「そういえば小学生の頃、一緒に顕微鏡覗いた事あったよね
あの時の、あの動いてたのって何だったんだろうね」
北原さんが小学校時代の出来事を覚えていて
且つ精子を覗いていた事に気づいていない場合
彼女からこんなコメントが発せられるだろう
もしその会話を周りの奴らに聞かれたら終わりだ
僕はそんな事で頭がいっぱいだった
授業では先生が今回の実験内容を説明している
しかし先生の話など全く頭に入らなかった
「どうしよう…バレたら恥ずかしすぎる」
心臓がバクバクと鳴った
気がつくと、周りの皆が動き出した
どうやら先生の説明が終わり
各自2人一組になって顕微鏡を覗く事になったらしい
奇しくも僕のペアは北原さんだった
まるでこうなる事が運命づけられたかのような偶然に僕は気持ち悪さを覚えた
「ごめん、俺先生の話全然聞いてなかった、何するんだっけ?」
北原さんと精子の事ばかり考えていた僕は
本当に先生の話を何も聞いていなかったので、北原さんに打ち明けた
「この綿棒で口の中の皮取って、それを顕微鏡で見るんだって」
北原さんは教えてくれた
綿棒で自分の皮を取るのをどちらがやるかはジャンケンの結果、北原さんがやる事になった
北原さんは口の中の頬の部分を綿棒で擦った
何度か挑戦した結果、薄い皮を取る事に成功し
それをプレパラートにセットした
「そういえば、前も顕微鏡見たよね」
そのセリフがいつ飛び出してくるのか
僕はドキドキしながら北原さんの作業を見守った
プレパラートのセッティングを終え
顕微鏡を覗き込んだ北原さんは
「教科書通りだね」と言って
教科書に乗っている人間の細胞の写真と
今自分が覗いているものが一緒である事を僕に言った
僕はホッとした
たぶん北原さんはあの時見たものが精子だと分かっている
でも、その事は言わないだろう
僕はそんな気がした
一安心だ
「俺にも見せて」
緊張がほぐれた僕は北原さんに言って
顕微鏡を覗かせてもらった
確かにそこには教科書で見た通りのものが映っていた
「これが細胞か~」
別に細胞なんてどうでも良かったが
僕は安堵感から調子に乗ってそんな事を口走った
すると
顕微鏡の視界を何かが横切った
僕はビクッとして全身が硬直した
一瞬だったがそれが何なのかはすぐに分かった
何故なら小学校の時に北原さんと見たものと同じだったからだ
僕は思わず「バレる!」と思った
さっきまで何度も何度もフラッシュバックした
小学校の時に見た顕微鏡のあの映像と同じものが
今、目の前に映っている
頭が真っ白になった
「どしたの?」
北原さんが話しかけてきた
僕はハッと我に返って「教科書通りだね」と返した
こうして理科の授業は終わった
その日の帰り道
僕はやっと違和感に気づいた
あれは北原さんの細胞のはずだよな?
北原さんの口の中の皮を見ていたのに
何で精子が見えたんだろう?
