月は東に日は西に

月は東に日は西に

だいたい本とサッカーの話です。

 ハードディスクに録画して、いつか見ようと思っているものの、なかなか見る機会がないというのはよくあることと思う。

 自分にとってはこのフランス製TVドラマ「アストリッドとラファエル」がそれで、BS11で放映された字幕付きのシーズン2までを残しておいたのだった。


 端的にいうとバディものの刑事ドラマなのだが、アストリッドもラファエルもともに女性である。アストリッドは自閉症の文書係なのだが、独自の拘りで事件を解決に結びつける役割を担う。

 ラファエルはバツイチの警部で、強硬犯係のリーダーであり、アストリッドのよき仲間である。


 フランス語は未修なので言葉は字幕を見るしかないのだが、会話は軽妙で見ていて楽しい。

 録画はあと2話を残すのみとなったが、機会があれば残りのシーズンも見てみたいなあ、と思っている。

 7日に行われたJ1昇格プレーオフ準決勝。4位徳島は5位磐田に追い付き、引き分けでレギュレーションにより決勝にコマを進めた。

 もう一方の準決勝は3位千葉が6位大宮を0対3からの大逆転で下し、13日の決勝は千葉のホームで行われることが決まった。


 勢いのことを考えると、大逆転の千葉はノリノリだろう。しかもホームで上位優位のレギュレーションもある。

 注目度からしても、オリジナル10の千葉が昇格すれば、何十年ぶりにJ1でオリ10揃い踏み(フリューゲルスはいないけど)となる。いにしえのサッカーファンには興味深いニュースだ。

 そもそも千葉はシーズン当初は独走していて、中盤以降つまづくも終盤連勝で3位フィニッシュした。

 ここで昇格すれば、劇的なストーリーの完成だ。


 一方徳島は、今シーズンは最少失点の手堅い試合運びとなったが、一度も自動昇格圏内に浮上することはなかった。

 また、五年ぶりのJ1というのは、ジェフの17年ぶりの方が話題性が上だ。


 でもまあ、それがなんだというのだ。


 今のチームの主軸は渡であり、岩尾である。

 2017年から始まったスペイン路線。

 あと少しで届かなかった2019。

 歓喜に沸いた2020。

 最後に泣いた2021。

 最終戦で敗れ、プレーオフに至らなかった2022。

 柿谷復帰とソシエダから来たベニで沸くも、もがき続けた2023。

 そしてチームとサポーターに亀裂が入り、未だに凝りを残す2024。


 そんな悲しみとわだかまりを乗り越えて、今年のチームは今、プレーオフの決勝を迎える。

 増田監督の采配に物足りなさを感じることもあるが、そもそもリカルドやボヤトスだって、試行錯誤の繰り返しだった。

 守備を固めて早く前に送り、前線でカオスを作るやり方は、ベニが求めたものではなかったか。

 昨年で去った柿谷、怪我で出遅れた岩尾に代わりキャプテンシーを発揮したのは渡だった。

 その渡は、シーズン終盤に強烈な印象を残すゴールを立て続けに決めた。

 永木が怪我で離脱した直後、岩尾が復帰したのは、本当に僥倖だった。

 岩尾の絶大なるキャプテンシーは、渡を自由にし、若き増田監督の支えとなり、今のチームは本当の意味で一つになっている。

 そこにいるのは当然ベテランばかりではなく、若き大黒柱颯や、中盤の核児玉を筆頭に、全ての選手が光り輝いている。


 12年前、泣いても笑ってもあと1試合、とこのブログに書いた。

 泣いても笑っても、という定型句は、なんとなく今の状況にはそぐわない気がする。


 徳島には徳島の物語、ナラティブがある。

 それが今、一つに収束している実感がある。

 今日の試合、その答えが示されるだろう。


 選手もチーム関係者もサポーターも、果ては徳島に関わる全ての人が、今日の試合を見つめている。


 なにもかも振り切って、千葉を倒す。

 それが、今日だ。

 


 依空まつり著。カドカワBOOKSより既刊12冊+外伝2冊。


 アニメを見て気になり、原作小説に手を出すというのがここ数年の読書傾向でもあるのだが、今回もその流れの一つである。


 この夏アニメでは、何故か自己評価の低い(ように見える)女性が主人公の番組が複数あったが、中でもこの「サイレント・ウィッチ」は映像における魔術表現が美しく、ちょっと継続して見てみようかなという気にさせるものだった。


 「唯一の無詠唱魔術の使い手」であり、王国の七賢人「沈黙の魔女」と称されるモニカ・エヴァレットは、実は極端な人見知りで、山小屋に引きこもっていたところ、同期の「結界の魔術師」ルイス・ミラーに引きずり出され、セレンディア学園の編入生として、極秘の第2王子護衛任務につく。

 「山小屋帰りたいよお」と泣く彼女は、類いまれなる計算能力を発揮し、生徒会長たる王子の信頼を勝ち取り、なぜか生徒会会計となるのだが…


 少し強引な展開かなと思ったが、バケモノじみた魔術と計算能力を持ちながら極端な対人恐怖症というアンバランスな主人公であるモニカが、友人たちとの触れあいにより社会性を獲得しつつ、学園に怒る事件を密かに(魔術は派手に)解決していく、という物語は魅力的だった。


 そこで原作を読んでみようと思ったのだが、このアニメを見て同様に思った人は多かったらしく、通販は品切れとなっており、県内の書店をくまなく探して全巻確保することができたのだった。(だいたい半端な巻が一、二冊残っているかいないかだった)。

 そしてこの三連休で全14冊を読みきった。

 どうしようもなく、面白かった。勉強になるとか考えさせられるとかではなく、純粋に面白くて、こんなに楽しんでいいのか、と、むしろもっと学術書や専門書を読むことに時間を費やした方がよいのではないか、と思えたほどである。これは登場人物が勉強熱心であることに感化されたのかもしれない。

 

 アニメは原作でいえば3巻までの話であるが、ストーリー的には「モニカの成長」に重点が当てられている部分であり、それはそれで印象に残る話であったし、最終の12話は祭りの夜に古代魔導具との派手な魔法合戦を描き、そして第二王子の隠された素顔を垣間見るエピソードが描かれていた。それはとても重要で美しい部分なのだが、まだ物語は序盤でしかなく、その意味で言えば次の四巻までがちょうどいい区切りだったようにも思う。

 その次の5巻で「沈黙の魔女の隠しごと」の一つが明らかになり、物語は大きく動きだす。そして8巻ですべての秘密がさらけ出され、9巻の怒涛のクライマックスへと向かう!


 様々な伏線が一気に収束する展開は、実際に読んで欲しいところなのだが、今は原作は入手困難であるものの、再販が予定されており、かつ電子書籍なら入手可能ではある。

 私自身は、実は読了したあとも何度も読み返して、妻から「あんたそれ大好きやな」と突っ込まれるくらいには気に入っている。

 そして秀逸なのは「結界の魔術師」ルイス·ミラー。「結界で殴る、蹴る、轢く」という概念は初めて見た。彼のための外伝もまた面白い。


 そしてしみじみ思うのである。友達って、いいもんだなと。