風林火山は我らに呼び掛ける
会社の宴会で、各自が歌を歌ふことが強要されるのが、私が入社したころの時代の雰囲気であった。
そこで聞き覚えたのが、「武田武士」である。それはすぐ私の十八番になった。
この歌の二番目と三番目の歌詞の間に、武田信玄の軍旗に書かれた「風林火山」の詩吟が入る。その中の「侵し掠める事火の如く」を「しんりゃくすることひのごとく」と吟ずるのだ。
このくだりを、GHQのアメリカン・ボーイが聞いたら、「オーノー、ニホンの憲法変へなければイケマセン」となるのだらう。
我らが戦国時代の祖先の、兵(つはもの)どもが夢のあとは、日本民族共通のレジェンドである。戦記文学はどの民族にもあり、どれを聴いても胸を動かされる。例へば「スコットランドの少年兵」は
The minstrel boy has gone to war...
His father’s sword he carried with...
Oh, deep in my heart I wish him safe at home.
うろ覚えなのでこの調子だが、歌を忘れたカナリアは、何とか忘れた歌を想ひ出したいものである。