その謎が解けたのは
僕が高校生になった頃だった
小学校低学年の頃
ある日、父が顕微鏡を買って来た
なんでも近所の商店街でたまたま安く売っていたので買ったのだそうだ
当時の僕は、その物珍しさから
いろいろなものを顕微鏡で覗いた
何を見たのかはあまり覚えていないが
たしか髪の毛や植物の葉なんかを見た気がする
ミクロの世界に対する僕のはしゃぎ様は数日間続いた
それから数日後
何人かのクラスメイトと僕の家で遊んでいた時の事
初めて僕の家に来た北原さんが
我が家の顕微鏡に興味を示した
北原さんは当時、僕と同じクラスの女子で
何故あの時、北原さんが家に来ていたのか
理由は覚えていない
「中見てもいい?」
北原さんは顕微鏡を覗きたいと僕に言って来た
「いいけど、たぶん何も見えないと思うよ」僕は答えた
北原さんは「ふ~ん」と言って顕微鏡を覗き込む
すると
「わ、何か動いてる」と北原さんは驚いた
何も無いと思っていたその顕微鏡には
確かにプレパラートがセットされており
どうやら誰かが何かを見ようとした後のものだったようだ
僕は「ちょっと見せて」と北原さんに言って顕微鏡を覗いた
するとそこには確かに丸い物が動いていた
小学校低学年の頃の出来事だ
中学2年になった今なら分かる
あれは精子だ
たぶん父が自分の精子を顕微鏡で見たのだろう
幸い、あの時は精子とは分からず
北原さんとは「何だろうね、これ」で終わったし
北原さん以外のクラスメイトはファミコンに夢中で顕微鏡は見ていない
つまり、僕と北原さんしか知らない出来事だ
北原さんはあの時の事を覚えているだろうか
もし覚えていたら、おそらく精子という事には気づいているだろうか
一番最悪なのは
顕微鏡を覗いた事は覚えているが、あれが精子だとは気づいていないという事だ
何故なら今、理科の授業で理科室に来ており
今日の授業内容は顕微鏡を使う
奇しくも中学2年の今
北原さんと僕は同じクラスの同じ班だ
ある日、父が顕微鏡を買って来た
なんでも近所の商店街でたまたま安く売っていたので買ったのだそうだ
当時の僕は、その物珍しさから
いろいろなものを顕微鏡で覗いた
何を見たのかはあまり覚えていないが
たしか髪の毛や植物の葉なんかを見た気がする
ミクロの世界に対する僕のはしゃぎ様は数日間続いた
それから数日後
何人かのクラスメイトと僕の家で遊んでいた時の事
初めて僕の家に来た北原さんが
我が家の顕微鏡に興味を示した
北原さんは当時、僕と同じクラスの女子で
何故あの時、北原さんが家に来ていたのか
理由は覚えていない
「中見てもいい?」
北原さんは顕微鏡を覗きたいと僕に言って来た
「いいけど、たぶん何も見えないと思うよ」僕は答えた
北原さんは「ふ~ん」と言って顕微鏡を覗き込む
すると
「わ、何か動いてる」と北原さんは驚いた
何も無いと思っていたその顕微鏡には
確かにプレパラートがセットされており
どうやら誰かが何かを見ようとした後のものだったようだ
僕は「ちょっと見せて」と北原さんに言って顕微鏡を覗いた
するとそこには確かに丸い物が動いていた
小学校低学年の頃の出来事だ
中学2年になった今なら分かる
あれは精子だ
たぶん父が自分の精子を顕微鏡で見たのだろう
幸い、あの時は精子とは分からず
北原さんとは「何だろうね、これ」で終わったし
北原さん以外のクラスメイトはファミコンに夢中で顕微鏡は見ていない
つまり、僕と北原さんしか知らない出来事だ
北原さんはあの時の事を覚えているだろうか
もし覚えていたら、おそらく精子という事には気づいているだろうか
一番最悪なのは
顕微鏡を覗いた事は覚えているが、あれが精子だとは気づいていないという事だ
何故なら今、理科の授業で理科室に来ており
今日の授業内容は顕微鏡を使う
奇しくも中学2年の今
北原さんと僕は同じクラスの同じ班だ
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
公衆便所の大便の壁には
クソみたいな奴の主張が
5cm間隔で書きなぐられていた
俺はその文章をまるで何かの記号を見るかの様にただボーッと眺めた
たとえ辛い事があったとしても
便所にラクガキする発想しか浮かばない奴に
何の感情も湧かなかった
こんなウンコを出すだけの場所でしか主張できない奴の言葉なんてどうでもいい
「ふう~」
ため息をついた俺はふと
高校時代の田代の事を思い出していた
高2の頃「便所に面白い事を書いた紙が落ちている」
