文藝春秋刊。森バジル著。
生放送のバラエティ番組の開始直前。スタジオ内で派手にスッ転んだドジなプロデューサーが壊した大道具から見つけたのは、本日のメインキャストの死体だった!
側に添えられていたのは、爆破予告と本日の新たな脚本。メインキャスト抜きで、果たしてこの生番組はどうなってしまうのか?
出だしでもう面白い、というのがいい。
その後の流れは「少し苦しいかな、テレビ的な意味で」と感じるところはあるものの、生放送の緊張感と複数視点によるライブ感で、最後まで読ませる勢いのある小説だった。
ミステリとしては入れ子構造となっているのが面白く、読後感は80年代に良く読んだ、青春ミステリのような爽やかさがあった。赤川次郎とか栗本薫とか。
芸能界の裏側を描く、という意味では最近では「推しの子」が有名だが、「テレビ局での殺人事件」というのは、栗本薫のデビュー作、「ぼくらの時代」を彷彿とさせる。
そのため、文中に「ボクらの時代」というタイトルを見てどきっとし、(そういえば森バジルも森カオルに似てる…)などと思ったりもしたのだが、「ボクらの時代」の方はフジテレビの番組である名前なので、単なる偶然かもしれない。著者が生まれる前の作品だが、読んでくれてると嬉しい。