伝え、ジウォンを自分が幸せにしたいという気持ちでいっぱいだった。

 

ジヒョクは彼女を屋上に呼んだ理由を懸命に考えた。
考えた結果、口をついた理由は、ここで買ってきたコーヒーを気兼ねなく飲んで欲しいから…という、拙い言葉しか咄嗟に思いつかなかった。

 

そんなジヒョクにジウォンは笑顔で話しはじめた。
「そうだ、私、会社辞めません。これを見て下さい」と言い、畳まれた1万ウォン札をジヒョクに見せた。
そこには、ジヒョクの体に刻まれたのと同じ、青い小さなハートマークが描かれていた。
内心、ジヒョクは酷く動揺した。それを顔に出さずにいることが精いっぱいだった。

 

 

そんなジヒョクにジウォンが言葉を続ける。
 

「父がくれたもので、お小遣いには、いつもハートマークを書いていたんです。落書きしないよう言っても、父は書き続けました。私は父に愛されて育った人間です。頑張ってみます。それに、部長の君には能力がある、という言葉が力になったので感謝しています…。

実は久しく自分の望みなど考えてませんでした。日々の生活で精いっぱいで…これからは、そんな生き方はやめます」
と、笑みを浮かべながら話すジウォンが愛しくて、再び生きている彼女と話しができるのが嬉しくて、ジヒョクは相貌を崩さずにはいられなかった。

 

「いい考えですね」と答えながら、かすかに微笑むジヒョクの笑顔を見て、初めて見ました。と言い嬉しそうに笑いかけるジウォンの柔らかな態度に促され、思い切って彼女に週末の予定を聞いてみた。

 

 

しかし、チョン・スミンがそこに現れ、コスル亭という焼肉店を予約したから、ジウォンは先約があると言われてしまう。

 

『コスル亭…』
スミンからコスル亭の名を聞き、2023年4月13日のジウォンの葬儀でのことを思い出したジヒョクは部長室に戻り、ジウォンの履歴書を確かめ、今度の日曜日のコスル亭の団体予約を確認した。
やはり、ジウォンの出身高校の同窓会が予定されていた。
このままでは、カン・ジウォンは誤解されたまま同窓会で悲惨な目に合ってしまう。
ジヒョクは後輩のドンソクに、急いでペク・ウンホなる人物を探すことを依頼した。

 

*        *        *

 

ジウォンを何処かへ呼び出し、連れて行くパク・ミンファンの姿を見つめながらジヒョクは改めて心に決めた。
ジウォンの悲惨な過去を自分が変えることが出来るなら、ひとつひとつ、確実にやれることから変えていかなければ。
あのハートマーク…あれは、自分がジウォンの為だけに過去に戻された証なのだろう。
 

まずは同窓会。今は彼女の親友を演じているが、後に裏切るチョン・スミン。
そして一番の難題は彼氏のミンファンとの結婚を阻止し、二人を別れさせることだ。
そして、いずれは自分と…。

 


 

その為には自分の今の境遇も変えなければいけない。
ウンホに会った後、ジヒョクは祖父に電話し、日曜日に話があるから会ってくれるよう頼んだのだった。

 

*        *        *
 

夜、部屋に着いたジヒョクの体に、どっと疲れが押し寄せた。
何事もなかったかの様に業務をこなしながら、ジウォンの過去と未来を変える為、考え、動いた。

ジヒョクは自分に刻まれたハートマークを見つめ、餌をやりながら猫に独り言ちる。
 

「一体、どういうことなんだ?僕はカン・ジウォンのお小遣いってことなのか?彼女に自分を使ってもらい、彼女を幸せにしろってことなのか?そりゃ、僕は彼女がずっと好きだったんだから、自分に出来ることはするよ。だけど、この状況は…信じがたいし、混乱する…」

 

ジヒョクはウィスキーのグラスを傾けながら、今日一日を振り返った・。
案外早くジウォンの同級生のウンホを探してもらい、話しが出来たことは幸いだった。
日曜日にスミンとの約束の場所に行くようにジウォンに促がしたり、彼女の持っていたオーセンティックの紙袋を見るなり、偽物だと指摘したり、後輩にチキンを配達するふりをしてくれと頼んだり。
後輩はともかく、ジウォンやあの同級生はきっと戸惑ったことだろう。
変な奴だと思われても仕方ない。実際、変な状況なのだから…。
 

だが、今日のジウォンの態度から察するに、何かが変わった様に見えた。
いつも萎縮して周りに遠慮していた彼女が、今日はなんだかたくましく見えた。
 

彼女の言葉で思い出したこともある。彼女は先日、と言っても、今のジヒョクの感覚では10年前のことだが、いきなりミンファンに掴みかかり、騒動を起こしたことがある。そのケアをしたのは自分だった。

 

 

自分の記憶が正しいなら、その翌日もジウォンはミンファンを避けていた。

そのせいで彼女は脚に怪我をした。
それに加え、今夜ミンファンを部屋から追い出したところを見ると、二人の仲は良好とは言えないようだ。
それはジウォンにとっても自分にとっても、望ましいことだ。

 

ボトルの3分の1を空けたあたりで、やっと眠気が訪れてきた。
 

ジヒョクの脳裏に、ぼんやりと彼女と初めて会ったあの初夏の日が蘇り、呟いた。
「カン・ジウォンは幸せになる。カン・ジウォンは僕が幸せにしてみせる。その幸せには僕がいる。今度こそは機会を逃さずに掴んでみせます。それでいいんですよね?ジウォンさんのお父さん…」

そんなジヒョクの傍らで、茶トラの猫が小さく啼き、彼の顔を優しく舐めたのだった。

 

-Fin-

 

お目汚し失礼しました。

ここまで読んで下さった方々、誠にありがとうございます。

 

 

次回は6話についてかくつもりです。

それではまた次回~アンニョン~💗