という事が俺達のクラスの間で話題になった
男子便所の中に不定期でノートの切れ端が落ちてあり
その文章が凄く面白かったのだ
実はもっと前からその紙を見た事があるという奴も数人いたが
クラスの中で一番うるさい本城という奴がその紙を見つけた時に
本城がクラス中に広めて話題になった
それからというもの俺達のクラスでは
そのネタを楽しみしするようになり
クラスの誰かが便所に行ってその紙を発見した時は
「新作が出てたぞー」と言いながら持って帰ってきていた
そのネタはクラス中の奴がまわし読みされ
男子も女子も皆読んでいた
ある日、新ネタの紙を他のクラスの奴に先に発見された事があった
2年の男子便所に不定期で落ちている訳だから
他のクラスの奴でも当然拾う事が出来たのだ
だが、その時は本城と数人の男子が拾った奴の所へ行き
頼み込んで譲ってもらっていた
その時はもうクラス中がその不定期連載の読者になっていた
そしてあまりの面白さに、俺達のクラスの壁には
歴代のネタが貼られるようになった
今までの紙を本城が管理していたらしい
他のクラスの奴がうちのクラスに来た時には必ずその壁を見ていたし
今までのネタを読む為だけにうちのクラスに来る奴も珍しくなかった
そしていつの間にか
「あのネタは誰が書いてるんだろう?」という疑問が沸き起こった
おそらくこの学校の2年の男子だとは思うが
作者の存在だけは謎だった
そこで何故か俺は友達の佐藤と山田を誘って
作者が誰なのかを探そうとした
言い出したのは俺だったが
一番やる気があったのは佐藤だったと思う
佐藤は「あのネタのここがセンスがいい」とかなんとか言っていた
俺達の中で「作者はおそらく暗い奴だろう」というあたりをつけた
理由は、もし明るい奴だったらネタを書いた紙を便所に置くというような事はしないだろうし
これだけ話題になっても自分が書いたと名乗り出ない時点で引っ込み思案な奴に違いないと思ったのと
前にテレビでお笑い芸人の人が「芸人は暗い奴が多い」とも言っていたからだ
そこで俺達は
休み時間に誰とも話していない静かな奴に
片っ端から聞いてみる事にした
だが結果は「俺じゃない」という返事しか得られなかった
次に俺達は休み時間に寝てる奴を調べる事にした
佐藤曰く「アレだけのネタを考えるには1人で集中しないといけないから、一見寝てると見せかけて起きてる奴が怪しい、寝たふりをしてずっとネタを考えるに違いない」とのことだった
だがこれも結果は同じだった
これに関しては本当に寝てるだけの奴が殆どだったのだが
1人だけ「寝たふりをしていた奴」に出会った時があった
その時はついに作者を見つけたと思ったのだが、理由を聞いてみると
「寝たフリをしていると、たまに女子のお尻が肘に当たるから」という
しょうもない理由だった
今度は「休み時間に1人で行動している奴が怪しい」
という事になったので、そんな奴がいないか探してみると
休み時間に階段付近をうろうろしたり、用事もなのに階段を上ったり降りたりしている奴がいた
だが結局は「スカートが短い女子が階段を上ると、たまにパンツが見えるから」
というこれまたしょうもない理由だった
結局、誰に聞いても分からずじまいで
俺達のプロジェクトは解散した
また、不定期で便所に落ちていたネタも
徐々にペースが落ちていき
いつの間にか連載は終了した
それに伴い「作者は誰なんだろう」という俺の疑問も
いつの間にか薄れていった
だが、高校3年になって
俺は思わぬ形で有力な情報を耳にした
それは作者探しの時に話しかけていた津田という奴が
たまたま俺の隣の席にいた事から始まった
津田は高2の時も同じクラスだったが、暗くて普段は誰とも喋らないような奴で
作者探しの時に俺は初めて津田としゃべったくらいだった
なので3年になって席が隣になってからも
俺は津田と会話する事は無かったのだが
ある日偶然、2年の時の作者探しの話になり
「結局、作者見つかったの?」と津田は俺に聞いてきた
「いや、ダメだった」俺は津田に返した
少しの沈黙の後
「あの時、お前誰が作者だと思う?って聞かれなかったから答えなかったけど、たぶん作者は田代君だと思うよ」と津田は言った
田代は高2の時に同じクラスだった奴で、明るくはないが暗くもない普通の奴だった
クラスの誰とでも話そうと思えば話せるような奴だったが
いつも2~3人の友達といるような奴で目立つ感じではなかった
津田からその話を聞いた時の俺は
