実は ここ数日、田辺市周辺で親父の入る介護サービス付き高齢者住宅の類を五軒ほど見学にまわっていた。これまで何とか大阪の実家での一人暮らしを続けてきたが、息子の目から見て、認知症の度合いと運動能力の低下が進み、もう限界が来ていると判断したからだ。本人は未だ大阪の生活が可能と思っている様だが、もう一、二年前の時点で既に無理があった。

先ずは嫁と二人で見学させてもらった。五軒の施設は何処も親切に対応してくださったし、説明を聞けば、其々 方向性があり、長所があった。費用に関しては多少の差はあるものの、何処も大体 同じようなものだった。取り敢えず その中から二軒に絞った。一軒は白浜の温泉街の中にある施設で、もう一軒は自宅から 程近い田辺市内にある施設だった。この二軒に絞った基準は、他の三軒よりも比較的 入居者の自由度が高く、それが親父の性格に合っていると感じたからだ。他三軒の施設も息子の目に、非常に信頼できそうで安心して親父を診てくれそうだったり、立地的好条件だったりしたが、幾分 老人介護施設としての性格が強く、今の親父が好まなさそうだった。……もっとぶっちゃけて分かりやすくいえば……酒だ😆。他三軒の施設は入居者の飲食に関し徹底して管理されていて、当然、飲酒は禁止されていた。無論、介護サービス付き高齢者住宅というカテゴリの施設内で ある程度の飲酒は制限されて然りだが、現役不良老人😆?である 現時点での うちの親父に いきなり完全な断酒を迫るのは、たぶん無理だ。そんな事を強要したら、あの親父のこと決死の覚悟で脱走しかねない😅。

 

で、その二軒のうち、白浜の施設の方は、これが俺の目に非常に魅力的に映った。何しろ、あの白浜の温泉街外れの高台に建ち、部屋の窓から海が見渡せ、景色が素晴らしい。風呂は紛れもなき白浜の源泉である。おまけに月に二、三度は近くの魚屋さん直送の刺身が出たりという特典もある。もし俺が老後を過ごすなら、此処しかないな、という抜群の環境だった。しかし どうも親父は自宅から少しでも近くに居たいという気持ちがあるのか?現地を見せても あまり興味を示さなかった。そして今朝、もう一軒の田辺市内の施設に行くと、心なしか 其方では機嫌が良さげな雰囲気だった。確かに親父の住む場所が、自宅から近いという条件は、俺も含めた家の者にとっても利便性や安心感はある。田辺市内の施設も建物は新築で しっかりとしている。しかし それにしても、あの白浜の施設は捨てがたい。相談に乗ってくださった館長さんも素晴らしい人柄が溢れる方だった。またしかし、住むのは俺や他の家族ではなく、親父である。少しでも親父が気分良く過ごせる方を選ぶのが無難だろう。

 

ということで、あと数時間内に何か余程の出来事でもない限り、近々親父は、田辺市内の施設に転居する方向になるだろう。実家の権利問題、片付けや、住所変更、大阪の介護サービスの引き継ぎなど、未だ未だ、大変な作業は残っているが、進める方向は見えてきた。