周参見トラベルカウンター。少し前にすさみ海水浴場の側に観光案内所として門出したスポットだ。

 

元々は警察署の建物だったらしく、奥に留置所(牢屋)が そのまま残されている。何でも面白がって使っちまえという、すさみ町民の気質を感じさせる。案内所には若いスタッフが駐在し、紀南地方でも最も過疎化の深刻な地とは思えぬフレキシブルな雰囲気に包まれていた。ご存知かと思うが、かねてから俺は、すさみ町の この規模の、このやり口の、地域おこし姿勢に感服している。これは最近になって始まったことでは無い。ドカンと大きな策を企て、ガツンと当てて、目に見える成果を出す、という感じではなく、田舎が田舎のまま、その良さを保ちつつ、しかし都市には無い切り口で、思わずニヤリとしてしまう様なアピールをしてくる。こういった努力は、きっと目に見えぬ、潜在的な効果を、すさみ町を知る人たちに与えているはずだ。数字として経済効果、または移住者や来訪者を増やすというのも勿論、目的ではあるのだが、それ以上に、良いところなんだけど、あまり人には教えたくない、ファンが密かに心の片隅に温め、時々 寄りたくなるスポット、または故郷、それを保つことがローカリズムの粋なのである。

その若いスタッフの中のお一人に、車を停める場所ないか?と聞いたら教えていただいた、すさみ町散歩の裏技。……これ、ここだけの話だと お断りしておく。42号線、海水浴場から周参見駅前へ繋がる道を行き、駅に当たったら右折、少し行けば、上の写真、ぶっ壊れた?コインパーキングがある。ここが現時点では、事実上、すさみ町来訪者の無料駐車場となっている。これ↑今日一番の良い情報であり、象徴的な写真だ。ぶっ壊れたコインパーキング精算機の向こうにパンダ電車が映っている。

今日のお昼は駅前の「しのぶ」で食べた。どういう種の店かというと、ちょうど切目の稲田食堂とかに通ずるものがある。おばさんが一人で切り盛りされており、此方が「今日は あんまり お腹空いて無いんで」と断っておかなければ、後から後から何品も、おばさん手作りの手料理が出てくる様な、良心的な田舎食堂だ。普段は、駅のすぐそばという好立地もあり、地元の人たちや観光客にも愛される人気店らしいが、今日、俺が来店した際には、お客は余所者の俺のみだった。だというのに、料理を出し終えると、おばさんが「ちょっと駅行ってくるわ」と言い、出て行ってしまうわ、帰ってきたかと思うと、カウンターで一人食べている俺の横に腰掛け、タバコを吸い始めたりする。愛すべき昔ながらの人情派食堂。……こういう店、都会では本当に お目にかかれなくなった。