もう作者が誰なのか、それ程知りたいという感じでもなかったが
田代が作者というのは意外だった
それは「あれだけ苦労して探した割には達成感の湧かない答え」でもあった
「なんで田代だと思うの?」と理由を聞いてみると
津田は高2の時、教室でうるさくする本城やその他の男子が目立とうとして発する言葉を
何も面白いと思っていなかったらしい。むしろつまらない事を大きな声で発して
しかもそれに笑っている奴らが嫌だった
だが、田代の言う事だけは面白すぎて笑いを堪えるのが大変だったらしい
田代は津田に聞こえるように話してはいないので、津田は盗み聞きしてると思われるのが嫌で
必死に表情を変えない様に頑張っていたが、堪えるのが本当に大変だったと言った
そして津田は
「俺みたいに暗い奴はたぶん、全員田代君が作者だと思ってるよ」と言った
だが、その時の事は結局誰にも言わなかった
佐藤にも山田にも言わなかったし
田代本人にも聞かなかった
だた、高2の時の作者探しで話しかけた暗い奴に会った時に
「あの時の作者って結局誰だと思う?」という質問をしてみたら
皆が「田代」と答えていた
俺はその気になれば田代にその事を聞くことも出来たが
なぜか聞かないまま卒業した
それから10年くらい経って
高校の時のいくつかのクラスが合同で同窓会をしようという事になり
そこで久しぶりに田代に出会った
田代は今では建築関係の仕事をしているらしい
飲み会が2時間くらい経過し
周りの皆が酔っぱらってきて席を移動したりなんだりで
気がつくと俺は田代と佐藤とあと誰か分からない奴4人で飲んでいた
そして誰か分からない奴が完全に寝てしまい
佐藤がトイレ行くと席を立ったので
俺と田代が2人だけになった
そこで俺は田代にあの事を聞いてみることにした
「高2の時のトイレに落ちてたネタって田代が書いてたの?」
「そうだよ」
と田代は言った
ふざけてると思われる
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
僕は真面目にやってるのに
ふざけてると思われる
公衆便所の大便の壁には
クソみたいな奴の主張が
5cm間隔で書きなぐられていた
俺はその文章をまるで何かの記号を見るかの様にただボーッと眺めた
たとえ辛い事があったとしても
便所にラクガキする発想しか浮かばない奴に
何の感情も湧かなかった
こんなウンコを出すだけの場所でしか主張できない奴の言葉なんてどうでもいい
「ふう~」
ため息をついた俺はふと
高校時代の田代の事を思い出していた
高2の頃「便所に面白い事を書いた紙が落ちている」
という事が俺達のクラスの間で話題になった
男子便所の中に不定期でノートの切れ端が落ちてあり
その文章が凄く面白かったのだ
実はもっと前からその紙を見た事があるという奴も数人いたが
クラスの中で一番うるさい本城という奴がその紙を見つけた時に
本城がクラス中に広めて話題になった
それからというもの俺達のクラスでは
そのネタを楽しみしするようになり
クラスの誰かが便所に行ってその紙を発見した時は
「新作が出てたぞー」と言いながら持って帰ってきていた
そのネタはクラス中の奴がまわし読みされ
男子も女子も皆読んでいた
ある日、新ネタの紙を他のクラスの奴に先に発見された事があった
2年の男子便所に不定期で落ちている訳だから
他のクラスの奴でも当然拾う事が出来たのだ
だが、その時は本城と数人の男子が拾った奴の所へ行き
頼み込んで譲ってもらっていた
その時はもうクラス中がその不定期連載の読者になっていた
そしてあまりの面白さに、俺達のクラスの壁には
歴代のネタが貼られるようになった
今までの紙を本城が管理していたらしい
他のクラスの奴がうちのクラスに来た時には必ずその壁を見ていたし
今までのネタを読む為だけにうちのクラスに来る奴も珍しくなかった
そしていつの間にか
「あのネタは誰が書いてるんだろう?」という疑問が沸き起こった
おそらくこの学校の2年の男子だとは思うが
作者の存在だけは謎だった
そこで何故か俺は友達の佐藤と山田を誘って
作者が誰なのかを探そうとした
言い出したのは俺だったが
一番やる気があったのは佐藤だったと思う
佐藤は「あのネタのここがセンスがいい」とかなんとか言っていた
俺達の中で「作者はおそらく暗い奴だろう」というあたりをつけた
理由は、もし明るい奴だったらネタを書いた紙を便所に置くというような事はしないだろうし
これだけ話題になっても自分が書いたと名乗り出ない時点で引っ込み思案な奴に違いないと思ったのと
前にテレビでお笑い芸人の人が「芸人は暗い奴が多い」とも言っていたからだ
そこで俺達は
休み時間に誰とも話していない静かな奴に
片っ端から聞いてみる事にした
だが結果は「俺じゃない」という返事しか得られなかった
次に俺達は休み時間に寝てる奴を調べる事にした
佐藤曰く「アレだけのネタを考えるには1人で集中しないといけないから、一見寝てると見せかけて起きてる奴が怪しい、寝たふりをしてずっとネタを考えるに違いない」とのことだった
だがこれも結果は同じだった
これに関しては本当に寝てるだけの奴が殆どだったのだが
1人だけ「寝たふりをしていた奴」に出会った時があった
その時はついに作者を見つけたと思ったのだが、理由を聞いてみると
「寝たフリをしていると、たまに女子のお尻が肘に当たるから」という
しょうもない理由だった
今度は「休み時間に1人で行動している奴が怪しい」
という事になったので、そんな奴がいないか探してみると
休み時間に階段付近をうろうろしたり、用事もなのに階段を上ったり降りたりしている奴がいた
だが結局は「スカートが短い女子が階段を上ると、たまにパンツが見えるから」
というこれまたしょうもない理由だった
結局、誰に聞いても分からずじまいで
俺達のプロジェクトは解散した
また、不定期で便所に落ちていたネタも
徐々にペースが落ちていき
いつの間にか連載は終了した
それに伴い「作者は誰なんだろう」という俺の疑問も
いつの間にか薄れていった
だが、高校3年になって
俺は思わぬ形で有力な情報を耳にした
それは作者探しの時に話しかけていた津田という奴が
たまたま俺の隣の席にいた事から始まった
津田は高2の時も同じクラスだったが、暗くて普段は誰とも喋らないような奴で
作者探しの時に俺は初めて津田としゃべったくらいだった
なので3年になって席が隣になってからも
俺は津田と会話する事は無かったのだが
ある日偶然、2年の時の作者探しの話になり
「結局、作者見つかったの?」と津田は俺に聞いてきた
「いや、ダメだった」俺は津田に返した
少しの沈黙の後
「あの時、お前誰が作者だと思う?って聞かれなかったから答えなかったけど、たぶん作者は田代君だと思うよ」と津田は言った
田代は高2の時に同じクラスだった奴で、明るくはないが暗くもない普通の奴だった
クラスの誰とでも話そうと思えば話せるような奴だったが
いつも2~3人の友達といるような奴で目立つ感じではなかった
津田からその話を聞いた時の俺は
もう作者が誰なのか、それ程知りたいという感じでもなかったが
田代が作者というのは意外だった
それは「あれだけ苦労して探した割には達成感の湧かない答え」でもあった
「なんで田代だと思うの?」と理由を聞いてみると
津田は高2の時、教室でうるさくする本城やその他の男子が目立とうとして発する言葉を
何も面白いと思っていなかったらしい。むしろつまらない事を大きな声で発して
しかもそれに笑っている奴らが嫌だった
だが、田代の言う事だけは面白すぎて笑いを堪えるのが大変だったらしい
田代は津田に聞こえるように話してはいないので、津田は盗み聞きしてると思われるのが嫌で
必死に表情を変えない様に頑張っていたが、堪えるのが本当に大変だったと言った
そして津田は
「俺みたいに暗い奴はたぶん、全員田代君が作者だと思ってるよ」と言った
だが、その時の事は結局誰にも言わなかった
佐藤にも山田にも言わなかったし
田代本人にも聞かなかった
だた、高2の時の作者探しで話しかけた暗い奴に会った時に
「あの時の作者って結局誰だと思う?」という質問をしてみたら
皆が「田代」と答えていた
俺はその気になれば田代にその事を聞くことも出来たが
なぜか聞かないまま卒業した
それから10年くらい経って
高校の時のいくつかのクラスが合同で同窓会をしようという事になり
そこで久しぶりに田代に出会った
田代は今では建築関係の仕事をしているらしい
飲み会が2時間くらい経過し
周りの皆が酔っぱらってきて席を移動したりなんだりで
気がつくと俺は田代と佐藤とあと誰か分からない奴4人で飲んでいた
そして誰か分からない奴が完全に寝てしまい
佐藤がトイレ行くと席を立ったので
俺と田代が2人だけになった
そこで俺は田代にあの事を聞いてみることにした
「高2の時のトイレに落ちてたネタって田代が書いてたの?」
「そうだよ」
と田代は言った
